欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調
太陽電池の世界首位のドイツのQ-Cells は8月13日、大幅な赤字となった上半期決算と、対応策を発表した。
2008年の年間生産量は
1位:Q-Cells 574.2MW
2位:米 First Solar,Inc. 503.6MW
3位:中国 Suntech Power Holdings Co.,Ltd. 497.5MW
上半期決算は以下の通り(単位:百万ユーロ)
2006 | 2007 | 2008 | 2008/ 1-6 |
2009/ 1-6 |
増減 | 備考 | ||
Sales | 539.5 | 858.9 | 1251.3 | 579.5 | 366.2 | -213.3 | ||
(Export ratio) | 53.3% | 60.7% | 70.1% | 70.3% | 48.9% | |||
Operating Income (EBIT) |
129.4 | 197.0 | 205.1 | 119.1 | -47.6 | -166.7 | 1Q 14.7 2Q -62.3 | |
関係会社評価損益 | 4.1 | -418.4 | -422.5 | うちREC -387.0 | ||||
株式売却損 | 0 | -211.2 | -211.2 | REC -211.2 | ||||
税引前 | 138.0 | 209.8 | 225.2 | 107.1 | -706.2 | -813.3 | ||
Net income | 97.1 | 148.4 | 190.6 | 82.1 | -696.9 | -779.0 | ||
生産能力(MWp) | 336 | 616 | 760 | 630 | 760 | |||
実績(MWp) | 253.1 | 389.2 | 574.2 | 263.5 | 272.2 |
EBIT の前期比 -166.7 のうち、数量差 -77、価格差 -30、固定費差 -26 となっている。
需要拡大を目指して能力を急拡大したが、上期実績操業度は75%に止まっている。
輸出比率が前年通年が70.1%であったのに対し、本年上期は48.9%に急落した。
能力のWpはWatt Peakで、太陽電池モジュール(パネル)の最大出力を基準状態に換算したもの。
基準状態は、①日射強度1,000W/m2、②太陽電池モジュール温度25℃(温度が上がると発電電圧が低下)③AM(Air Mass)1.5 と規定される。
AM1.0 とは光の入射角が90 度(真上)から入射した光を意味し、AM1.5 はその通過量が1.5 倍(入射角41.8 度)での到達光を表している。
同社は上半期の状況を以下の通り述べている。
3つの問題で2009年に入り状況が激変した。
① スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。② 金融危機による銀行融資の激減 ③ 厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。 スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。 この結果、製品チェーン全体で売り手市場から買い手市場に変わった。高純度シリコンのスポット価格は昨年の400$/kgから2009年には100$以下に下がった。 wafer やcell の価格も同様である。
Q-Cellsは,Si原料メーカーであるノルウェーのREC(Renewable Energy Corporation AS)に出資(17.18%)することで,Si原料を安定調達して成長につなげてきた。
Q-Cellsは第1四半期にREC株式の評価減(387.0 百万ユーロ)を行ったが、5月12日に全株を売却し、売却損(211.2百万ユーロ)を計上した。合計で6億ユーロの赤字となる。
「在庫整理にあと3年は必要」との見方もある。政府の補助金頼みの危うさが浮き彫りになった。
Q-Cellsはドイツが2000年に家庭の太陽光発電で生まれた電力を通常の電気料金の3倍で買い取る助成制度を導入したのに乗り、2007年にシャープを抜き、世界首位に躍り出た。
Q-Cellsは同時に、経営改善策を発表した。
(1)生産能力調整と製造コスト低減
独Thalheimの旧式ライン閉鎖と約500名の人員削減
(2)技術開発の強化
2011年末までに単結晶セルで変換効率20%(研究開発レベル)を達成
子会社Solibro(CIGS太陽電池)、Calyxo(CdTe太陽電池)など,薄膜系企業への注力を進める。
(3)中期的な現金準備の確保
2010年における投資計画を全面的に見直し,最大3億ユーロの支出削減
カネカは太陽電池の売上高の9割以上が欧州市場だが、8月3日の第1四半期決算発表で、「太陽電池は、欧州での需要が景気低迷の影響により落ち込んだことに加え、競争の激化から販売価格が低下し、減収減益となりました」としている。
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これに対し、世界第2位の米First Solar は好調である。(単位:百万ドル)
2009/2Q | 2008/2Q | 増減 | |
Sales | 525.9 | 267.0 | 258.9 |
Operating Income | 204.0 | 88.7 | 115.3 |
Net Income | 180.6 | 69.7 | 110.9 |
同社は薄膜CdTe(カドミウムテルル化物)太陽電池を生産している。
太陽電池の主流である「結晶シリコン型」よりも製造コストが安いのが武器で、米政府の支援策も追い風となり、事業規模を広げている。
同社の生産は、2006 年の60MWpから、2007 年に206.3MWp、2008 年には502.6MWp に達した。
また、2004 年~2008 年の間に生産コストを$3/Wp から$1/Wp 以下に、2/3 削減することに成功した。
市場調査会社の米DisplaySearchは2009年にFirst Solarが首位になるとみている。
First Solarは2009年9月8日、公式訪米中の中国全国人民代表大会常委会委員長の呉邦国氏との間で、内モンゴル自治区のオルドスに2000MW(2GW)の太陽光発電所を建設することで合意したと発表した。
計画は4段階に分かれる。
・2010年6月1日までに最大出力30MWの実証発電施設の建設を開始
・100MW、870MWの施設をそれぞれ 2014年までに完成
・1000MWの発電施設を2019年までに完成
完成すれば総面積は25平方マイルとなる。
2000MWの太陽光発電を米国で建設すれば50~60億ドルがかかるとされるが、中国ではかなり安くできるとみている。
この計画では固定価格買い取り制度(Feed-in-tariff)により長期間にわたり電力料が保証される。
参考 シャープと関西電力の「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」は28MWである。
堺第7-3区太陽光発電所 堺コンビナート太陽光発電施設 事業者 関西電力 シャープおよび関西電力グループ 場 所 堺第7-3区産業廃棄物埋立処分場
(大阪府から借用)堺区築港八幡町
シャープ堺コンビナート発電出力 約10MW 最大 約18MW
当初 約9MW
2008/7/2 シャープと関西電力、「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」を推進
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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コメント
世界の各国に比べて我が日本の太陽光発電は遅れている。これは10kW未満と制限した太陽光発電からの高価買上制度にその原因がある。これを改善しない限り、日本の太陽光発電の拡大はない。
投稿: 井田均 | 2010年5月19日 (水) 15時16分