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2010年5月10日 (月)

統一通貨ユーロの危機

ギリシャの財政危機が世界的な株価急落を引き起こし、通貨ユーロの下落を招いている。

EUのユーロ圏16カ国は5月7日夜の緊急首脳会議で、巨額の財政赤字を抱えるギリシャ向けの支援策を正式に承認するとともに、包括的な金融危機対策で合意した。
ユーロ導入国が国際金融市場から資金を調達するのが難しくなるのに備え、緊急支援の基金を創設。財政赤字削減や、投機抑制へ金融規制・監督の強化も急ぐ。

緊急首脳会議の合意内容は以下の通り。

・ギリシャ向け協調融資を正式承認、数日中に第1弾を実施
  2010~2012年で1,100億ユーロ(ユーロ圏が800億ユーロ、IMFが300億ユーロ)
・ユーロ導入国の資金繰り難に備え、緊急支援の基金を創設
  欧州安定化メカニズム(ユーロ防衛基金)
    (付記)EUが5000億ユーロ(うち4400億ユーロはEU予算を担保に調達)
         IMFが別途、2500億ユーロを拠出
・欧州中央銀行(ECB)を含め、ユーロ圏安定へ最大限の手段を活用
    (付記)欧州の各中央銀行は国債の買い入れを開始した。
・財政健全化加速へ必要な措置をとる
・EUの財政協定を強化、違反国に効果的な制裁の用意
  これまで制裁無し
・投機抑制へ金融規制・監督を強化

ギリシャ国会は5月6日、欧州諸国とIMFから3年間で総額1,100億ユーロの融資を受ける条件となる政府提出の財政再建関連法案を可決した。
法案には公務員給与や年金の削減、増税(付加価値税は21%から23%に引上げられる)などが盛り込まれ、財政危機脱出のための荒療治といえる。

前日の5日には、これに反対するデモ隊の火炎瓶で3人の銀行員が亡くなる惨事が起こった。

ーーー

今回の問題は、統一通貨ユーロに係る問題と、ギリシャ固有の問題から生じた。

200711日にブルガリアとルーマニアがEUに加盟し、加盟国は27カ国になった。

このうち、スロベニアが2007年1月に中・東欧諸国では初めて欧州単一通貨ユーロを導入、2008年1月にはキプロスとマルタが、20091月にはスロバキアが導入し、ユーロ導入国は16カ国となった。ギリシャは2001年に導入している。

2007/1/5 EU 加盟国、27カ国に

時期 ユーロ導入
1952 フランス  * (1999)
(西)ドイツ  * (1999)
イタリア  * (1999)
オランダ  * (1999)
ベルギー  * (1999)
ルクセンブルグ  * (1999)
1973 英国  適用除外
アイルランド  * (1999)
デンマーク  適用除外 欧州為替相場メカニズム
1981 ギリシャ  * (2001)
1986 スペイン  * (1999)
ポルトガル  * (1999)
1995 オーストリア  * (1999)
フィンランド  * (1999)
スウェーデン  国民投票で反対 
2004 エストニア  欧州為替相場メカニズム
ラトビア  欧州為替相場メカニズム
リトアニア  欧州為替相場メカニズム
ポーランド  
チェコ  
スロバキア  * (2009)
ハンガリー  
スロベニア  * (2007)
キプロス  * (2008)
マルタ  * (2008)
2007 ブルガリア  
ルーマニア  
合計  27カ国  16カ国
欧州為替相場メカニズムはユーロと連動(変動幅±15%、デンマークは±2.25%)
  .
はPIIGS                                                                                    

この結果、ドイツやフランスなどの経済先進国と、東欧やPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)などの財政状況がかなり悪化している国が同一の通貨ユーロを使用することとなっている。

同一の通貨を使用するため、特定の国の財政状況が悪くなっても、その国だけが通貨を切り下げることは出来ない。
(バルト3国はユーロを採用していないが、通貨をユーロに連動させているため、同じ問題を抱える)

また、金利率もユーロ圏全体で平均的な水準で決めるため、その国だけが上げたり下げたりすることが出来ない。
(スペインの問題は、サブプライムの前の時点では経済状況がよかったが、当時のユーロの金利がスペインにとっては実質マイナス金利となり、住宅バブルが発生、それが足を引っ張った)

このため、加盟国は経済問題の解決に金融政策を使えず、財政政策だけで対処せざるを得ない。これは極めて難しい。

この問題は当初から分かっており、EUはユーロ加盟の基準として「財政赤字をGDPの3%以内、政府債務残高を60%以内」とした。

ギリシャはユーロ導入の1999年時点ではEUに参加はしていたが、基準を満たさないとしてユーロ導入が認められなかった。
2000年6月、欧州理事会は「ギリシャは高い水準で持続的な収斂性を有しており、ユーロの導入に必要な状況になった」という理解に達し、2001年1月にユーロ導入が承認された。
この時、ギリシャが実際の 財政赤字を偽って欧州委員会に報告書を提出していたことが、2004 年11月に判明した。)

実際には現在では全加盟国がこの条件に違反した状態となっている。
これまで罰則がなかった。

EU加盟国財政赤字予測 %
     2009  2010
ユーロ圏16カ国   6.3 6.6
 アイルランド   14.3 11.7
 ギリシャ   13.6 9.3
 フランス   7.5 8.0
 ドイツ   3.3 5.0
       
