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2010年6月21日 (月)

新成長戦略

政府は6月18日の閣議で、2020年度までの新成長戦略を閣議決定した。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf

政府は2009年12月に新成長戦略の基本方針を決定しており、今回はその具体策にあたる。

新成長戦略では、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」を実現するとし、以下の通り述べている。

我国の経済政策の呪縛となってきたのは、産業構造・社会構造の変化に合わない二つの道による政策の失敗であり、第三の道による建て直しを図る。

第一の道:公共事業中心の経済政策
60年代、70年代の高度経済成長の時代には、経済成長の原動力となった。
90年代以降は既得権保護のためのばら撒きの継続で、不況対策としても行われた公共事業の拡大は、有効な効果を上げなかった。

第二の道:行き過ぎた市場原理主義に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策
多くの人が失業する中で、国民生活は更に厳しくなり、デフレが深刻化している。

「第三の道」は、経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげようとする政策であり、その実現のための戦略が、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置く「新成長戦略」である。

「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を実施する。

ーーー

「新成長戦略」のマクロ経済目標は以下の通り。

 ・名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長
 ・2011年度中に消費者物価上昇率をプラスに転換(デフレ終結)
 ・早期に失業率を3%台に低下

7つの戦略分野の目標は以下の通り。

参考 

経済産業省の「産業構造ビジョン 2010」では、
① インフラ関連/システム輸出  (原子力、水、鉄道等)
② 環境・エネルギー課題解決産業 (スマートグリッド、次世代自動車等)
③ 医療・介護・健康・子育てサービス
④ 文化産業立国 (ファッション、コンテンツ、食、観光等)
⑤ 先端分野(ロボット、宇宙等)を
「戦略5分野」とし、2020年までに149兆円の市場と258万人の雇用の創出を目指すとしている。

   2010/6/4 「産業構造ビジョン 2010」

(1) グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
     
   
【2020 年までの目標】 
                                    
50兆円超の環境関連新規市場                             
140万人の環境分野の新規雇用
日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を13 億トン
(日本全体の総排出量に相当)以上とする。
     
(2) ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出
  新規市場約50兆円、新規雇用284万人

     
(3) アジア経済戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築
・アジアの成長を取り込むための国内改革の推進、ヒト・モノ・カネの流れ倍増
・「アジアの所得倍増」を通じた成長機会の拡大
     
(4) 観光立国・地域活性化戦略
     
  観光立国
   
【2020 年までの目標】

・訪日外国人を2020年初めまでに2,500万人、将来的には3,000万人。
  2,500万人による経済波及効果約10兆円、新規雇用56万人
     
  地域活性化
   
【2020 年までの目標】

・地域資源を最大限活用し地域力を向上
・大都市圏の空港、港湾、道路等のインフラの戦略的重点投資

     
  農林水産分野の成長産業化
   
【2020 年までの目標】

・食料自給率50%
・木材自給率50%以上
・農林水産物・食品の輸出額を2.2 倍の1兆円(2017 年まで)
     
  住宅政策への転換
   
【2020 年までの目標】

・中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模倍増
・耐震性が不十分な住宅割合を5%に
     
(5) 科学・技術・情報通信立国戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・世界をリードするグリーン・イノベーションとライフ・イノベーション
・独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数の増
・理工系博士課程修了者の完全雇用を達成
・中小企業の知財活用の促進
・情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減
・官民合わせた研究開発投資をGDP比4%以上
     
(6) 雇用・人材戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・20~64 歳の就業率80%、15 歳以上の就業率57%
・20~34 歳の就業率77%
・若者フリーター数124 万人、地域若者サポートステーション事業によるニートの進路決定者数10 万人
・25 歳~44 歳までの女性就業率73%、
 第1子出産前後の女性の継続就業率55%、
 男性の育児休業取得率13%』、
・60 歳~64 歳までの就業率63%
・障がい者の実雇用率1.8%、国における障がい者就労施設等への発注拡大8億円
・ジョブ・カード取得者300 万人、大学のインターンシップ実施率100%、
 大学への社会人入学者数9万人、専修学校での社会人受入れ総数15 万人、
 自己啓発を行っているの労働者の割合:正社員70%、非正社員50%
 公共職業訓練受講者の就職率:施設内80%、委託65%
・年次有給休暇取得率70%、週労働時間60 時間以上の雇用者の割合5割減
・最低賃金引上げ:全国最低800 円、全国平均1000 円
・労働災害発生件数3割減、メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合100%、
 受動喫煙の無い職場の実現

これらの目標値は、内閣総理大臣主宰の「雇用戦略対話」において、労使のリーダー、有識者の参加の下、政労使の合意を得たもの。
また、これらの目標値は、「新成長戦略」において、「2020 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」等としていることを前提。

・誰もが安心して子どもを産み育てられる環境の実現による出生率の継続的上昇を通じ、
 人口の急激な減少傾向に歯止め
・速やかに就学前・就学期の待機児童を解消
・出産・子育ての後、働くことを希望するすべての人が仕事に復帰
・国際的な学習到達度調査で常に世界トップレベルの順位へ
     
(7) 金融戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・官民総動員による成長マネーの供給
・企業のグローバルなプレゼンス向上
・アジアのメインマーケット・メインプレーヤーとしての地位の確立
・国民が豊かさを享受できるような国民金融資産の運用拡大
     

そして、21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクトをあげた。

強みを活かす成長分野 グリーン・イノベーションにおける国家戦略プロジェクト 「固定価格買取制度」の導入等による再生可能エネルギー・急拡大
「環境未来都市」構想
森林・林業再生プラン
ライフ・イノベーションにおける国家戦略プロジェクト 医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等
国際医療交流(外国人患者の受入れ)
フロンティアの開拓による成長 アジア展開における国家戦略プロジェクト パッケージ型インフラ海外展開
<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>法人実効税率引下げとアジア拠点化の推進等
グローバル人材の育成と高度人材等の受入れ拡大
知的財産・標準化戦略とクール・ジャパンの海外展開
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を通じた経済連携戦略
観光立国・地域活性化における国家戦略プロジェクト 「総合特区制度」の創設と徹底したオープンスカイの推進等
「訪日外国人3,000 万人プログラム」と「休暇取得の分散化」
中古住宅・リフォーム市場の倍増等
公共施設の民間開放と民間資金活用事業の推進
成長を支えるプラット・フォーム 科学・技術・情報通信立国
における国家戦略プロジェクト
「リーディング大学院」構想等による国際競争力強化と人材育成
情報通信技術の利活用の促進
研究開発投資の充実
雇用・人材分野における国家戦略プロジェクト 幼保一体化等
「キャリア段位制度」とパーソナル・サポート制度の導入
新しい公共
金融分野における国家戦略プロジェクト 総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設を推進

「法人実効税率引下げとアジア拠点化の推進等」において、法人税率について、以下の通り述べている。

日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引き下げる。その際、租税特別措置などあらゆる税制措置を抜本的に見直し、課税ベースの拡大を含め財源確保に留意し、雇用の確保及び企業の立地環境の改善が緊急の課題であることも踏まえ、税率を段階的に引き下げる。

「主要国並み」とは25%程度を想定しているが、引き下げ時期などは明示しておらず、今後の政府税制調査会などでの議論にゆだねる。

最後に、成長戦略実行計画(工程表)をあげている。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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