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2010年10月14日 (木)

インドネシア、アサハンアルミの将来

10月11日の日本経済新聞は
「インドネシア、アルミ一貫生産めざす 日本との精錬合弁 経営権獲得へ交渉」
と題する以下の内容の記事を掲載している。

インドネシアと日本のJVのアサハンアルミが操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府は日本の出資分を買い取る権利を持つ。

現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。
JV協定は「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

インドネシア側はボーキサイト生産を手掛ける国営鉱山大手Aneka Tambang (Antam) を経営に参画させ出資比率を50%超に引き上げたい考え。

Antamは中国の資源大手、杭州錦江集団と、中間原料のアルミナを年100万トン生産することで合意した。14年の稼働をめざす。

インドネシアはボーキサイト生産国だが、これまでは全量を輸出し、アサハン事業向けのアルミナは輸入してきた。
Antamのアサハン事業への参画と中国との合弁を通じ、ボーキサイトからアルミニウムまで国内で一貫生産する体制が整う。

ーーー

インドネシア政府は、スマトラ島の産業開発のため、アサハン川に大水力発電所を建設し、その豊富、低廉な電力をもって、アルミニウム製錬を行なうことを計画し、これに対する外国企業の参加を期待した。

1969年には、アメリカのカイザー、住友化学・日本軽金属・昭和電工の日本3社連合、さらにアルコアが相次いで同地におけるアルミニウム製錬に関心を表明した。

その後、日本側はアルミ精錬と電力開発の一括実施を計画、米国側にも参加を求めたが、米国2社は資金の調達難と電力開発の一括実施に強い難色を示し、1974年に参加を断念したため、本計画は日本側のみで実現を図ることとなった。
住友化学が幹事会社となり、三井アルミニウムと三菱化成を加え、更に、住友商事・伊藤忠商事・日商岩井・日綿実業・丸紅・三菱商事・三井物産の7商社に参加を求め、業界をあげて取り組むこととなった。

計画は以下の通り。
 北スマトラ、
Kuala Tanjung地区にアルミニウム年産225千トンの製錬工場(75千トン3系列)
 トバ湖から流れるアサハン川の上流の
SiguraguraTanggaの両瀑布に最大出力513千kwの発電所
 原料アルミナは輸入
(Alcoa of Australia)
 所要資金は2500億円
  (タウン、道路、港湾などのインフラの整備を含む)
 製錬工場の第1系列は1981年後半に稼動し、全設備の完成は1984年。

インドネシア側は同国のナショナルプロジェクトとして推進することにし、スハルト大統領は1975年に同国を訪問した河本通産大臣に対し、日本政府からの資金供与を強く要請した。

1975年7月、日本政府は、本計画を日本・インドネシア両国間の最重要経済プロジェクトとして実現を図ることとし、日本輸出入銀行、海外経済協力基金と国際協力事業団を通じ、所要の資金援助を行なうことを閣議決定した。

1975年7月に日本側参加12社とインドネシア政府間の基本協定が締結された。

日本側の地金引取量は生産量からインドネシア側 の引取量(1/3を上限)を除いたもの
(その後の修正で、3/5を日本向け、2/5をインドネシア国内向けに)

この協定の有効期間は「生産開始」(全炉の2/3が通電した日の翌月1日)から30年後に満了
設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管される。

同年末に日本側投資会社の「日本アサハンアルミニウム」が設立された。

国際協力銀行 50%
精錬5社 各7.5%、計37.5%
7商社合計 12.5%

1976年1月、日本アサハン 90%、インドネシア政府 10%の出資で、P.T. Indonesia Asahan Aluminium (INALUM)が設立された。

その後、詳細FSが実施され、石油危機の影響による資機材の価格、労務費などの上昇と一部設計の変更により、見直し後の所要資金は4,110億円に増加した。

これに基づき協議の結果、1978年10月に基本協定の修正契約書に調印した。
資本金911億円、借入金3,199億円とし、出資比率は日本アサハン 75%、インドネシア政府 25%となった。

プロジェクトの遂行に当たっては日イ相互の理解と協調に努めた。 
・インドネシアの国内産業と国内業者の優先使用で、最終的にはインドネシアでの調達額は30%になった。
・インドネシア人の最大限の雇用と同国への技術移転
  基幹要員約100人を約1年間日本に送り、住友アルミニウム製錬と東京電力で実習を行った。
・アサハン地域の開発
  電力の供給、役所庁舎、校舎などの地方政庁への寄贈、奨学金の創設など共存共栄に努めた。

精錬工場から16kmのところに、一般住宅1,340戸、単身寮5棟、ゲストハウス、クラブハウス、教育施設(幼稚園~中学校、日本語学校)、診療所、教会、モスク、墓地、電話局、ショッピングセンター、タウンホール、公園、ゴルフコース、上下水処理場、等々を備えた200haのタウンが建設された。

