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2010年11月 3日 (水)

法人税率引き下げとナフサ課税 

菅政権発足後初となる政府税制調査会(会長=野田佳彦財務相)が10月6日、首相官邸で開かれ、2011年度税制改正の論議がスタートした。

菅直人首相は「法人課税の見直しを議論し、結論を得てほしい」と述べ、法人税減税の具体化を指示した。
法人税の実効税率(現行約40%)について、政府は5%引き下げを検討する。

米国はカリフォルニア州の場合、ドイツは全ドイツ平均、スイスは州により異なり、現在12.7~24.5%となっている。

財務省は法人税率を5%引き下げると国税で1兆7000億円、地方税で3000億円、合計2兆円程度の減収になるとし、経産省に対し財源や効果を明示するように求めた。

政府は6月に閣議決定した財政運営戦略で、新たな減税措置は税収減を穴埋めする代替財源の確保を条件とするルールを設定している。

経済産業省は10月28日、2011年度税制改正で要望している法人税率の5%引き下げを実現した場合の効果についての試算をまとめた。経済産業省は金融危機後に急減した法人税収をもとに5%下げに必要な財源を1兆円とはじいている。

GDPの押し上げ効果を合計14.4兆円と試算。海外移転抑制や国内投資促進の効果などを合わせ、3年後のGDP成長率を2.6ポイント押し上げると主張。

財源については租税特別措置、減価償却費制度、繰越欠損金制度の見直しなどで「5000億~6000億円程度を想定」。法人税減税による増収効果「4800億~6400億円」と合わせ、1兆円程度は確保できるとした。

さらに「法人税率引き下げは中長期的に経済成長につながり、数年後の最大の税収確保策になる」と強調。3年後に1兆1500億円の国税の増収効果が見込めるとの試算を示した。 

これに対し、政府税制調査会が検討している代替財源案のたたき台が判明した。

内容は以下の通りで、全体で2.6兆~4.5兆円の財源確保につながるとしている。

財務省は法人税率引き下げの影響を2兆円とみており、また減税による増収効果も疑問視している。
今回の試算は法人税率引き下げ影響を上回るもので、「考えられる財源を列挙」したものとしている。

ナフサの免税措置の縮小・見直し or
  石油化学製品の原料ナフサの免税措置の縮小
①暫定税率分課税 1兆6800億円~1兆7200億円
②燃料部分への課税    4300億円~4400億円
減価償却制度の抜本見直し 6000億円~8000億円
繰越欠損金の利用制限
  繰越欠損金の課税所得との相殺を、課税所得の「半分まで」に制限
  大手6銀行グループの2009年度の法人税の納付額がゼロ
4000億円~5000億円
研究開発税制の大幅縮減
  「総額型」の全廃
2700億円~5100億円
準備金の廃止・縮減 3300億円
貸倒引当金などの廃止・縮減 2000億円~2500億円
受取配当の益金不算入の見直し 1500億円~1700億円
特別償却などの廃止・縮減 1200億円~1400億円
不動産の買い換え特例の廃止・縮減 700億円~900億円
一般寄付金の損金不算入の廃止・縮減 200億円~300億円
合計 ナフサ②のケースの最小 2兆5900億円
ナフサ①のケースの最大 4兆5400億円

ーーー

ナフサ等の揮発油は下記の課税がされるが、石油化学用のナフサについては租税特別措置法で免税となっている。

  石油石炭税 揮発油税
税率 原油・石油製品 2,040 円/KL
[本則の税率]
   24,300 円/KL (国税)
  +4,400 円/KL (地方税)
     
[暫定税率]
  24,300 円/KL (国税)
  + 800 円/KL (地方税)
     
53,800 円/KL  
     
免税の
定め方
租税特別措置法で2年毎に延長 租税特別措置法で期限を定めず
に免税
免税
相当額
  約1,000億円   約3兆円

2008年に当時の野党の民主党(参議院で多数)の反対で租税特別措置法の改正が通らない可能性が出て、大問題となった。
(揮発油税免税は期限を定めていないが、石油石炭税は2年ごとの延長のため、改正がないと課税となってしまう)