 イギリス   11.5 12.0
EU 27カ国   6.8 7.2

また、EUは加盟国に付加価値税を15%以上とすることを義務付けている。

国の体力が違うのにユーロという同一通貨を持つEUの構造問題が浮き彫りになった。

ーーー

ギリシャは多くの問題を抱えている。

先ず、ギリシャの産業は海運業と観光しかない。
世界的な不況の中、これらは急激に落ち込んでいる。

そのなかでギリシャは公務員比率が非常に高い。
ギリシャではこの30年、歳出規模が拡大、過大な公共投資が続いてきた。財政規模の拡大は、公的部門の肥大化を招いた。

ギリシャの人口は1100万人で、人口が同程度のオーストリアでは公務員が30万人ほどなのに対し、ギリシャでは110万人。
ギリシャでは左派と右派が交互に政権を取りあってきたが、政権党は知人や党を応援する人を能力に関係なく、どんどん公務員に採用してきた。

しかも、ギリシアでは1992年前に公務員になった人は、35年以上勤めて58歳で退職すると、最終給与の80%を年金として受け取ることができるという。法的な退職年齢を61歳から63歳に引き上げるという提案に対して、抗議のデモが起きている。

これに対し、ドイツでは少し前に法的な退職年齢を65歳から67歳に引き上げた。ドイツでは40年勤めて退職した後、最終給与の70%しか年金として受け取れない。

更に、課税対象から潜り抜けている闇経済の存在も大きく、GDPの30%以上とも報じられている。

この結果、財政は当然、赤字となる。

ギリシャは2001年にユーロ圏の一員となったが、財政赤字をGDPの3%以内」の基準を満たすことができず、実際はこの基準を大幅に上回っていたのに統計数字を改竄することでユーロの一員となった。

昨年10月の政権交代後、前政権による財政赤字と債務の“粉飾”が明るみに出た。新政府は財政赤字のGDP比率を以下のように大幅に改定した。 

2008年 5.0%→ 7.7%
2009年 3.7%→12.7%

Goldman Sachs がギリシャ政府による財政赤字の実態隠しを助ける役割を果たしたと噂されている。

同社は2000年と2001年にギリシャ政府に対し、将来の空港税や宝くじ収入を担保に数十億ドルの資金を提供したが、これをローンではなく為替取引として記録されるようにしたため、財政赤字はGDPの3%以内になったという。

昨年12月に新首相は経済改革計画を発表した。

政府運営費削減、公務員新規採用凍結、海外プレスオフィス閉鎖、政府観光局海外事務所一部閉鎖、軍事費削減、公営企業役員給与削減、政府系銀行役員特別手当凍結、民間銀行役員特別手当に対する課税強化、ゼロベースからの予算査定、2011年からの3年予算の導入、脱税防止・歳入増大に向けた税制改革等

これにより、2010年財政赤字を対GDP比8.7%に抑え、 2013年には3%以下にする旨宣言した。

しかし、各国はこの12.7%の数字も改竄されていると見ている。

ギリシャは国債を発行してこの急場を切り抜けようとしているが、国債価格は暴落、10年物国債の利回りは5月5日現在で10%まで上がった。
S&Pは4月27日、ギリシャのソブリン格付けをBBB+から3段階引き下げ、ジャンク(投機的)等級となるBB+とし、アウトルック(見通し)は「ネガティブ」として一段の格下げの可能性を示した。

BB+ は他に、トルコ、フィリピン、ベトナムなど。
なお、スペインはAA+からAAに、ポルトガルはA+からA-に引き下げられた。

このままでは国債の買い手がなく、償還期限が来ても償還できず、デフォルトとなる可能性がある。
ドイツやフランスなどヨーロッパ主要国の金融機関は大量のギリシャ国債を保有しており、それが紙くず同然となれば金融機関の経営が大打撃を受ける。

更に、ギリシャに対する懸念が他のPIIGS諸国に波及していくと、EU全体の危機となる。

このため、上記の緊急首脳会議での包括的な金融危機対策となった。

しかし、このためには、ギリシャが財政再建関連法案を実施することが条件となる。

ドイツは当初、ギリシャ救済に反対し、「島を売ればよい」などの発言で物議をかもした。
多数の公務員が年金などでドイツよりもはるかに優遇されているままでの救済は世論が許さないとした。

財政再建関連法案に対してはギリシャ国民は猛反発しており、実現できるかどうかは不明である。

アジア金融危機の際にはIMFは韓国やインドネシアに対し厳しい政策を要求、インドネシアではこれに反発して暴動が起こり、スハルト政権を窮地に追い込んで潰してしまい、長い政治混乱と社会不安を引き起こした。

政権が国民の反発に負けて主要な財政改革で後退する兆候が明らかとなれば、ギリシャの債務再編やデフォルトの見通しが強まり、危機拡大のきっかけとなる恐れがある。

ーーー

余りにも国力が違う国々が単一通貨ユーロを採用し、危機時に通貨切り下げも金利引下げも出来ないというのは無理がある。

欧州統合に懐疑的なチェコのクラウス大統領は、「ギリシャ危機は通貨を4割り引き下げれば解決する」と述べ、危機の原因は自国通貨の切り下げができないユーロの仕組みにあると指摘したとされる。

強いユーロ圏と弱いユーロ圏に分けて、単一通貨ユーロを、第一ユーロと第二ユーロに分けるという案や、弱い国を切り離すと案が取りざたされている。(逆に、ドイツの離脱によるユーロ崩壊も市場でささやかれているという。)

 


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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投稿: ロレックス時計コピー | 2019年11月11日 (月) 07時50分

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