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2009年12月 3日 (木)

事業仕分け:漢方薬等の保険適用外し

行政刷新会議の事業仕分け初日の11月11日の午後、第2Working Groupで、漢方薬等の市販品類似薬を保険対象外とする方向性が出された。

これは、事業番号2-5「後発医薬品のある先発品などの薬価の見直し」で取り上げられた。

このうち、市販品類似薬については、事前に配布された財務省側の論点シートでは以下の通りとなっている。

④市販品類似薬の薬価は保険外とする

 
湿布薬・うがい薬・漢方薬などは薬局で市販されており、医師が処方する必要性が乏しい
            ↓
 国民の税金・保険料で持ち合う公的医療保険の対象として、湿布薬・うがい薬・漢方薬などは薬局で市販されているものまで含めるべきか、見直すべきではないか。

評価者のコメント:
●薬価、医療材料の価格を下げることは、国民にとっても、保険制度にとっても必要なことである。
●医療業界は全体的に閉鎖的。健全な市場形成に向け取り組むべき。
●先発薬の価格引き下げによって、1兆円の利益を上げている製薬会社の研究開発意欲が削がれるのか。
●処方された薬を全て保険適用にすべきではなく、数量の制限、金額の制限を導入すべき。
●薬剤の先発品を後発品価格まで下げることが望ましい。
●国民目線が欠如している。安全な薬を安価で提供すべき。医師・薬剤師が本人に説明し選ばせることも必要。国からももっと情報提供が必要。
●市販品類似薬は保険対象外とすべき。単価比較をすれば、市販品の方が安くなるデータもある。材料の内外価格差も同様。
●市販品を拡大して、保険適用外にするのは賛成だが、薬局だけでなく、スーパー、コンビニ、ネットで買える製品のスコープを広げて欲しい。
●ドラッグラグを広げないよう、新薬の認可手続きを迅速化すべき。

評価結果: 見直し
 廃止 0名
  自治体/民間 0名
  見直しを行わない 0名
 見直し 15名
   ア 先発品を後発品薬価を目指して見直し13名
   イ 医療材料の内外価格差解消 12名
   ウ 調整幅2%の縮小 9名
   
エ 市販品類似薬は保険外 11名
   オ その他 3名


とりまとめコメント:
アの先発品薬価を後発品薬価を目指して見直すことについては当WGの結論としたい。但し、保険適用範囲をジェネリック価格に絞るべきという意見と、一般名処方を原則として後発品シェア拡大の為の情報提供を進めるべきという意見の双方が出ている。いずれにしても、トータルの薬価を大幅に削るという方向性で全体のコンセンサスは取れた。
イの医療材料の内外価格差解消についても当WGの結論とする。
ウの調整幅2%の縮小については、半数強の方の意見があったが、十分に議論ができなかったこともあり、有力な意見が示されたという取り扱いとさせていただきたい。
エの市販品類似薬を保険外とする方向性については当WGの結論とするが、どの範囲を保険適用外にするかについては、今後も十分な議論が必要である。

ーーー

保険適用外となった場合、「混合診療の禁止」の原則により、医療機関で処方することは実質的に不可能になる。
(仮に医者に漢方薬を処方してもらおうとすれば、薬代だけでなく治療費まで含めて全額自己負担になってしまう。)

日本東洋医学会、日本臨床漢方医会、NPO健康医療開発機構、医療志民の会の4団体は12月1日、保険適用継続を求める約27万人分の署名を、厚生労働省に提出した。

「現在、医師の7割以上が漢方薬を使用して、国民の健康に寄与してきた。また、全国の医学部・医科大学でも医学教育の中に漢方教育が取り入れられ、日本東洋医学会で専門医教育も行われ、専門家育成も進んでいる」とし、「国民の健康を守るためになくてはならない漢方薬・煎じ薬が健康保険で使えなくなることに、断固反対をする」としている。