租税特別措置法改正案のうち、道路関連の暫定税率を除いた優遇措置を5月末まで延ばす「つなぎ法案」が3月31日に成立、6月19日の衆議院本会議で再可決し、延長された。

2008/1/22 ガソリン税問題と石油化学業界への影響

2009年秋に、政府税制調査会で租税特別措置の見直し等の一環として、ナフサ等石油化学原料の免税に手を加えようとする動きが出た。

これに対し、石化協は11月19日、緊急決議を行った。

1. 工業原料の非課税原則は世界の常識
    世界を見渡しても原料用ナフサ等に課税している国はない。
   
2. 世界に類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
  石油化学工業は下流部門を含めると出荷額30兆円、雇用者73万人、中小企業2万社を擁する重要産業。
中東産油国の石化増強などで厳しい競争にさらされているこの産業の存立基盤をさらに脅かす。
   
3. ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
  各種容器、食品包装、断熱材などから電気製品や自動車の部品に至るまで材料として広汎に使用され、課税に伴う価格上昇は国民生活に大きな影響を与えるおそれがある。
   
4. 民主党の政策一貫性を期待
  昨年租税特別措置法が期限切れを迎えた時、野党であった民主党は租特法の延長には反対しつつも国民生活に多大な影響のある7項目(ナフサ等の石油石炭税免税を含む)の免税措置を延長する法案を参議院に提出した。
民主党の主張の一貫性を期待。

2010年度税制改正の焦点となっていたナフサに対する租税特別措置については、課税化を見送り、免税措置を継続することとなった。

2009/12/3 「ナフサ免税」継続 
 

今回の政府税調内で有力視されている案は、石油化学製品の製造工程などで燃料として使われる「オフガス」への課税。
オフガスは税制法上は“原料”との通達が出ている。)

経産省によれば、オフガスはナフサの10%程度を占め、課税すれば3000億円規模の負担増となる。
(政府税調試算は上記の通り、4300~4400億円)
原油価格のアップなどと異なり、これは日本だけのコストアップとなるため、国内・国外とも価格転嫁は不可能である。

エチレンセンター各社の損益状況は以下の通りで、課税されれば、中東や中国の石化大増設により存続が危ぶまれる日本の石油化学産業の「存立が不可能になる」(経産省)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大畠章宏経産相は10月26日の会見で、「国際的にも課税していない。断固として反対」と、ナフサ免税の見直しに異議を唱えた。
国際的にナフサ原料へ課税している例はなく、課税すれば、国産品は価格面で輸入品に太刀打ちできなくなるとして、経産省は免税の恒久化を要望する。

日本経団連の米倉会長は10月25日の定例会見で、「世界各国でもナフサを原料として使う場合は無税として認められている」と述べ、「日本だけが課税すれば、法人税を下げて投資・雇用を増やす流れは完全に断ち切られ、日本国内の数十万人の化学産業労働者が不要になる」と強い懸念を示した。

石化協の高橋会長(昭和電工社長)は、「原料非課税は国際的に一般化している。オフガスも石化原料であり課税している国は皆無だ。課税には絶対に反対である」、「石化産業は、加工産業の裾野が広く中小企業も多い。原料課税による国際競争力喪失はわが国の経済や雇用問題に大きな影響を与える」と述べた。

11月2日の政府税調による意見聴取で、経団連の渡辺副会長は、「安易な課税ベースの拡大は経済に悪影響を及ぼし、雇用の確保につながらない」とし、ナフサについては、「わずかでも課税すれば、日本で石油化学産業は立地を断念せざるを得ず、70万人の雇用が一気に失われることが必至だ」と訴えた。

付記

石化協は11月19日、「原料ナフサの課税絶対反対 総決起大会宣言」を発表した。

1.工業原料の非課税原則は世界の常識
2.世界の類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
3.ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
4.副生ガスの課税は論外

1~3は上記の昨年11月の緊急決議と同じだが、今回はオフガスが対象となる可能性があるため、4が加わった。

4.副生ガスの課税は論外
副生ガスは製造プロセス上やむを得ず生ずるものであり、資源節約のために有効利用されている。現行税法上も石化工業で使うナフサは副生ガスを含めて免税とされており、世界でも課税の例はない。

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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