2011年7月12日 (火)

原発の安全性基準に関する「政府統一見解」 

政府は7月11日、原子力発電所の再稼働の可否などを判断する新たな安全評価をとりまとめ、公表した。

1) 一次評価(先行実施)
   対象:定期点検中で起動準備が整った原発
   目的:再稼働の可否を判断
   内容:大規模な地震や津波など設計上の想定を超える事象に対し、
      重要な施設、機器などがどの程度の安全度を有しているかを評価

2) 二次評価
   対象:全原発
   目的:運転継続または中止の必要性などを判断
   内容:
欧州のストレステストの実施状況や福島原発の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえ、
       今後、内容や実施時期を確定

経済産業省原子力安全・保安院は今週内にも評価項目や計画を作成し、安全委に提示する。
原発事業者による評価結果について保安院とともに、安全委も妥当性を確認する。

首相が原子力安全委員会も関与するよう指示した。
しかし、安全委は「保安院の確認行為の妥当性についての判断はするが、再稼働の可否は政府が決めること」としている。

定期検査を終えた九州電力玄海原発などで先行実施するが、これにより再稼働は8月以降にずれ込む見通しとなった。

ーーー

玄海原発などの再稼働については政府内部で混乱した。

海江田経産相は6月18日に原発の安全宣言をし、玄海町は7月4日に運転再開を了承したが、首相は急に、「新たなルールを作って、あらためて国民が納得できる判断が出るよう指示している」と述べた。

海江田経産相は7月6日、原発の安全性確保のため、全原発を対象にストレステスト(事故・災害への耐性調査)を行うことを明らかにしたが、これが再開の条件になるのかどうかで意見が分かれたため、統一見解をまとめたもの。

ーーー

客観的にみて、福島原発の事故がありながら、6月18日に保安院が発表した「シビアアクシデントへの対応に関する措置の実施状況の確認結果について」だけで「安全宣言」をしたのはおかしいと言える。

今回の統一見解には、「保安院による安全性の確認について、理解を示す声もある一方で、疑問を呈する声も多く、国民・住民に十分な理解が得られているとは言い難い」とある。

これは「シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応する観点から措置すべき事項のうち、直ちに取り組むべき措置」であり、内容は以下のものだけである。

① 中央制御室の作業環境の確保
② 緊急時における発電所構内通信手段の確保
③ 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備
水素爆発防止対策
⑤ がれき撤去用の重機の配備

河野太郎議員ブログ「ごまめの歯ぎしり」は、これらでさえ、全ての原発で対応を終えていないとしている。

有名になった
原子炉建屋に穴を開けるドリルさえも女川原発、浜岡原発では7月末完了予定であり、本格的な水素対策は今後3年かけてという原発もある。
玄海原発の場合、格納容器内に静的触媒式水素再結合装置を今後3年程度で設置するとなっている。 


もっと大きな問題がいくつも残っている。

1)外部電源

敦賀原発、伊方原発1、2号機、東通原発などは、1カ所の変電所から送電線を引くため、地震などで変電所が長期停電すると早期に復旧できない恐れがある。(原子力安全・保安院 6月9日発表)

2)電源喪失対策

安全委が1990年に定めた原発の安全設計審査指針では「長期間にわたる電源喪失は、送電線の復旧、非常用発電機の修復が期待できるため、考慮する必要はない」とされている。安全委はこれが誤りであったことを認めた。

ほとんどの原発が非常用炉心冷却装置を作動させる補助電源を持っていないとされる。

3)原子炉格納容器 MarkⅠ

国際原子力機関(IAEA)閣僚級会議に出席した海江田万里経済産業相は6月20日、ウィーンで会見し、東京電力福島第1原発1~5号機に使われている米GE開発の原子炉格納容器 MarkⅠについて、安全性の観点から、廃炉を含めた検討が今後の課題になるとの考えを示した。

MarkⅠについては1972年に米国原子力委員会の安全担当のStephen H. Hanauerが安全性の問題で廃止するよう主張している。
容量が小さいため、水素が溜り、爆発・破壊の危険があるというもの。

GEの元社員Dale G. Bridenbaughと同僚2人は、MarkⅠ型原子炉について重大な欠陥があり大規模事故につながると確信し、1975年に退職した。「設計の際に、冷却水が無くなった時の動的荷重を勘案していないのが問題」としている。(2011/3/15 米ABC News)

1980年に米原子力規制委員会が再評価した際、原子炉格納容器の圧力上昇を抑える圧力抑制プールの耐震強度が十分でない可能性を予測しながら、米国内の電力会社の意見を参考に「無視できる」と結論づけていたことが、NRCの「安全性評価報告書」で分かった。

日本の原子力安全委員会も1987年の指針で、圧力抑制プール内の地震揺動を検討項目に含めなかった。

MarkⅠは、GEが1960年代に開発した。

 
福島1~5号機    福島6号機

同型炉は、米国は東部に24基、日本には10基、ほか台湾2基、スイス1基、スペイン1基がある。

日本は、廃炉が決定している福島第一の1~4号機と浜岡1~2号機のほかに、女川1号機、敦賀1号機、島根1号機、福島第一の5号機である。

敦賀市の河瀬一治市長は6月1日の定例記者会見で、運転開始後40年を超えている敦賀1号機をめぐり、福島の知見で高経年化(老朽化)などの影響があったと明らかになった場合には「早く廃炉に持っていくことも選択肢の一つ」と述べ、2016年としている運転終了の前倒しもあり得るとの考えを示した。