長妻昭厚労相は会見で「患者の負担も増える話で、(保険から)ただちに外すのは疑問がある。要望などを見て判断したい」と述べた。

漢方薬も薬であり、特に処方されるクラスの薬剤になると副作用や他の薬剤との飲み合わせによる効果が出てくる可能性が十分にあるため、医師の処方がないと危険との指摘もある。
例えば、風邪にも用いられる一般的な漢方薬の小柴胡湯はインターフェロンとの併用で間質性肺炎の副作用を起こす可能性があることが知られている。

ツムラの芳井社長は11月12日の中間決算説明会で、「漢方医学の現状を知らない人たちの議論。なぜこういうことになるのか分からない」と強く反発した。「保険削除されたらツムラは間違いなく倒産する」と危機感を露わにし、「漢方薬と日本の伝統医学が消えてなくなることにもなる」と強調した。

また、民主党のマニフェストで、漢方医学を取り上げている矛盾を指摘し、「明らかにマニフェストと違う方針であり、漢方医学を知らない人だけの議論で保険適用外の話が進められるはずがない」と一蹴した。

民主党マニフェスト 医療政策(詳細版)

●統合医療の確立ならびに推進
漢方・健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧・鍼灸・柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療としての科学的根拠を確立します。アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します。

ーーー

民主党マニフェスト 医療政策(詳細版)の項目は以下の通り、非常に多岐にわたっている。

社会保障制度の安定
●国の責任で社会保障制度を維持発展
●医療は提供する側と受ける側の協働作業

予防医療の推進
●予防医学の推進

医療の安心・納得・安全
●医療の安心・納得・安全
●医療事故の原因究明および再発防止
●無過失補償制度の創設

国民皆保険制度の維持発展
●後期高齢者医療制度の廃止と医療保険の一元化
●包括払い制度の推進
●新しい医療技術、医薬品の保険適用の迅速化
●後発医薬品(ジェネリック薬品)

医療提供体制の整備
●医師養成数を1.5倍に増加
●現役医師の有効活用策で医療従事者不足を軽減
●臨床研修の充実
●勤務医の就業環境の改善
●医療従事者の職能拡大と定員増
●救急搬送・救急医療の連携強化
●国立高度専門医療センター・国立病院の機能の明確化

診療報酬
●地域医療を守る医療機関を維持
●レセプトオンライン請求の原則化

各診療科・疾患対策
●がん対策
●安心して産み育てることのできる医療
●歯科医療改革
●新型インフルエンザ対策
●アスベスト健康対策
●カネミ油症被害者対策
●肝炎総合対策
●難治性疾患対策
●心身医学
●統合医療の確立ならびに推進
●長期療養病床計画

http://www.dpj.or.jp/policy/koseirodou/index2009_medic.html


* 総合目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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コメント

はじめまして。TOMと申します。
漢方の仕分けの記事を拝見し、コメントさせていただきました。

私は、いろいろな病気を抱えていますが、10月に小脳の失調で、大病院の神経内科に、緊急入院し、4週間して、ようやく退院。

現在、春の職場復帰を目標に、その大病院の神経内科に通院、治療、リハビリの日々です。

漢方薬は、心臓病、慢性膵炎などでの、かかりつけの内科でも、かかりつけの耳鼻科でも処方してもらっていて、効果もあるように感じます。

現在の神経内科の処方薬(漢方薬ではないです)も健康保険がきいても、1日2回、朝晩一錠ずつの内服薬が14日分で1万円を超えました(!)
薬価は、1錠1200円弱というところでしょうか。

「大病院+かかりつけの内科+耳鼻科+眼科」というように、あちこちの医者にかからないといけない私のような人にとっては、漢方薬が保険適用外になるのは、本当に困るんですよね。

長妻厚労大臣は、漢方薬については考えて見るというような主旨の発言をされていましたので、仕切りの見直しを、切に願っている一人です。

投稿: TOM | 2009年12月 3日 (木) 09時38分

この記事へのコメントは終了しました。

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