LyondellBasell、Reliance の買収提案を拒否
再建を進めているLyondellBasellがインドのRelianceによる145億ドルの買収提案を拒否したことが、3月2日に明らかになった。
RelianceはLeon Blackが経営する非公開投資会社Apollo Management LPを始めとする債権者集団と対抗していた。
債権者集団は債権の代わりに株式を与えるという再建案に同意しており、会社側は再建案の方が債権者にとり有利であるとみなした。
近いうちに裁判所から再建案の承認を得て、Chapter11からの離脱を図る。
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Basell の127億ドルでのLyondell買収により、2007年12月にLyondellBasellが誕生した。
しかし、金融危機に伴うグローバルな経済不振のなかで、LyondellBasell はLyondellを始めとする多数の買収に伴う債務に苦しんた。Standard & Poor's によると同社の債務は260億ドル。
2009年1月、LyondellBasellは民事再生法(Chapter 11)を申請した。
LyondellBasell はロシアの億万長者 Len Blavatnik の所有するNew York-based のAccess Industries が株主だが、2009年5月に、ドイツの投資家 Andreas Heeschen のProChemie Holding Ltd が加わることとなった。ProChemie Holding とAccess Industries が50/50出資でドイツに ProChemie GmbH を設立し、これがLyondellBasell の株主となった。
2009年11月、億万長者のMukesh Ambaniが率いるインドの新興財閥 Relianceが買収のオファーを行った。
2007/12/24ー LyondellBasell Industries 誕生 2009/1/1 LyondellBasell、民事再生法申請も 2009/1/7 LyondellBasell、Chapter 11 申請 2009/2/4 LyondellBasell のChapter 11 申請の影響 2009/4/27 LyondellBasell、親会社も米国の民事再生法対象に追加 2009/5/22 LyondellBasell に新出資者 2009/5/25 LyondellBasell の業績 2009/7/2 Lyondell のBasell 買収の裏話 2009/11/22 インドのRelianceがLyondellBasell 買収のオファー
その後、LyondellBasellは債権者団体との間の再建計画交渉とRelianceとの交渉を並行して進めた。
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2009年12月24日、LyondellBasellは主たる有担保債権者集団が同社の再建案を支持したと発表した。
その内容は以下の通り。いずれも裁判所の承認を必要とする。
1) 債権者からの訴訟の解決
担保無し債権者からの、有担保優先債権者とつなぎ融資者に対して担保や保証を放棄せよとの訴訟の解決提案
(a) 担保なしの債権者に 3億ドルを配分
(b) 他の有担保債権者に対する同様の訴訟に対抗するための裁判費用の積み立て2) 株式引受契約の承認
Apollo ManagementとAres Management が下記増資で引受けのない株を引き受ける。
3) 修正再建計画
Chapter 11 から脱却するのと同時に有担保債権者に総額28億ドルの増資を行う。
有担保優先債権者とつなぎ融資者は約180億ドルの債権を株式に転換する。
4) 再建計画支持契約
有担保優先債権者とつなぎ融資者は再建計画を支持する。
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LyondellBasell は本年2月16日、Chapter 11から離脱するための一歩となる協定を結んだと発表した。
担保なしの一般債権者の委員会が、上記の会社と有担保債権者との間の協定に対して反対していたが、それを解決するもの。裁判所の承認を必要とする。
解決策では担保なしの債権者に対する配分額を3億ドルから4.5億ドルに増やした。追加の1.5億ドルは、有担保債権者とつなぎ融資者への支払いを減額する。
この見返りに一般債権者は再建案に賛成した。
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Relianceは当初120億ドルを提示したが、その後 135億ドルに引き上げた。
しかしLyondellBasell はこれを拒否したため、本年2月に145億ドルに引上げた。
これはRelianceに対してLyondellBasellのマジョリティは取得しないが、役員会を支配できる多数議決権(super-voting power)を与えるものとされている。
この案では、担保無し債権者はある程度の返済を受けられる可能性、株を受け取る可能性がある。
しかし、会社側の再建案では、債権者は180億ドルの債権を放棄して会社の支配権を得ることとなる。更にApollo ManagementやAres Managementは他の債権者とともに合計28億ドルの増資を引き受ける。
Relianceがこれに対抗するには買収金額の引き上げが必要だが(LyondellBasellは160億ドル以上とした)、同社はこれが最高限度とした。
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Reliance はインドの新興財閥でインド最大の私企業。 事業は多岐にわたり、ガスパイプライン、石油精製、化学繊維、アパレル等の上流から下底までの石油化学事業、通信、電力等インフラ事業を行っている。
同社はアジアを越えて欧州と北米に石油化学、合成樹脂事業などを拡大する機会を狙っており("global player になりたい")、いずれも失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収を図り、更にGE Plasticsの買収も検討した。
2007/1/16 インドの Reliance Industries
同社では買収により高級プラスチックの最新技術が得られること、流通ネットワークが得られることなど、大きなシナジー効果が得られるとしている。
同社ではLyondellBasellに対して、両社のシナジーで10億ドルのコスト低下が見込めると説得していた。
RelianceはLyondellBasell買収を狙うと同時に、オイルサンドの権利を持つカナダのValue Creation Inc.買収にも関心を示している。同社の65%を取得するため20億ドルのオファーを行ったとされている。
また、DowがKuwaitのPetrochemical Industries Co (PIC)との石化JVのK-Dow Petrochemicals の破談で代わりの相手を探しているが、これに乗る可能性もある。
K-Dow Petrochemicals の場合、出資比率は50:50で、PICは新会社参加で75億ドルを支払い、配当15億ドルを受け取るため、ネットで60億ドルの支払いとなっていた。
これはLyondellBasellよりもかなり安い。
ダウは3社と交渉中とされている。
2008/12/3 ダウとクウェートのPIC、石油化学合弁契約締結
2009/1/7 ダウ、「変身戦略」を続行
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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