1982年1月、精錬第一期が完成し、開所式が行われた。
1983年6月に発電設備が全て完成、10月に精錬第二期の立ち上げが完了、1983年11月1日が「生産開始時点」となった。(この30年後に協定が満了する)

1984年11月に全面操業となった。

しかし、1985年9月のプラザ合意後、短期間に大幅な円高が進行した。

アサハン計画の地金コストは安価な電力のメリットもあり、金利、償却を除けば他に遜色のないものであったが、同計画の収入がドルベースであるのに対し、総建設費用の80%近くを円建ての借入金で賄っているため、急激・大幅な円高で為替差損と金融費用が増加し、INALUMの経営を圧迫した。
(借入金がほぼ倍増したこととなる)

1986年にINALUMは金融機関に2年間の返済猶予を仰ぎ、この間に抜本策を講じることとした。

その結果、1987年6月、日本政府関係機関から所要の援助を行うことが閣議了解され、インドネシア政府も融資金の相当額を出資に切り替え、559.9億円の増資が行われ、出資比率は日本側 58.9%、インドネシア側 41.1%となった。

1994年8月、政府関係機関から追加の援助を行うことが閣議了解され、合計130億円の追加出資と、借入金の金利引き下げ、返済期限の延長などの支援が行われた。

INALUMの業績は好転したが、その後の円高で金融費用の負担は依然として重く、その後も、困難な状態が長く続いた。

最近の状況は、詳細は不明だが、アルミ価格が高水準で、残っていた借入金も途中でドル建てに切り替えたため、為替損もなく、黒字となっているとされており、借入金もほとんど返済した模様。

(追加情報)

INALUM20103月期決算は、売上高478百万ドル、経常利益141百万ドル、純利益101百万ドルとなった。この結果、累積損失は73百万ドルとなり、本年度で累積損失を一掃する見通しとなった。

アルミ地金生産量が256千トンと過去最高を更新、稼動開始以来の累計生産量は約550万トンとなった。

上記の記事では、インドネシア側はボーキサイト生産を手掛ける国営鉱山大手Aneka Tambang (Antam) を経営に参画させ出資比率を50%超に引き上げたい考えとしているが、インドネシア側が契約に基づき、設備簿価の補償で全ての移管を求めるのか、出資比率を50%超として、日本側の残留を認めるのか、製品の日本への供給がどうなるのか、これから交渉が始まる。

現在の実生産能力は252千トンとなっている。

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インドネシアの100ルピア紙幣(1984年発行)の裏面にはTanggaダムの水力発電所が描かれている。
アサハンはインドネシアの近代化の誇りである。

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インドネシアはボーキサイト生産国だが、これまでは全量を輸出し、アサハン事業向けのアルミナは輸入してきた。

昭和電工は本年8月31日インドネシア政府が65%出資するAntam と共同で2011年1月よりインドネシア西カリマンタン州Tayanでケミカル用アルミナ工場(アルミ精錬用ではない)の建設を開始すると発表した。

JV名はP.T. Indonesia Chemical Aluminaで、 Antam80%、昭電が20%出資する。
アルミナの原料のボーキサイトは採掘権を保有する Antamが供給し、アルミナ生産に関する技術は昭電が提供する。

生産能力は年産30万トンで、このうち20万トンは昭電、残りの10万トンはアンタムが引き取る。
昭電は横浜事業所で年産約20万トンのアルミナを生産しているが、201
5年までに撤退を決定している。

    2010/9/6 昭和電工、インドネシアでアルミナ工場建設

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Antamは本年7月に、中国の資源大手、杭州錦江集団と、精錬グレードのアルミナ工場建設の契約に調印した。

西カリマンタンのMempawah10億ドルを投じて、年400万トンのボーキサイトを処理し、年産100万トンのアルミナを製造する。

契約ではAntam 49%杭州錦江集団が51%を出資するが、Antam は工場の操業開始3年後にマジョリティを持つオプションを有する。

これが完成すると、インドネシアでボーキサイト→アルミナ→アルミニウムの一貫生産体制が整うこととなる。

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なお、カリマンタン島のマレーシア側のMukahで、住友商事がアルミニウム地金製錬事業の第一期プロジェクト(2010年末フル稼働予定、年産12万トン、総事業費約3億米ドル)に参画する。

同地域はサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable EnergySCORE)にあり、同じくSCOREに属するBintuluではもう一つのアルミ精錬計画がある。

社名:Sarawak Aluminium
株主:Rio Tinto Alcan/Cahya Mata Sarawak Bhd.
計画:当初 72万トン(2013年予定)、最終 150万トン

2010/10/6 住友商事、マレーシアでアルミニウム製錬事業へ参画


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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