« 国際石油開発帝石と三菱商事、ベネズエラで石油開発 | トップページ | インドONGCの新石化コンプレックス、進展 »

2010年2月16日 (火)

Boehringer Ingelheim、エスエス製薬にTOB

Boehringer Ingelheim2月10日、エスエス製薬の普通株式を公開買付けにより取得することを決定したと発表した。

日本ベーリンガーインゲルハイムは既に約60.2%を所有しており、全株の取得を目指す。
TOB価格は710円で、過去6ヶ月間の終値平均に対して43.1%のプレミアムとなる。
 

エスエス製薬の取締役会は株主に対し、本TOBへの応募を推奨することを決議した。

ーーー

エスエス製薬は1765年に現在の東京八重洲で「漢薬本舗美濃屋薬房」として創業した。
1927年に 株式会社瓢簟屋薬房となり、1940年にエスエス製薬に改称した。

1971年に東京証券取引所に上場した。
コスモ信用組合の理事長であった泰道氏のグループが経営を掌握していたが、1995年のコスモ信組の経営破綻後は日本ベーリンガーインゲルハイムが筆頭株主となった。

Boehringer は2000年にエスエス製薬にTOBを実施、持株比率を19.6%から35.9%に引き上げ、系列化に収めた。
金融機関は買い付けに応じなかったが、個人株主による売却が殺到した。
買収先に事前承諾を得ない「非友好的TOB」が成功したのは国内上場企業に対するものとしてはおそらく初めてとされた。

TOBは持ち株比率を3分の1超にするのが目的で、日本の大衆薬市場で強みを持つエスエスとの関係を強化するとともに、他の大手製薬会社による買収を防ぐ狙いがあった。

Boehringerとエスエス製薬はその後、事業連携を拡大し、製品の開発・販売から、生産の統廃合や資材の共同購入に広げた。
エスエス製薬が輸入して充てん・包装していた練り歯磨きをエスエス製薬の富山工場での製造に切り替えたほか、両社の工場間で生産設備の統廃合を進めた。

エスエス製薬は2005年4月に医療用医薬品事業を分割し、久光製薬に譲渡した。
一般用医薬品事業(家庭用医薬品事業)に資源を集中投下し、生活者のニーズにマッチしたセルフメディケーション製品の開発販売に専念することで、日本でのOTCファーマとしての優位性と競争力を高めることとした。

2004年に医薬品等の安定性試験を受託している100%子会社である㈱応用医学研究所をシミックに売却、2005年には韓国で医薬品の製造を行う子会社の海東エスエス製薬をシミックに売却している。また、2006年に富山工場をシミックに売却した。

最近の同社の業績は以下の通り。(百万円、配当は円)

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 配当
2008/12   48,557 3,219 2,985 790 30
2009/12 47,505 3,948 4,216 1,792 30
増減 -1,052 729 1,231 1,002 0
2010/12 47,800 3,500 3,700 1,600 30

主力はコンシューマーヘルスケア部門で、2009年12月期の売上高は39,950百万円。

製品には、便秘治療剤「スルーラック」、鎮痛薬「イブ」、美容・美肌ビタミン剤「ハイチオール」、ドリンク剤「エスカップ」、かぜ薬「エスタック」などがある。

ーーー

Boehringer 全世界47カ国に41,000人を超える従業員を擁する世界トップ20の製薬会社の一つで、2008年度売上は116億ユーロ。

世界規模でコンシューマーヘルスケアビジネスを展開・成長させており、2008年度売上は11億90百万ユーロで、全世界において市場シェア2.7%を占め、世界第6位にランクしている。

これまで、エスエス製薬との協調体制を強化し、Boehringerにとって2番目に大きな市場である日本におけるビジネスを順調に展開してきた。

個人消費の伸び悩みやOTC医薬品市場での同質化競争・価格競争の激化が進んでいるなか、日本市場において強力なブランド力を有するエスエス製薬を完全子会社化することによって、日本における地位をより一層強化し、発展させることができると考えた。

また、エスエス製薬に対して、Boehringer グループの医療用医薬品に関するスイッチOTCの権利を付与し、情報、医療用医薬品業界のネットワーク等の様々な資産を活用させる機会を与え、エスエス製薬の新製品開発の企画及び開発の早期かつ効率的な実施が可能となる。

そのほか、エスエス製薬の製品の海外市場開拓促進や幅広いシナジー効果を狙うとしている。

ーーー

日本の大手製薬会社では中外製薬がF. Hoffmann-La Roche の子会社となっている。

2001年12月、Rocheと中外製薬は、日本国内における両社の医薬品事業(OTCを含む)の統合を柱とする戦略的アライアンスを締結することで合意に達し、基本契約に調印した。
 ① 中外製薬と日本ロシュの合併(2002年10月1日)
 ②
Rocheによる中外製薬株式の50.1%取得
 ③ 中外製薬の日本における独占的地位と
Roche製品に対する第一選択権
 ④
Rocheの中外製薬製品に対する第一選択権
 ⑤
Rocheの診断薬事業と競合する中外製薬の診断薬事業の中核、米国子会社Gen-Probeのスピンオフによる切り離し

その後、上記契約に基づき、2008年6月に出資比率を上限の59.9%にアップした。

中外製薬はRocheとの戦略的提携により、特に売上高、シェアともに国内第1位であった腎および骨・関節領域はさらに強化され、また、がん領域は提携前の第9位から2008年には第1位にランクアップし、戦略領域内での競争優位性を確保している。
また、がん領域での抗がん剤と支持療法剤の組み合わせ拡大など、領域内のシナジーも拡大し、より幅広いニーズに応えられるようになったとしている。

また、研究部門においても提携による成果が着実に現れているとしている。

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

|

« 国際石油開発帝石と三菱商事、ベネズエラで石油開発 | トップページ | インドONGCの新石化コンプレックス、進展 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。