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2008年9月29日 (月)

中国粉ミルク汚染事件のその後

中国では石家荘三鹿集団(河北省石家荘市)の粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎臓結石となるケースが相次ぎ、死者は5人となった。
WHOによると、中国ではメラミンによって5万4000人以上の子供が要治療となり、現在1万2900人が入院中という。

    2008/9/17 中国で粉ミルク汚染 

河北省政府は9月14日、容疑者19人の身柄を拘束したと発表した。
うち18人は牧場、乳牛飼育団体、搾乳所の経営者で、残る1人は添加剤を不法販売していた業者。
彼らはタンパク質の測定値を引き上げて不法に利益を図ろうと、原料の牛乳にメラミンを混入したと供述している。

国家質量監督検験検疫総局(質検総局)は、育児用粉ミルクに対する特別検査を緊急に行なった。
メーカー109 社の育児用粉ミルク491品目を検査
、以下の22社の69品目からメラミンが検出された。

石家荘三鹿集団、上海熊猫乳品、青島聖元乳業、山西古城乳業、江西光明英雄乳業、宝鶏恵民乳品、
内蒙古蒙牛乳業、中澳(マカオ)合資多加多乳業(天津)、広東雅士利、湖南培益乳業、 
黒竜江省斉寧乳業、山西雅士利乳業、深セン金必氏乳業、施恩(広州)嬰幼児栄養品、 
広州金鼎乳制品、内蒙古伊利実業、烟台澳美多栄養品、青島索康栄養科技、
西安市閻良区百躍乳業、烟台磊磊乳品、上海宝安力乳品、福鼎市晨冠乳業

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問題の三鹿集団(San Lu)にはニュージーランドの乳業大手Fonterraが43%を出資、3人の取締役を派遣している。

FonterraのCEO Andrew Ferrierは9月15日、声明を発表した。

三鹿の取締役会で8月2日に、幼児用粉ミルクにコンタミ問題があることが報告された。
Fonterraが事件を知ったのはこれが最初。
この時点でFonterraはすぐ製品回収を行なうよう、強く主張した。

記者会見で、どうして早めに公表しなかったのか、と問われ、「合弁会社の少数株主として再三催促したが、三鹿は中国当局の指示に従わざるを得なかった」と答えた。

Helen Clark 首相は、ニュージーランド政府は、このコンタミ事件を地方政府が隠蔽しているのを知り、直ちに中国政府に連絡したとしている。
外相が9月5日、直接中国を訪問、本件について中国側に対応を要求した。

中国当局によると、三鹿集団がメラミン混入を市政府に報告したのは北京五輪開会直前の8月2日、市が河北省に報告したのは9月9日だった。

WHOの北京事務所長は9月26日、中国衛生省からWHO北京事務所への通報が9月10日夜だったことを明らかにし、「中央政府への問題発生の報告が遅れたことは深刻だ。報告が早ければ多くの人たちが危険な粉ミルクを避けることができた」と述べた。

WHOは9月26日の会見で、「生後6カ月間までのすべての乳児には母乳だけを与えることを推奨する」との見解を発表し、粉ミルクの使用を控えるよう訴えた。
「授乳のために母親の労働環境を整備すべきだ」(食品安全の担当者)としている。

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共産党中央と国務院は9月13日、「国家重大食品安全事故1級対応体制」を発動し、緊急対策指導チームを立ち上げた。
 ・衛生部門:昼夜を問わず被害乳児を治療(国務院が乳児への無料治療を発表)
 ・品質検査部門:24時間態勢で全乳製品を検査
 ・工商総局:「問題粉ミルク」の押収・回収
 ・農業部:不合格牛乳は源から断つ

国家質量監督検験検疫総局(質検総局)は粉ミルクに続き、全国の牛乳のメラミン検査を行なった。
市場の70%以上を占める知名度の高いメーカー、蒙牛・伊利・光明・三元・雀巣(ネスレ)の牛乳に有害物質のメラミンが混入していないかどうかを重点的にサンプリング調査した。
その結果、蒙牛・伊利・光明の牛乳の一部からメラミンが検出され、質検総局はこれらの回収撤去を命じた。