日本原子力発電は2002年に、敦賀1号機の運転を2010年に終了し、廃炉にすると表明したが、その後、3、4号機の建設が遅れている事情もあり、運転期間を2016年まで延長している。

なお、沸騰水型の原発で事故が起きた際、原子炉格納容器の損傷を防ぐため、容器内の圧力を外部に逃がす「耐圧強化ベント」の設備が、国内では敦賀1号機だけ設置されていないことが分かった。

| | コメント (0)

2011年7月11日 (月)

インドのAditya Birla Group、カーボンブラックメーカーのColumbian Chemicalsを買収

インドのコンツェルン Aditya Birla Group(世界4位のカーボンブラックメーカー)は621日、米国のカーボンブラックメーカーのColumbian Chemicalsを買収する契約を締結したと発表した。

買収価額は875百万ドルで、買収によりAditya Birla Group はカーボンブラックの能力が90万トンから200万トンとなり、世界一のカーボンブラックのメーカーとなる。

Aditya Birla インド、タイ、中国、エジプトの4か国6プラントに、Columbian Chemicals の米国、カナダ、ブラジル、ドイツ、ハンガリー、スペイン、イタリー、韓国、中国の9か国11プラントを加え、12か国に17の工場を持つこととなる。

ーーー

Aditya Birla GroupBirla 一族が支配するコンツェルンで、金融、IT/ITアウトソーシング、アパレル、絶縁体、カーボンブラック、肥料等のAditya Birla Nuvo、アルミ産業のHindalco-Novelis、携帯電話通信のIdea Cellular、 セメント及び繊維産業のGrasim Industries などインド経済において重要な位置を占める。

Hindalco-Novelis はアルミ圧延では世界一、精錬ではアジアでトップ3社の一つで、銅の精錬では一工場では最大。
2007年にNovelis Inc.を買収した。

カーボンブラックでは世界4位、ビスコースステープル繊維で世界一、アクリル繊維で世界5位、セメントで世界8位となっている。

ーーー

Columbia Chemicalの歴史はカーボンブラックが産業用に初めて利用されるようになった1860年に遡る。
1922年にいくつかの小さなメーカーが合併してColumbian Carbon Companyが設立された。

1986年に同社は鉱山会社のPhelps Dodge Corporation に買収され、以降20年余で、欧州に事業を広め、南米とアジアの事業を買収した。

なお、Phelps Dodge 2007年にFreeport-McMoRan に買収され、Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc.と改称した。

20063月に同社は韓国の東洋製鉄化学(DC Chemical)とJPMorgan Chase子会社の投資会社One Equity Partners.6億ドル(負債込み)で買収された。前者が67%、後者が33%を保有した。

DC Chemical2001年に設立された化学品商社で、化学品ではベンゼン、トルエン、TDIを生産している。

中国に山東
DC Chamicalを設立した。
Shandong Haihua Coal ChemicalとのJV。ピッチ、カーボンブラックオイル、ナフタレン、コールタールを生産)

2005年にSodiff Advanced Materialsを買収、ポリシリコンの製造を開始した。
2009年にOCIに改称した。

DC Chemical 2009年にポリシリコンに事業を集中することを決め、Columbia Chemicalの持分をOne Equity Partners に売却した。

OCIは現在、ポリシリコン第3期のデボトルネッキング中で、能力は2011年末に42千トンとなる。
更に第
420千トンを建設中で、2012年末に完成するが、本年4月に第5期の建設を発表した。能力は1系列では世界最大の24千トンで、2013年末の完成時には合計能力は86千トンとなる。

| | コメント (0)

2011年7月 7日 (木)

EUの原発ストレステスト 

海江田経産相は7月6日、原発の安全性確保のため、全原発を対象にストレステスト(事故・災害への耐性調査)を行うことを明らかにした。

経産相は、「安全性はすでに確保しているが、地元住民のより一層の安心を得るために実施する」と述べたが、首相は、「従来法では原発の安全性は経産相が判断できるが、新たなルールを作って、あらためて国民が納得できる判断が出るよう指示している」と述べ、ストレステストの実施が再稼働判断の前提になるとの見解を表明した。

報道では首相は経産相に対し、「原発の再稼働は認めない」と繰り返し、6月18日に原発の安全宣言をした経産相を非難したという。

ストレステストの内容は決まっておらず、実施に何か月もかかる可能性があり、その間原発の再稼働は出来ない可能性が強い。

玄海原発2、3号機の再稼働問題で、7月4日に運転再開を了承した玄海町の岸本町長は7月7日、町役場で臨時会見を開き、了承撤回を表明した。

日本では今頃になって(一旦安全宣言をしてから)ストレステストの実施を決めたが、EUでは福島事故発生直後に動き出し、既にテストに入っている。

経産相は「IAEAやEUの知見も参考にする」と述べた。

ーーー

EUは、域内の原発143基のすべてについて6月1日からストレステストを行っている。

311日の福島の事故を受け、この事故を教訓に同様の事故がEUで発生しないよう、すべての原発を再評価するもので、早くも325日に欧州委員会でこの問題を議論し、EUの全ての原発のストレステストを行うことを決めた。

