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2010年9月 5日 (日)

政府、対イラン追加制裁を閣議了解

政府はイランの核問題に関する安全保障理事会決議1929号の履行に関し、93日、追加制裁を閣議了解した。
8月3日に既に閣議了解を行っているが、これに追加した。

国連安保理は6月9日、イラン核問題に関連しイラン制裁決議、決議1929号を賛成12、反対2(ブラジル、トルコ)、棄権1(レバノン)で採択した。

過去の制裁決議、1737号(2006)、1747号(2007)、1803号(2008)の制裁に加え、新たに次のような措置を規定している。
(1)イランによる核・ミサイル関連の特定外国投資の禁止、
(2)イランへの特定通常兵器移転の禁止、
(3)イランによる核搭載ミサイル関連活動の禁止、
(4)禁制品を貨物とすると疑われる船舶の検査(発見された禁制品は捕獲・処分)、
(5)禁制品を貨物とする船舶への燃料などの供給禁止、
(6)イラン・イスラム共和国船舶ラインとイラン航空貨物局への規制、
(7)拡散のための金融の阻止、
(8)すべてのイランの会社に対する警戒、
(9)イランの銀行の支店開設など銀行業務制限、
(10)革命防衛隊の役割を制限する措置、
(11)旅行禁止など特定個人への制裁と特定団体への制裁、
(12)国連制裁監視パネルの設置

政府は8月3日の制裁では以下を決めた。

(1)安保理決議で特定されたイランの40団体及び1個人の資産の凍結等
(2)核技術等に関連するイランによる投資の禁止
(3)イランへの大型通常兵器等の供給等に関連する資金の移転の防止
 http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201008/__icsFiles/afieldfile/2010/08/03/20100803amsiryou1.pdf

決議1929号では、各国における経済活動や金融取引等がイランの核活動等に寄与していると信じる合理的な理由があると認められる場合に、不拡散、商業、金融、運輸等の分野において、然るべき措置を採ることも要請されている。

米政府は8月に日本に対し、 「EUの制裁を参考にしてほしい」と伝えた。
イランからの原油輸入禁止については強くは求めなかった。

EUの独自制裁は、
・石油精製や液化天然ガス製造に関する投資、技術移転の禁止
・軍事転用が可能な製品の禁輸対象拡大
・イラン金融機関の一部資産凍結など。

今回の追加制裁は以下の通り。

(1)不拡散分野:新たに88団体・24個人を資産凍結対象に指定
(2)金融分野:イランの銀行15行を資産凍結し、コルレス関係を停止
        資金移転防止及び金融機関の確認義務強化
(3)貿易分野:イラン向け輸出信用について、2年超については,新規の供与・引受けを行わない。
         短期についても厳格な審査
(4)運輸分野:イランShipping Lines(IRISL)本体及び関連団体を資産凍結対象に指定
(5)エネルギー分野:
    ・石油・ガス分野の新規投資に対しては、(3)の措置の実施で停止する。
    ・産業界に対して、決議第1929号の趣旨を周知し,イランとの取引について注意喚起
    ・石油・ガス分野事業者に対し、新規プロジェクトについて厳に慎重な対応を求める
 http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201009/__icsFiles/afieldfile/2010/09/03/20100903amsiryou1.pdf

イランとの取引の大半を占める原油については、エネルギー政策や経済への影響が大きいため、輸入規制を盛り込まない。

国際石油開発帝石はイランのアザデガンAzadegan 油田の開発権の10%を保有している。
  2006/10/9 
アザデガン油田の開発権引き下げでイランと合意 

直嶋経済産業相が9月3日、この油田権益に変化はないとの見通しを示した。
しかし、イラン政府系のファルス通信は、「日本の権益はイランの行動の対象となるだろう」と報復の可能性を示唆、「イランは米国の制裁に追随すれば、その国がイランに持つ権益が危うくなると警告してきた」と論評した。

日本のイランからの輸入は2009年で約92億ドルで、原油などの石油関連が98%を占める。
経済産業省によると、イランは2008年の原油の輸入先で、サウジアラビア、アラブ首長国連邦に次ぐ3位。
日本からの輸出は2009年で約16億ドル。鉄鋼、電気機械、輸送機械などが中心となっている。

イランのAraghchi 駐日大使は、日本がイランに対する独自制裁措置を閣議了解したことについて、「2国間の経済関係に大きな影響は及ぼさない」との見方を示した。

「いくつか厳しい点はあるが、国連安保理事会が6月に採択した追加制裁決議の枠内での補足的なものにすぎない。原油輸入には規制を盛り込んでおらず、他の分野でも以前と変わらない関係が続くだろう」と強調した。

一方で、「イランは国連安保理の追加制裁決議を不当なものとみなしている。日本には、強硬姿勢をとらずにバランスを保ち、米欧の圧力に屈しないよう望む」と訴えた。

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韓国はイラン追加制裁で対応に苦慮している。

韓国は近年、イランとの経済関係を緊密化しており、制裁はイランからの「報復」を招きかねない。
他方、対北朝鮮政策上、同盟国・米国の協力は不可欠である。

焦点となっているのが、イラン国営メラト銀行ソウル支店の取り扱いで、メラト銀行のアジア唯一の海外支店。
米国で先に成立した包括的対イラン経済制裁法で対象リストに盛り込まれている。

米政府は昨年来、韓国にこの支店の閉鎖を求めているが、イランはこれを牽制、ラヒミ副大統領は「韓国製品を買えないよう高い関税と税金を課すことで、韓国も適切な罰を受けなければならない」などと主張している。

2009年の韓国の対イラン貿易額は、輸入は約57億4600万ドルで日本より少ないが、輸出は約39億9200万ドルと日本の2.5倍となっている。

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参考  2010/8/27  LyondellBasell、イラン撤退を決定


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付記

韓国は9月8日、独自制裁措置を決定した。
金融、貿易、運送、エネルギーなどの分野で、EUや日本に準じた厳しい内容。

問題のメラト銀行ソウル支店については、検査で法令違反行為が判明、6ヶ月以内の営業停止措置とともに、事前許可のない金融取引を全面的に禁止する。

エネルギー分野ではガス・製油事業での新規投資や技術提供、建設契約を禁止し、貿易保険も縮小する。

韓国の建設業界はイランでの新規受注が事実上不可能となり、大きなショックを受けている。
一方、輸出中小企業は韓国国内の銀行に開設されるイラン中央銀行のウォン建て口座を通じ、代金決済が認められ、最悪の事態を回避した。

イランは韓国が経済制裁に踏み切った場合、関税引き上げなどの報復措置を取る可能性に言及しているため、企業はイランの今後の出方に注目している。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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