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2010年6月17日 (木)

メキシコ湾石油流出事故の損害負担 

メキシコ湾石油流出事故への対応は油田の権益の65%を有し、オペレーターであるBPが窓口となり、当面の損害はBPが負担し支払いを行っている。

2010/6/8 BPの原油流出事故のその後 

これまでに原油の回収や賠償などで同社が負担した額は6月14日時点で16億ドルとなっており、株価下落で、事故直前に約17兆円あった時価総額は14日時点で約9兆円と、ほぼ半減した。

株格付け会社フィッチ・レーティングスは6月15日、BPの格付けをそれまでの「ダブルA」から「トリプルB」まで一気に6段階引き下げた。これは「投機的」とするレベルよりも2段階上の水準で、補償への圧力の強まりを受けてのもの。

オバマ米大統領は6月15日の午後8時に大統領執務室から国民向け演説を行い、次のように述べた。
1)総力を挙げてクリーンアップに取り組む。
2)明日BPの会長に会うが、被害を受けた個人、企業への補償に必要な資金を確保するよう要請する。「法的な請求が公正に支払われることを明確にするため、口座は独立した第三者が管理しなければいけない」
3)再発防止に取り組むが、石油依存から脱却し、クリーンエネルギーの開発強化を進める。
 http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-nation-bp-oil-spill

なお、米上院民主党のリード院内総務は、BPのCEOに対し、被害者救済や原油の清掃作業の費用として、200億ドルを特別口座に確保しておくよう求める書簡を多数の民主党上院議員との連名で送っている。

オバマ大統領は16日、BP首脳陣と会談した。
その結果、BPが原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金の創設することで合意したことを明らかにした。

大統領は、200億ドルの資金は第三者機関の管理するエスクロー勘定に入金されると述べるとともに、200億ドルは賠償額の上限ではないと説明した。

BPは2010年第3四半期にまず30億ドル、第4四半期に20億ドルを払い込み、残りを四半期ごとに12.5億ドルずつ支払う。

この結果、BPは配当政策を見直し、既に発表済みの6月21日予定の第1四半期配当を取り止め、第2、第3四半期の配当も取り止める。
(同社は年間105億ドルの配当を予定していた。)

ーーー

現在のところ、BPだけが表面に出ているが、事件が落ち着いた時点では、当然、事故の責任や損害の負担が大きな問題となる。
この事業の10%の権益を持つ三井石油開発も負担を強いられる可能性がある。

この事件の関係者は以下の通り。

1)鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者

 BP Exploration and Production Inc.  65.0% (Operator
 Anadarko E&P Company LP  22.5%
 Anadarko Petroleum Corporation  2.5%
 MOEX Offshore 2007 LLC  10.0%

Anadarko Petroleum は米国の大手独立系石油・天然ガス会社で、2009末の確認埋蔵量は石油換算23バレル。
同社は
2006年に、米国の独立系石油企業であるKerr-McGee及びWestern Gas Resoucesを買収し、独立系企業では世界最大の確認埋蔵量を誇る企業となった。

MOEX Offshore 2007 LLC は三井石油開発の100%子会社のMOEX USA の子会社。
三井石油開発は本事業に参加するため、2007年6月29日にBP社と
Acquisition and Participation Agreementを締結した。

「本探鉱事業へ参画は、当社にとり米国における更なる事業拡大を図る好機であり、大規模ガス田の発見に至れば、複数のコア事業構築に向けた大きな布石となるものと期待されます」としていた。
当時は権益比率をBP社75%/三井石油開発15%/その他10%となる予定としていた。

三井石油開発は1969年7月に設立された。現在の出資者は以下の通り。

  三井物産  69.91 %
  経済産業大臣 20.03  
  三井不動産 1.94  
  新日鉄エンジニアリング 1.53  
  国際石油開発帝石 0.92  
  極東石油工業 0.85  
  新日本石油 0.77  
  ジャパンエナジー 0.69  
  日本製鋼所 0.69  
  三井造船 0.58  
  カネカ 0.54  
  昭和シェル石油 0.42  
  東京電力 0.38  
  東亞合成 0.30  
  日揮 0.23  
  東洋エンジニアリング 0.23  

同社はタイ・ベトナム・カンボジア地域をコアエリア事業とし、アメリカ、中東・アフリカ(オマーン、エジプト、リビア)、インドネシアを第二のコア事業構築を図るフォーカスエリアとしている。
また、タイではオペレーターとして事業を行っている。
アメリカでは本事業のほか、三井物産と組んで、
Anadarko Petroleum Marcellus Shale Gas事業への参画を決めた。

2)Deepwater Horizon rig 関連
  ・設計:
R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:
TransoceanR&B Falconを買収)
  ・リース:
BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    
Transocean:掘削作業
    
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
    
M-I SWACOSchlumbergerSmith InternationalJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International Corporation

ーーー

Morgan Stanley 4月30日に本件に関して電話会議を主催した。
http://www.ogfj.com/index/article-display/2323778238/articles/oil-gas-financial-journal/e-__p/offshore/Gulf_of_Mexico_oil_spill.html

その結論は、オペレーターのBPと他の権益保有者(Anadarko と三井石油開発)が損害の大部分を負担することとなろうというものである。

その他のコメント:
M-I SWACOCameron International は責任はない。
  
BOPは今回作動しなかったが、10年前にTransoceanが購入したもので、メンテはTransoceanの責任。

Transoceanの責任は限定的で、保険の範囲内。

セメント作業のHalliburton は責任はない。
 


他の報道によると、同社は掘った穴(1600mの海底から更に3800m)に通したパイプをセメントで固定するため、特殊資材を21本使うよう提案したが、BPは時間がかかるとして6本に減らした。
また、BPは規制で定められたセメントの固定検査も省略したという。

掘削施設のリース料だけで1日50万ドルがかかり、事故発生時点で43日間の工期の遅れがあり、焦りがあった。

ーーー

この結論は、過去の例などから妥当とされる。

但し、BPが既存のガイドラインや実務の国際標準に従っておれば事故は避けられた可能性が強く、BPのオペレーターとしての責任は大きい。

このため、権益比率での負担とはならないと思われるが、三井石油開発の負担は膨大なものとなる可能性がある。
同社は本事業に保険をかけているが、総額4500万ドルとされる。

BPは本件では保険会社に付保せず、自己保険としている。

「その他のコメント」については事故の原因が不明なため、異論が多い。
特に、BOPがきちんと作動しておれば事故が起こらなかった筈で、BOP所有者のTransoceanにはメンテナンスの責任がある。

なお、米政府は一切の負担を拒否しているが、米当局が一部の指針を免除したことが事件につながった可能性があるとの意見も出ている。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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