EUは「福島事故で、考えられない事態が起こること、2つの自然災害が同時に起こること、全電源の喪失が起こることを学んだ」としている。

テストは包括的なもので、以下の事態に耐えうるかどうかを調べる。

①天災
 地震、洪水、極端な低温、極端な高温、雪、氷、嵐、竜巻、豪雨、その他

②人の起こす危険(失敗、行為)
 飛行機墜落、原発近辺での爆発(ガスコンテナー、近くでのタンカー爆発)、火災
 テロ攻撃(飛行機での突っ込み、爆弾)

地震に関しては、操業前に、過去の地震を参考にし、その地域で予想される地震に耐えられるかどうかについてはチェックを受けている。しかし、福島の例で、過去にその地で起こったよりも強い地震がありうることが分かった。
このため、
Richter scale 6に耐えうるとして設計された原発は、それ以上の地震にも耐えられるかどうか、即ち、すべての安全機能が稼働するか、安全に停止できるか、電力の供給は十分か、放射性物質が放出されずに閉じ込められるかどうかをチェックする。
洪水や、他の天災についても同様。

電源に関しては、どんな事態でも、電源がカットされた場合に十分なバックアップ電源を持つこととしている。数日間電源がカットされても大丈夫か、最初のバックアップのバッテリーが動かない場合にどうするかなどにも答える必要がある。

飛行機墜落(災害、テロとも)については、原発の格納容器が厳しいダメージを受けるかどうかをチェックする。
そのため、材質、壁の厚さ、接近する飛行機の重量、スピードなどを検討する。

ドイツは最近の専門家による安全検査の結果、南部にあるビブリス原発など4基が、飛行機の墜落に構造的に耐えられないと判定されている。

爆発、火災についても同様。

このほか、テロ攻撃に対する予防措置が検討されるが、これは各国のセキュリティに関するもので、公表できないという理由で(ストレステストは全て公表される)、「専門家委員会」を別途設置して調査する。

テスト方法については欧州委員会とEuropean Nuclear Safety Regulators' Group (ENSREG) とで協議して決めた。

ストレステストは3段階で行われる。
Pre-assessment
  原発の操業責任者がストレステストの質問に答え、証明する資料や研究、計画を提出する。

National Report
   各国の規制当局が上記回答が正しいかどうかチェックする。

Peer reviews
   多国籍チームが②をレビューする。
   このチームは欧州委員会の
1人と27か国の規制当局から6人の合計7人から成る。現地訪問も行う。

ストレステストは2012年4月末までに完了する。

ストレステストの結果を受け、各国はどうするかを決定する。
その国の責任ではあるが、EUとしては、対応が技術的にか、経済的にかでできない場合、停止されると信じるとしている。
報告は公表されるため、停止しない場合にはその国は国民に理由を説明する必要がある。

欧州委員会はまた、EU域外の諸国(スイス、ロシア、ウクライナ、アルメニア)の原発事故の影響を受けるため、各国と原発の再評価の話し合いをを行っている。各国とも前向きで、ロシアは既に国際的な核の安全のフレームワーク作りの具体的提案を行っている。

欧州委員会は更に、IAEAや途上国に対し、安全レビューや国際的な枠組み作りの協力の用意があるとしている。

付記

アルメニアの原発は「EU全体にとって危険な存在」とされている。

旧ソ連の第一世代型VVER440/V-230タイプの耐震性を改良したV-270型で、Metsamor に2基あった。出力はそれぞれ40.8万Kwで、1号機は1977年から、2号機は1980年から操業を開始した。

1988年12月7日にアルメニアで地震が発生した。
地震による被害はなかったが、原発からスタッフが逃げてしまい、原子炉加熱の危機も生じていたとされる。

旧ソ連閣僚会議はアルメニア原発の停止を決め、1989年に2基とも停止した。

その後、アゼルバイジャンとアルメニアの戦争が起こり、自国に化石燃料をもたないアルメニアは化石燃料をまったく輸入できない状況となった。このため、6年半にわたり、極度の電力不足の状況となった。

アルメニアは1991年末に旧ソ連から独立し、原発の運転再開と新規建設への支援を西側に求めた。
米・仏・露社の技術支援を得て、1995年11月に第2号機の運転を再開した。

EUは2004年までに閉鎖することを求めたが、現在も運転を続けている。


目次、項目別目次  

  http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (0)

豪州レアアース開発会社Lynas Corp. と三菱

豪州のレアアース開発会社のLynas Corp. を巡って、このところ豪州の新聞に「三菱」の記事が掲載されている。

1.三菱UFJファイナンシャルグループ

三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)Lynas株の9.99%を取得した。

これはMUFGが6月30日に、保有していたMorgan Stanleyの転換型優先株式の全てを普通株式に転換し、これによりMorgan Stanleyの議決権の約22.4%を保有し、同社を持分法適用関連会社としたことに伴うもの。

両社はLehmanショック時の2008年9月29日に戦略的資本提携で合意し、MUFGがMorgan Stanleyの優先株式を引き受けるとともに、企業金融・投資銀行業務、リテール業務、資産運用業務等の幅広い分野で、グローバルなアライアンス戦略を展開してきた。

