ダウ、16億ドルの増資、Dow AgroSciences の売却も検討
ダウは4月30日、第1四半期決算を発表した。
前期の大赤字を考え、ほとんどの人が赤字を予想していたが、黒字決算となった。
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Liveris CEOはこの結果を、Dow AgroSciences が好調であったこと、在庫が減って操業度が上がったこと、固定費削減を理由としている。
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同社はつなぎ融資の条件変更、R&H買収条件の変更、減配等々により、Rohm & Haas の買収を完了することが出来た。
R&Hの製塩事業の子会社Morton Salt の売却も行った。
2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了
しかし、クウェートのPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立破談で予定した売却代金が入らなくなり、R&H買収のための多額の借入金が残っており、これを不安材料にStandard & Poor's は4月1日にダウの格付けをBBBからBBB-(ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げ、Moody's も4月22日、Baa3 (同)に引き下げ、"negative outlook”(否定的な見方)としている。
借入金返済の対策が実現しなければ、ダウが最も恐れているジャンクボンドへの格下げが避けられない。
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ダウは5月5日、16.25億ドルの増資を発表した。
10億ドルは一般の増資で、得られた資金は借入金返済に充てられる。
残り6.25億ドルは今回のRohm and Haas 買収にあたり、R&Hの大株主のPaulson & Co.とHaas Familyの財団に買収代金の一部として合計30億ドル(当初の25億ドル+Haas財団に追加の5億ドル)の永久優先株を供与したが、この一部を普通株に換えるもの。
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Liveris CEOは第1四半期決算発表時に、次のようないろいろの事業の売却の努力を行っていると述べた。
1)オレフィンと誘導品の事業
K-Dow 問題でクウェートと交渉を続けているが、平行して同様の仕組みの交渉を2つの国営石油会社と交渉している。
また、いくつかの地域の事業のパートナーと事業売却の交渉をしている。(40~60億ドル)
・Total Group との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)の売却
・東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却
2)芳香族事業(重要だが、必ずしもダウの戦略にとってコアではない)
SBR、SBラテックス (10~20億ドル)
3)独立した非戦略事業(20~30億ドル)
Rohm and Haas のパウダーコーティング事業
(Dow Advanced Materials にとって戦略的意義を持たず、また、コーティングの需要家と競合している)
4)Dow AgroSciences
これはダウにとって戦略事業だが、この事業の評価と、戦略的方向付けをしている。
可能性としては、完全売却、JV、上場など。
これらの事業の価値は、およそ250億ドルに達する。このうち、40億ドルの実現はつなぎ融資の期間内に可能とみている。
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ダウは、石油化学を合弁事業化し(asset-light)、市場志向の機能性事業のポートフォリオによる高機能で収益の伸びの高い企業とする戦略をとっている。
しかし、石化事業をクウェートとのJVにし、それで得た資金で Rohm and Haas を買収するという戦略が、金融危機による石化事業の価値の低下とクウェートの政治問題で崩れ、ダウにとって儲け頭のDow AgroSciences の売却さえ、検討せざるを得なくなった。
他の事業の売却が出来ず、Dow AgroSciencesを売却せざるを得なくなれば、Liveris CEOの戦略に狂いが生じる。
2007年春に、汎用品事業の切捨てを主張するダウの役員が、ダウの売却話に加わったとして解雇されている。
2007/10/22 Dow の買収情報漏洩事件で新たな展開
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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