« タイの行政裁判所、ラヨンの76事業に凍結命令 | トップページ | 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令 »

2009年10月 8日 (木)

最近の欧州の独禁法の事例

1.100%子会社の違反に対する親会社への制裁金問題

欧州委員会は200412月に、BASFUCBAkzo Nobel の欧州3社と米国のBioproducts DuCoa、カナダのChinook の6社が、992年から1998年にわたって、家畜用のビタミンB4 (塩化コリン)で国際カルテル(価格、市場割当)を結んだとして欧州3社に制裁金を科した。

これに対し、欧州3社は第一審裁判所に控訴、2007年に判決があった。

BASFとUCBの主張は1992年から94年は国際カルテル、それ以降は欧州カルテルで別カルテルであり、前者は時効だとするもので、第一審裁判所はこれを認め、制裁金の計算をやり直した。(UCBは大幅減額、BASFは増額)

Akzo は子会社が行なったカルテルで親会社に制裁金を科すのはおかしいとしたが、判決はこれを却下した。このため、Akzoは上告した。

2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額 

欧州の最高裁判所は9月10日、 「親会社は、自ら独禁法違反行為をしていなくとも、子会社の行為に責任を持つ」との委員会の主張を認め、Akzoの上告を却下した。

裁判所の判断は以下の通り。

重要なことは親会社が子会社と一つの経済体をつくっているかどうかである。

子会社の100%を保有している場合、親会社は子会社のポリシーに決定的な影響を与えている。子会社が日常の活動を独立して行っているというだけでは反論できない。

EUの独禁法では"undertakings(事業体"の活動が問題とされる。
親会社と子会社が一つの
undertakingsを形成しておれば、委員会は親会社に制裁金を科すことが出来る。
親会社が子会社のポリシーに決定的な影響を与えているということを示すためには、親会社が子会社の
100%を保有していることを示すだけでよい。

 

2.コンクリート用棒鋼カルテル事件
   裁判所で敗訴した事件で再度 制裁金

欧州委員会は9月30日、1989年12月から2000年5月までのコンクリート用棒鋼での価格カルテルでイタリアの8社に合計83百万ユーロの制裁金を科した。

本件は2002年12月、欧州委員会が当時の 欧州石炭鉄鋼共同体条約65(1)の違反で、同条約65 (4) (5)に基づき、制裁金を科した。

1951年にパリ条約が調印され、フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オ ランダ、ルクセンブルクが参加し欧州石炭鉄鋼共同体が設立された。

条約の第65 (1)ではundertakings(事業体)のカルテル行為を禁止している。

All agreements between , decisions by associations of undertakings and concerted practices tending directly or indirectly to prevent, restrict or distort normal competition within the common market shall be prohibited, and in particular those tending:

(a) to fix or determine prices;
(b) to restrict or control production, technical development or investment;
(c) to share markets, products, customers or sources of supply.

65 (4) (5)では手続きを決めている。

2002年にパリ条約が失効し、欧州石炭鉄鋼共同体の活動や資源は欧州共同体に吸収された。

EC条約では81条と82条で上記65 (1)の独禁法規定を引き継いでいる。
   
81条:競争制限の禁止
   
82条:独占的地位

しかし裁判所は、欧州石炭鉄鋼共同体条約が20027月に切れているため、同条約65 (4) (5)に基づいた制裁金命令は違法であるとし、敗訴となった。

欧州委員会は今回、当時の欧州石炭鉄鋼共同体条約 65(1)違反とし、旧法に置き換わったEC条約8182条執行手続きである7 (1)及び2003年のRegulation No 123 (2) に基づき、再度制裁金を科したもの。

同じ案件であるため、制裁金の額は(1社の少額の減額を除き)前回と同じである。

Neelie Kroes 委員(競争政策担当)は、「カルテル参加者は手続き面の理由で制裁金を逃れることは出来ないとの明確なメッセージを送った」と述べた。

 

3.変圧器カルテル

ECは10月7日、富士電機、日立、東芝を含む7社に変圧器カルテルで合計67,644千ユーロの制裁金を科したと発表した。

7社は1999年から2003年にかけて「紳士協定」を結び、日本メーカーは欧州に売らない、欧州メーカーは日本に売らないことを決めたというもの。年に1~2回、アジアと欧州の高級ホテルで会合を開いていた。

     Leniency 制裁金
(
Euro)
備考
減額(%) 減額(千Euro
Siemens (Germany)    100   33,360     0 カルテルを通知
ABB (Switzerland)      33,750 重犯で50%増し
ALSTOM SA(France)      16,500  
AREVA T&D SA (France)     18    2,970 うち 13,530
Fuji Electrics (Japan)     40    1,156   1,734  
Hitachi (Japan)     18     450   2,460  
Toshiba (Japan)      13,200  
合計      67,644  

東芝は以下の通り発表した。

欧州委員会の調査に協力して参りましたが、当社の調査では欧州競争法に違反する行為を行っておらず、欧州裁判所において今回の決定を争っていく方針です。決定書を正式に受領後、その内容を検討の上適切に対応していきます。

ーーー

日本のメーカーが欧州で販売しないために制裁金を科せられたのは、これまでに送電設備(ガス絶縁開閉装置)カルテルがある。

   2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


|

« タイの行政裁判所、ラヨンの76事業に凍結命令 | トップページ | 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« タイの行政裁判所、ラヨンの76事業に凍結命令 | トップページ | 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令 »