本年4月に優先株式の普通株式への転換で合意した。

Morgan StanleyはこれまでLynasの株式購入を行っていたが、豪州の会社法によれば、Morgan Stanleyの株式の20%以上を保有したMUFGMorgan Stanleyの支配株主となり、Lynas9.99%の株主とみなされることとなった。

Lynasについては 2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大 

これについて、現地の報道のなかには、レアアースを求めて日本最大の商社の三菱(商事)Lynasの大株主になったとしているものもある。
「三菱」を混同したもので、実際にはレアアースに関しては、既に双日が同社との間で契約を締結している。

Lynas と双日は2010年11月に、レアアースの日本向け供給、およびLynas のレアアース拡張プロジェクトに関して、戦略的提携を締結することに基本合意し、2011年3月に双日と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、Lynasへ総額250百万米ドルを出融資することを決定し、10 年に亘って日本の消費量の約3 割にあたる年間約8,500 トン(±500 トン)以上のレアアース製品を長期供給する契約を締結している。

2010/11/25 双日、レアアースの供給・拡張プロジェクトで豪州Lynasと戦略的提携の基本合意

2.マレーシアのレアアース分離プラント

Lynasは西オーストラリア州のMt.Weld 鉱床でレアアースを採掘する。

同社は当初、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画したが、中国政府による締め付けが強くなったことから、中国を断念し、マレーシア東海岸のPahang 州 Kuantan のGebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する計画である。

ここにきて、マレーシアの計画に問題が出てきた。三菱化学の過去の行動によるものである。

計画が発表されると、近辺の住民の間で健康への影響を懸念する声が高まった。マレーシアの抗議団が豪州のLynas本社で反対のデモを行った。

マレーシアでは1979年に当時の三菱化成が35%出資でAsian Rare Earth (ARE)を設立し、1982年にイットリウムなどレア・アースをスズの鉱石と一緒に出るモナザイト鉱などから抽出する事業を開始した。

能力は年産 4200 トンの軽希土類、550トンの重希土類、4400トンのリン酸三カルシウムで、希土類は全て日本に輸出され、日本で分離精製されが、工場はトリウムを含む残土の保管施設を持たず、工場の裏にあった池や地面に野積み状態にしていた。

このトリウムはウランと同じように放射性物質で、日本では 1968年の原子炉等規制法の改正により、その投棄や保管には厳格な法規制が課せられ、1971年には日本での操業はなくなった。同社はマレーシアでこれを放置していた。

工場の目の前には人口1万人が住むBukit Merah 村があった。住民たちの間に健康被害が現れ、住民はAREの操業停止を求めて抗議活動を展開した。

三菱化学は1994年1月、マレーシアからの撤退を決め、問題の工場も閉鎖されたが、廃棄物処理施設の設置工事の契約締結は2009年8月になってからである。

2009/11/14 三菱化学、マレーシアの撤退工場に廃棄物処理施設を設置

今回の抗議はこれが繰り返されるのを恐れた住民とグリーングループが行ったが、これに政治も絡んだ。

2011年末にも予定される総選挙を前に、首相は外国資本の投資を望みつつ、国民の怒りを起こすことも恐れた。

首相は本年初めに、環境面の影響をもとにする反対を受け、石炭火力発電所建設を取りやめた。
Lynasへの反対を受けて、政府は香港のCVM Minerals Perakで計画していたレアアース採掘のFSの覚書を取り消した。

マレーシア政府はLynasに対し、廃棄物処理の詳細計画を提出するよう命じ、それまで操業ライセンスを抑えている、

Lynasは現在建設中の工場のスタートが遅れる可能性があるとしている。


目次、項目別目次  

http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (0)

2011年7月 6日 (水)

医薬業界、医師への過剰接待禁止へ 

製薬会社225社で構成する医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(医薬品公取協)は、製薬会社の医薬情報担当者(MR)による医師への接待にかかわる自主規制を、2012年4月から強化する。

医薬品公取協は、1984年に医療用医薬品の流通適正化推進の一環として、景品表示法に基づき公正取引委員会の認定を受けた公正競争規約の運用機関として設立された業界の自主規制のための団体。

医療用医薬品の供給・販売に際し、公正かつ自由な競争が行われるためのルールを定めた公正競争規約の周知徹底と公正競争規約に関する相談、指導等を目的としている。

接待にかかわる自主規制の見直しは2002年以来で、これまでも「華美過大な接待は好ましくない」としてきたが、過剰接待はなかなか止まなかった。

製薬会社と医師との「癒着」を厳しくチェックする傾向は、国際的な流れになっている。

医薬品公取協では以下のように述べている。

医療における医薬品の購入・選択は、品質と価格および的確な情報に基づく医療機関の適正な判断によって決められるべきであり、医療機関、医療担当者等に対する不当な金品・サービスなどの景品類提供は、この医薬品の適正な選択を歪め、過剰使用・不当使用を招くおそれがあります。

特に医薬品は生命に直接関連する商品であって、最終消費者は医薬品を選択する医師ではなく患者さんであること、その費用には公的財源が使用されていること等から、医薬品購入を誘引する手段として不当な景品類を提供する行為は、他の産業に比べて格段に大きな弊害をもたらします。

