« Braskem、Greeen PP 製造へ | トップページ | 注目企業の9月中間決算ー4  宇部興産、クラレ、東レ、日本ゼオン »

2010年11月10日 (水)

TPP参加と農業問題

政府は11月9日の閣議で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)について、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始するとした、包括的経済連携に関する基本方針を決定した。

菅首相は、「世界の国々が国を開き自由な貿易圏を形成しているなかで、わが国はこの潮流から取り残されつつあるという危機感を抱いている。平成の開国は、国民の生活を必ずプラスにする」と述べた。

基本方針概要は以下の通り。

TPPは情報収集を進めながら対応し、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。

・アジア太平洋自由貿易圏(EFAAP)実現に向けた閣僚会合を開催する。

・農業、労働力の移動などの分野で国内改革を先行的に推進する。

・持続可能な力強い農業を育てるため、総理大臣を議長とする農業構造改革推進本部を設置し、来年6月をめどに基本方針を決定する。

・関税措置などのあり方を見直し、透明性の高い納税者負担制度への移行を検討する。

・非関税障壁撤廃に向け、行政刷新会議で11年3月までに規制改革の具体的方針を決定する。

・看護士、介護福祉士などの海外の移動に関し、検討グループを設置、11年6月までに基本方針を策定する。

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定している。

これまで、「GDPの1.5%の一次産業を守るため、98.5%のかなりの部分が犠牲となっている」とする外務省、経産省などと、主要農産物19品目の関税を完全撤廃すれば(農業支援策なしのケースで)、農業生産は3.7兆円減少し、雇用は340万人減、カロリーベース自給率は40%から14%に落ち込むとする農水省が対立していた。

  TPPとこれまでの議論については、2010/10/23 チリ共和国のトピックスー太平洋戦争・FTA先進国・TPP

ーーー

韓国は米国との間でFTAを締結したが(未発効)、農業については以下の通りとした。

      牛肉(15年で)・豚肉(最長10年で)関税引き下げ
      コメは対象外
      米国産オレンジの関税を9月~2月は50%を維持、他は30%に

本年締結の韓国・EUFTAでは
  EU産ワインは、直ちに関税撤廃
  EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、
  その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
  但し、韓国のコメ市場は開放しない。
  トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。

韓国政府は、韓米FTAの締結を受け、農業部門の被害を補償し、農業の競争力を強化するため、2008年から10年間で、20兆4000億ウォンを支援することを決めた。
2013年までに、従来の「農業・農村の中長期投・融資計画」により、12兆1000億ウォンを調達し、2014年から17年までに8兆3000億ウォンを追加で確保する計画。

2007年4月に政府間交渉をまとめた盧武絃前大統領は、農民支援や農業改革策を講じただけでなく、自ら先頭に立って農民らの猛烈な反発を正面突破した。

対米交渉チームとは別に反対派の説得チームを編成し、公聴会などを「合計200回以上」も開催。政府交渉の前後には各農業団体代表者に対し、方針や結果を細かく説明した。
政府は新聞広告などを使って反対意見に対応し、反対論を徐々に収めていった。

ーーー

日本の場合、将来の農業をどうするのかのビジョンがないのが問題である。

1995年にコメ輸入が一部自由化された際、政府は6年で計6兆円超の対策費を計上したが、土木事業などに使われ農業の構造改革にはつながらなかった。

今は財政難に加え、「巨額の対策費をつぎ込んでも、農業が強くなる保証はない」(民主党議員)。

先ず、将来ビジョンを確立することが必要である。

河野太郎氏は11月8日のブログ「ごまめの歯ぎしり」で、「始めよう、農政改革」として、以下の通り述べている。

地元のJAとの農政勉強会。

カロリーベースの食糧自給率などというまったくのデタラメを政策目標に掲げているような農政では、日本の農業は改革できないと力説する。

こんなことをしている農水省なんか潰してしまって経産省の第一次産業局にでも農政を任せる方がよっぽど農業を強くできる。

食糧自給率などというまやかしをやめ、農業生産額、農業所得、農作物の輸出を増やすことを目標に掲げ、流通やマーケティングを強化しながら農業を強くすべきだ。そのためにJAはできることを最大限にやるべきだ。

都市近郊農業の場合、最大の問題は農地だ。この土地で将来もずっと農業をやっていくのか、どこかの時点でその土地を開発するのかという踏ん切りが必要だ。もしその土地で、農業をずっと続けていくならば、固定資産税の減免や相続税の対象から外す、その代わりに売却益は一切得られないという扱いが必要だ。

大地と一体でなければ農地ではないという扱いも根本から変えなければならないし、農業をするために必要な農地以外の土地の扱いもきちんと農地と一体で考えなければならない。

TPPやFTAへの参加は避けられないし、むしろ積極的にルール作りに最初から関わるべきだと訴える。逃げてばかりの農水省の政策を根本から変えて、農業の構造改革を始める必要がある。

都市近郊農業こそ、まず最初に変わっていけるはずだ。

東京大学大学院農学生命科学研究科の川島博之准教授の著書「食料自給率の罠 輸出が日本の農業を強くする」は上の河野氏の主張を理論的に詳細に説明している。

カロリーベース自給率は陰謀
  輸入食料の85%は贅沢品

・食料の海外依存でも、不測の事態は起こり得ない。

   (仮に輸入が止まる場合、石油も、化学肥料のうち全量輸入のカリと燐酸も止まることとなる。)

・穀物は安く、利益を出すには規模拡大しかないが、地方の人口が多い日本では規模拡大はできない。

   日本は1戸当たり面積が米国の1/100。
   米国並みの農業にするには農家100戸を1戸にまとめることが必要だが、
     安い価格で農地を売らない。
     人口減で「村」がつぶれる。(農協も不要、選挙地盤もなくなる)  

   仮に集約できても、生活水準の高さなどから、タイなどには負ける。

   結論:自給率を高めるのは無理

・広い土地を必要としない農業は有望 
  農業における選択と集中(守るべき分野と強くする分野)

・オランダの例
  安い穀物を全量輸入、高価な農産品を輸出し、農業貿易収支で黒字。

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


|

« Braskem、Greeen PP 製造へ | トップページ | 注目企業の9月中間決算ー4  宇部興産、クラレ、東レ、日本ゼオン »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。