中国国務院は9月18日、食品の品質検査免除制度を撤廃する旨の通知を出した。

中国では「食品品質検査免除制度」(1999年12月5日発布 「製品品質業務に対するさらなる強化問題に関する国務院決定」)があり、3回の品質検査に連続して合格した商品については、所定の厳重な検査を3年にわたり免除されていた。
メラミン検出が公表されたメーカー22社の大半が、「高水準で一貫性のある品質管理が行われている」としてこの資格を取得してい
た。「三鹿集団」も検査免除の資格を持っていた。

通知では、食品品質検査免除制度を廃止すること、各地方・各部門に対し食品の品質安全を確保するよう求めている。

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河北省では粉ミルク事件で責任者を処分、三鹿董事長も辞職した。
 石家荘市は市政府の農業担当であった副市長、牧畜水産局長を解任。
 河北省は食品薬品監督管理局長、質量技術監督局長を解任。
 石家
市長も辞任した。

中国国務院は9月22日、国家品質監督検査検疫総局の李長江局長(閣僚級)の辞任を認めた。担当閣僚の事実上の更迭。

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香港政府の食品安全センターは9月19日、日清食品が香港で販売するデザートの原材料に、化学物質メラミンが検出された中国の大手乳業メーカー「伊利」の乳製品が使われていたと発表した。日清がセンターに連絡し、製品の回収を始めた。

回収されるのは、山東省青島の食品工場で製造された、香港のデザート「糖水」シリーズの「チャ・チャ・デザート」。アズキや豆がベースのおしるこ風のレトルト製品。

丸大食品も製品の回収を始めた。

中国山東省にある子会社で製造し、日本に輸入している「クリームパンダ」、「抹茶あずきミルクまん」、「グラタンクレープコーン」の3品に伊利集団の牛乳を使用していた。
その後、住金物産の中国子会社が製造し、丸大が輸入した「角煮パオ」、「もっちり肉まん」も回収を始めた。

大阪府の高槻市保健所は9月26日、4種類の同社商品からメラミンを検出したことを明らかにした。丸大食品も同日、自主回収した商品1種類と中国の工場に在庫として残っていた牛乳から、自社の分析でメラミンが検出されたことを明らかにした。

検査で検出されたのは「グラタンクレープコーン」、「クリームパンダ」、「抹茶あずきミルクまん」、「クリームまん」。

 

アジア各国では中国乳製品に対する禁輸措置が相次いでいる。

9月21日までに台湾やシンガポール、マレーシア、ブルネイが乳製品の禁輸措置をとった。
台湾ではインスタントコーヒーなどに使われていた植物性粉クリームからも微量のメラミンを検出、禁輸の範囲を植物性たんぱく製品まで拡大した。

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中国乳製品工業協会と中国連鎖経営(チェーン経営)協会の呼びかけのもと、蒙牛乳業、伊利実業、光明乳業はじめとした乳製品メーカー316社は9月23日、自主的に国家基準と業界基準を遵守する公約「品質信用宣言」を発表した。

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三鹿集団では、今回の汚染粉ミルク回収量は1万トンを超え、損害賠償額は7億元以上に達する見込み。患者の治療費については責任者として支払いの義務があり、負担は巨大で、破産に追い込まれる可能性がある。

同集団の流動資金はすべて粉ミルクの回収費用と損害賠償に回され、取引銀行は資金貸付を行わないだけでなく、過去の貸付金の返済を要求している。

河北省国有資産監督管理委員会は三鹿集団に人を派遣し、工場の早期の運転再開を目指して、集団の資産整理を進め、新たな引受先を探すなどしている。

三鹿集団の引き受け先としては、製品から有害成分メラミンが検出されていないため株価が大きく値上がりしている北京三元食品が噂に上がっている。

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温家宝首相は9月27日、天津で開かれた「世界経済フォーラム(夏季ダボス会議)」で、本件について以下の通り述べた。

我々の現代化の課程で生産管理に問題がまだ多いことや、企業道徳、職業道徳、社会モラルをより重視すべきだということもさらけ出した。
こうした問題を解決するための包括的な計画を速やかに提出する。

食品や乳製品だけでなく、すべての中国製品を世界中の人々に安心を与えるものにする。中国の人民、世界の人々を失望させることはないと信じている。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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