更には、薬剤価格の適正な決定を妨げ、薬価基準制度の適正な運営を阻害するおそれも生じます。

今回の改正後は以下の通りとなる。

・ゴルフ、カラオケ、観劇、スポーツ観戦、2次会 禁止
・製薬会社の自社製品にかかわる講演会後の立食パーティー
・講演会や研究会で講演やパネリスト、進行役などを慰労する飲食会
・講演会などの世話人会やアドバイザリー会議などでの飲食
・製薬会社の社内研修会での講師の慰労
1人あたり 2万円上限
・商談や打ち合わせを伴う飲食 1人あたり 5千円上限
・製品説明会などの弁当や茶菓 1人あたり 3千円上限

違反を繰り返したり、悪質な違反の場合には社名や内容の公表や、違約金や除名などの処分を検討する。

ーーー

日本製薬工業協会は6月15日、米Merck & Co., Inc.の子会社のMSDを(現行の)公正競争規約違反で「会員資格停止」措置を決定したと発表した。

昨年10月に「警告」措置を受けたにもかかわらず、同様の事案が発覚したことを重く見て、除名に次ぐ重い処分に踏み切った。
今後6カ月ごとに、MSDから体制改善に向けた活動報告を受け、当面は2年間にわたり指導を行っていく考え。

違反事項は以下の通り。

・インターネットによる血圧値、検査結果データ報告の対価として、商品券を提供
・若手糖尿病専門医を派遣した豪州の研修会で、謝金と旅費・宿泊費などを負担
・ワクチンに関するアドバイザリーパネルで役割のない参加医師に謝金を支払
・コレステロールに関するアドバイザリーパネルで役割のない参加医師に謝金を支払

これら4件の事案について、同協議会は「調査・研究委託、仕事の依頼の対価として、金銭を提供したかのような形を取っているが、実体を伴っていない」と指摘した。


目次、項目別目次  

 http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (1)

2011年7月 5日 (火)

番外編

本日でこのブログは2000回となりました。

第1号は2006年2月15日でした。

翌年の2007年が、ベルギー系アメリカ人のベークランド博士がフェノール樹脂(商品名:ベークライト)を開発し、初めてプラスチックが誕生してから100周年に当たるという記事である。

    2006/2/15 
プラスチック100周年

第1号から今日まで、5年4か月ですが、おかげさまで平日は2800人前後の方が見てくれています。

今後も引き続き、書いていくつもりですので、よろしくお願いします。

ーーー

奇しくも本年は、第1号で書いたベークライトが日本で最初に試作されて100年にあたり、日本のプラスチック100周年になる。

発明者のベークランド博士の親友であった高峰譲吉博士が、特許権実施の承諾を受け、三共商店(今の第一三共)の品川工場で製造した。
(そもそも、三共商店は高峰博士のタカヂアスターゼを技術導入して1899年に設立されたもので、1913年に三共株式会社となったが、初代社長に高峰博士が就任している)

1932年にベークライト部門が三共株式会社から独立し、日本ベークライト株式会社が設立された。その後1955年に住友化工材工業(1938年㈱合成樹脂工業所として設立)と合併、住友ベークライト株式会社になった。

| | コメント (2)

循環注水冷却が本格稼働 

東京電力は6月14日、福島第1原発で放射性物質を高濃度に含む汚染水を浄化するシステムの一部の試運転を始めた。

6月6日から装置の動きを確認、10日にKurionの装置で水漏れが発生した。当初、水漏れや流量不足が見つかったが、その後の補修や点検で改善した。   

2011/6/16 福島原発、汚染水浄化装置

その後、トラブルが続出した。

10万トンを超える高濃度汚染水を浄化するのは世界でも経験がなく、東芝の浄化装置、KurionArebaの放射能除去システム、日立GEニュークリア・エナジーの淡水化装置を組み合わせる複雑なもので、配管の長さは4kmにもなる。

Kurionによれば、「米スリーマイル島原発事故では汚染水浄化の準備に18カ月かかった」のを、設計完了から5週間で完成させる強行軍となった。

このため、初期トラブルは当初から想定されたが、実際のトラブルの大部分は人為的なミスであった。しかも初歩的なミスが多い。

6/14 Kurion装置で動作を確認、セシウムの量を最大3300分の1に。
15 Areva装置に低濃度の汚染水を流し、性能をチェック
両装置の一貫テスト
16 Kurionで水漏れが発生
17 本格運転開始
セシウム吸着塔24基のうち最初の4基部分で箱形設備の表面線量が交換基準の毎時
4ミリシーベルトに。
18日午前054分、システムの運転をいったん停止。

装置の処理能力はもっと高いが、吸着剤交換の際に作業員の被ばく量を抑えるため4ミリシーベルトを基準にしている。
装置は本来、停止させずに汚染水を流す配管を切り替えながら吸着剤を交換することができる。東電は運転させながら1日
24本の交換を想定していた。しかし、今回は予想以上に線量の上昇が早く、念のため停止させた。
→汚染水の放射性物質の濃度が想定以上に高かったためであることが判明

21 試験運転再開
Aevaの機器に水を送るポンプの一部が自動停止
22 Kurionの装置が、海水混じりの高濃度汚染水だと50分の1程度にしかならない。

弁の開閉表示の誤りのため、吸着塔4本のうち、1本だけ迂回させるところを3本を迂回させていたことが判明
23日に再開

24 目標の放射性物質の濃度を10万分の1に下げる能力に達した。
淡水化装置も同日から稼働、塩分濃度約250分の1に。
27 「循環注水冷却」を開始。
ホースの継ぎ目から水が漏れたため、1時間半で中断

PVC製、直径約10センチで、処理水タンクから原子炉までは 約1.5kmあり、ホース約50本をつないでいる。

29 再開。夜に再度手動停止。

本来「自動」に設定する弁が「手動」になっており、運転中に弁が閉じたままの状態になった。このため、弁の上流側のタンクの水位が上昇。

30 Areba装置の放射性物質を除去した後の処理水の貯蔵タンクの水位の異常低下で停止。

タンクの水量を30%に設定するべきなのに、作業員が誤って3%に設定。

東京電力は7月2日、福島第1原発の循環注水冷却を安定させるための貯水タンク(1000立方メートル)を新設し、中断していた汚染浄化処理した水による原子炉への注水を再開した。

これまでは、ダムからの淡水(毎時3立方メートル)と汚染水浄化システムで処理した水(毎時13立方メートル)を、別々の系統で1~3号機へ注水していた。
しかし配管が複雑で、水位や圧力が変動しやすく、6月27日に汚染浄化した処理水を原子炉に注水し始めてから、水漏れなどで6回も運転が停止した。連続注水できたのは29日から7月1日までの42時間が最長だった。

複数の系統でも安定的に注水するため、圧力変動などを緩衝させる機能を持たせた貯水タンクを6月1日に新設し、今後は処理水と真水を新設するタンクに集め、1本の配管で原子炉に注水する。

再開後の注水量(毎時16立方メートル)はすべて処理水に切り替えており、汚染水をこれ以上増やさない完全な循環注水が実現したことになる。処理水が使用できない場合は、従来のようにダムからの淡水を貯水タンクを介して使用できる。 

とりあえず、循環注水が出来たが、大きな問題が残っている。

東電ではこの処理で発生する汚泥の1cm3あたり1億ベクレルという高濃度の放射性廃棄物が年末までに2000m3(ドラム缶1万本)発生するとみている。そこに含まれる放射性物質は20京ベクレルに達する。
この高濃度放射性廃棄物は、一時的に敷地内に保管するが、最終処分の方法はこれから考える必要がある。

 

付記

7月10日、Arevaの「薬剤注入装置」から「凝集沈殿装置」につながる部分から薬剤が漏れ、停止した。

ーーー

東京電力は6月30日、「メガフロート」への低濃度放射性汚染水移送を開始した。
6号機の仮設タンクに貯めてある低濃度放射性汚染水がタンク容量の限界に近づいたためで、メガフロートへの放射性汚染水の移送は今回が初となる。

メガフロートは静岡市が海づり公園で使っていたもので、長さ136m、幅46m、高さ3mの鋼製の浮体構造物。
中が空洞になっており、約1万トン入れられる。クレーンも装備されており、原子炉建屋を覆うカバーの鋼材の荷揚げなどにも活用する。

造船会社や鉄鋼会社などが共同で設立したメガフロート技術研究組合が1999年、羽田空港D滑走路への採用を目指して神奈川県横須賀市沖での実証実験のために建造した。


目次、項目別目次  

http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (0)

2011年7月 4日 (月)

三井物産、テキサス州のシェールオイル/ガス開発に参加;米国でシェール論争 

三井物産は6月30日、子会社Mitsui E&P Texas LPを通じ、米国SM Energy Companyのテキサス州Eagle Ford シェール地区の権益の12.5%を取得し、開発に参加する契約を締結したと発表した。

取得対象は以下の権益の12.5%
(1)持分面積約160km2のイーグルフォード・シェール層
(2)上記(1)エリアに加え約30km2の合計持分面積190km2のピアサル・シェール層(イーグルフォード・シェールの下に位置)
なお、同鉱区のオペレーターはAnadarko Petroleum
である。

対価は約6.8億ドルでSM Energyの将来開発費を肩代わり負担する。

三井持分は、ピーク時生産量が原油換算で日量2万バレルで、生産期間は約30年間、開発総費用は約12億ドル。

三井とSM Energyは今後同エリアを対象として新規権益を共同取得していくことでも合意した。

三井物産にとって、これはMarcellus Shaleに次ぐ米国のシェール開発の第2弾となる。

ーーー

米国ではシェールガス開発がブームとなっている。

Obama大統領も、天然ガス(シェールガス)の可能性は膨大だと述べた。

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は発表の都度、国内のシェールガスの供給量を増やしており、投資家も業界も明るい未来を繰り返している。

日本の各社も下記の通り、これに出資している。

しかし、626日付のNew York Timesが“Behind Veneer, Doubt on Future of Natural Gas”という記事で、EIA内部から提供された職員のe-mail を公表し、多くの職員がシェールガスの将来に疑念を抱いていることを明らかにし、問題となっている。

この記事を受けて連邦議会の議員が628日に、SECEIA、会計検査院などに対し、天然ガス業界が長期的な収益性や埋蔵量などを正確に投資家に伝えているかどうかを調査するよう要求した。
シェールガスの採掘、特に水圧破砕hydrofracking)技術について、環境面、採算面での懸念が増大している。

各州でも情報を要求する動きが強まった。

New York Timesがコピーを入手したe-mailでのEIAの職員の発言は以下の通り。

・シェール産業は失敗するだろう。
・恐らく多くの企業が破産するだろう。
・産出量に関する業界の予測は誇張されている。
・井戸がいつまで生産できるかや、土地ブームの時に払った高いリース料、シェールガス掘削の予測不可能性への懸念
・収益性の誇張(ベストな井戸の実績や、過大に楽観的なモデルの使用)
・成功した井戸の例がすべてに当て嵌まると誤解。

EIAは業界と結びつきがある外部のコンサルタントの調査に依存している。
EIAの上部が外部のコンサルタントに依存し過ぎ、不完全な、たびたび非現実的なデータを使っている


EIA
ではデータはシェールガスが国内の天然ガスの供給の重要なソースになったことを示しているとして、これらの批判を否定した。

しかし、非常に多くの職員(なかにはかなり上位の職員も)がシェールガスの経済性に疑いを示している。

ーーー

シェールガスの環境問題については、2011/3/31Time Magazineが“Could Shale Gas Power the World?”という記事を載せている。

水圧破砕(
fracking)では大量の水と薬剤を投入するが、これが地下水を汚染するとの懸念がある。
(一つの井戸で
19百万リットルの水と、その0.5%の薬剤を投入する)
しかし、
Marcellusでは地盤からみて、この可能性は少ないだろうとしている。(間に数千フィートの岩盤がある)

問題は、地表近くで、井戸のケーシングでのセメント工事のミスにより、上がってきたメタンが漏れて地下水を汚染する可能性がある。

また、
frackingでは大量の有害な排水が出てくる。テキサスなどではDeepwellに投入して処分するが、ペンシルバニアでは地形上これが出来ず、下水処理場に輸送して処理している。輸送前の貯水池からの漏えいや、輸送中の漏れ、処理場で汚染物質を処理できないケースなどがある。
(薬剤が何かは明らかにされていない。地底の放射能に汚染されている可能性もある)

排水の再利用などの考えもあるが、計画通りなら今の量の何十倍にもなるため、今後どうするのか、大問題であるとしている。

世界のドキュメンタリー「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」では飲み水の着色や異臭はもとより、家庭の蛇口から出る水が燃えるという異常な事態を示している。

NHK BS世界のドキュメンタリーで7月31日にアンコール放送される。
  前篇 午後1:00-1:50
  後篇 午後2:00-2:50

参考 2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」

ーーー

北米のシェールガス開発では、以下の各社が開発に参加している。

三菱商事 ブリティッシュ・コロンビア州のCordova堆積盆地のシェールガス
 
Penn West Energy Trustから50%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画 
三井物産 ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアのシェールガス
 
Anadarko Petroleum から32.5%の権益

 
2010/2/18  三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画

②テキサス州Eagle Ford shale (今回)
 SM Energyから12.5%の権益

住友商事 ①テキサス州Barnett Shale field開発
 
Carrizo Oil & Gasから12.5%の権益

②ペンシルベニア州
Marcellus Shale field開発
 
Rex Energyから30%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画 
双日 テキサス州北東部Carthage onshore gas 鉱区Tightsand gas、シェールガス
 
20077月に権益取得

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

伊藤忠 ワイオミング州Niobraraのシェールオイル
  
Fidelity Exploration & ProductionMDU Resources Group子会社)から25%の権益

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

日揮 テキサス州Eagle Ford シェール
  
2011/6 TriTech I, LLCからChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益

 


目次、項目別目次  

 http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (0)

2011年7月 2日 (土)

経産省、東日本大震災の火災事故でコスモ石油に行政処分

経済産業省原子力安全・保安院は6月30日、コスモ石油に対し、千葉製油所の高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係わる認定を取り消す行政処分を行ったと発表した。

東日本大震災で発生した千葉製油所(千葉県市原市)の火災をめぐり、緊急時の安全確保基準に違反していたと判断した。

311 1547分頃 LPGタンク付近で火災を確認、全装置停止
3
21日 10時10分   鎮火確認

処分理由は以下の通り。
①今回の事故で重症1名、軽傷5名の負傷者を出したほか、製油所外への部材飛散、製油所外での火災を引き起こした。
②千葉県知事から事故が発生したLPG出荷設備の使用停止命令を受けた
③同LPG出荷設備で、高圧ガス保安法で設置を義務付けられている緊急遮断弁3基をピンで「開」状態で固定していた。

また、調査過程で、千葉製油所での高圧ガス保安法の手続き不備、千葉製油所と四日市製油所での技術上の基準の遵守不履行が判明したため、厳重注意を行い、再発防止策の策定を指示した。
①千葉製油所でプロパンガス貯槽として許可を受けていた2基に、許可を受けずにブタンガスの貯蔵を行っていた。
②千葉と四日市で、「緊急遮断弁」を「開」状態で固定していた。

さらに、高圧ガス保安法で緊急遮断弁の設置を義務付けられている事業者に対し、注意喚起を行った。

完成検査及び保安検査に係わる認定取消により、コスモ石油千葉製油所は自ら法定検査(完成検査・保安検査)を行うことが出来ず、知事の検査を受ける必要がある。
また、法律に定められた要件を満足していると認められた設備については、最高5年の連続運転が可能となっているが、取消により、保安検査を年1回受けることが必要となる。(毎年、約1ヶ月の操業停止、定期修理の実施が必要となる)

同工場は今後2年間は認定を受けることが出来ない。

 

(参考)高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係る認定について

  完成検査 保安検査
原則 コンビナート等の高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、補修等の変更工事を行う際には、都道府県知事の許可を得るとともに、完了時に都道府県知事が行う完成検査を受けなければならない。
(高圧ガス保安法第20条第3項本文)
高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、都道府県知事が行う保安検査を年1回受けなければならない。
(同法第35条第1項本文)
認定 自ら変更工事に係る完成検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定完成検査実施者)については、自ら完成検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による完成検査を受けなくても良い。
(同法第20条第3項第2号)
自ら保安検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定保安検査実施者)については、自ら保安検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による保安検査を受けなくても良い。
(同法第35条第1項第2号)
1997年4月、要件を満足していると認められた設備については、
最高5年の連続運転が可能となった。
取消 「高圧ガスによる災害が発生したとき」、「認定基準に該当していないと認められるとき」等は、経済産業大臣は、認定を取り消すことができる。(同法第39条の12第1項)
認定取消し後2年間は、再び認定を受けることができない。(同法第39条の6第1項第5号)

ーーー

最近では2008年2月に、三菱化学の鹿島事業所の事故で完成検査及び保安検査に係る認定を取り消す行政処分が行われた。

 2008/2/15 三菱化学鹿島事業所の事故で行政処分

2003年6月以降、認定保安検査実施者等の認定を受けた事業所において、法令に定められた検査が適正に行われていなかった事例が続けて報告された。経済産業省は認定保安検査実施者等の認定を受けていた全ての事業所に対し、保安検査の実施状況等を報告するよう指示、同年9月8日までに提出された各事業者からの報告について調査を行い、合計で6社、11事業所が認定を取り消された。

東ソー/四日市事業所
新日本石油精製/麻里布製油所・大阪製油所
三井化学/大阪工場
日本ゼオン/徳山工場・水島工場
協和油化/四日市工場・千葉工場
旭化成ケミカルズ/水島製造所B地区・同C地区・川崎製造所


目次、項目別目次  

http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


| | コメント (0)

2011年6月29日 (水)

Eastman Chemical、Sterling Chemicalsを買収

Eastman Chemical は622日、Sterling Chemicalsを現金1億ドルで買収する契約を締結したと発表した。

Sterling はTexas City のBPのプラント(PX及びMXプラント)に隣接し、酢酸と可塑剤のプラントを持っている。

酢酸は年産能力58万トンで、全量をBPに供給している。
可塑剤は全量を
BASFに供給していた。しかしBASF2010年末で購入契約を終結させた。このため、現在は休止中。

Eastman ではSterling の現在休止中の可塑剤設備を再稼働し、Eastman168などを含む非フタル酸系可塑剤を製造する計画で、非フタル酸系可塑剤の需要の伸びに対応する。

フタル酸エステル系可塑剤は各国で規制されている。
米国では、
 
DEHPDBPBBPはおもちゃと育児用品に使用禁止
 
DINPDIDPDNOPは子供の口に含まれる可能性があるおしゃぶりと育児用品に使用禁止
   おもちゃは
12 歳以下
   育児用品は
3 歳以下の子供を意図した製品

 DEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、 DBP :フタル酸ジブチル、BBP :フタル酸ブチルベンジル
 DINP :フタル酸ジイソノニル、DIDP :フタル酸ジイソデシル  DNOP:フタル酸ジノルマルオクチル

ーーー

Sterling はMonsanto のTexas Cityの工場を買収し、運営するため、1986年に設立された。

工場では、スチレンモノマー、アクリロニトリル、酢酸、可塑剤、ターシャリブチルアミン、シアン化ナトリウムの6製品を生産していた。

Sterling は1992年に Tenneco Canadaからパルプケミカル部門を買収した。パルプの漂白剤の塩素酸ナトリウムの工場をカナダに4つ所有している。
同社はその後、ジョージア州Valdostaに年産
11万トンの塩素酸ナトリウム工場を建設した。
更に、豪州New South Walesでの工場建設を発表した。(実現せず)

しかし、同社は経営が悪化、20017月にChapter 11を申請した。

同社は再建のため、カナダとValdostaの塩素酸ナトリウム工場を売却した。
カナダはCanexus (旧称 Nexen Chemicals)に、
Valdosta工場はErco Worldwideに売却。

アクリロニトリル事業については赤字が続き、2005年に撤退した。

ターシャリブチルアミンはMonsantoのゴムの生産に使用されていたが、1995年にMonsantoから分離したSolutia Akzo Nobelが両社のゴム薬品事業を統合して、50/50JVFlexsysを設立した際に、Solutiaがこの事業を買い戻した。
(その後、
2007年にSolutiaAkzo持分を買収し、現在はSolutia100%子会社となっている。)

スチレンモノマープラント(775千トン)は2007年のINEOS NOVA発足に当たり、NOVA Chemicalsがスチレンモノマーの独占権を取得したが、米国のスチレン過剰対策として、同年10月にプラントを買い取ったうえで、停止した。

シアン化ナトリウムについては全量をDuPontに供給していたが、2005年に契約を打ち切り、停止した。

この結果、現在は酢酸と可塑剤だけで、可塑剤は停止している。

 


目次、項目別目次  

 http://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