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2008年9月22日 (月)

薬害肝炎訴訟、田辺三菱製薬が和解

田辺三菱製薬は9月19日、薬害肝炎訴訟に関し、全国原告団・弁護団との間で訴訟を解決するための「基本合意書」を締結することが取締役会で承認され、9月29日に締結すると発表した。28日に葉山夏樹社長らが原告患者らに直接謝罪する。

各高裁および各地裁に係属中の訴訟は、「基本合意書」締結後、原告側が順次、同社及び子会社ベネシスへの損害賠償請求を放棄することによって終結する。

政府との間では薬害C型肝炎救済法成立を受け、本年1月15日に原告・弁護団と舛添厚労相による基本合意書の調印式が行われ、順次和解が行なわれている。

残る被告企業の日本製薬も和解を受け入れる方向で、同訴訟は2002年10月の初提訴から丸6年で全面解決に向かう。

過去の経緯 2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立

同社は今後、厚生労働大臣との間で、特別措置法による給付金支給等業務に要する費用の負担の方法およびその負担割合について協議決定する。2008年3月期決算において「HCV訴訟損失引当金」として 11,200百万円を計上しているが、今後の協議の結果により負担額が変動する可能性があるとしている。

舛添厚生労働相は本年1月、これまでの薬害事例などを参考に「企業が2:国がという比率になる」と説明している。

これまでの薬害エイズ訴訟、サリドマイド訴訟、キノホルム(スモン)訴訟、薬害ヤコブ訴訟では、ミドリ十字の入っている薬害エイズ事件のみ、企業と国の負担が3:2 (企業負担 60%)で、他はすべて2:1(企業負担 66.7%)となっている。

(同社の引当のベースは同社の主張する3:2ベースではないかと思われる)

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1月15日の原告・弁護団と政府の和解基本合意書締結の後、原告側は、謝罪などを求めた「全面解決要求書」を製薬会社3社に送付した。

三菱ケミカルホールディングスの小林社長は社員向けの新年挨拶で、「今後、行政、司法当局とともにこの問題の早期解決に向け、誠実かつ真摯に対応していかなければなりません。」としたが、話し合いは難航し、製薬会社との訴訟は継続された。

報道によると、
1)青森県での集団感染発生以降、多くの医療機関でカルテなどが廃棄された、
2)418人の症例リストなど感染者情報を厚生労働省に報告しただけで、感染を知らないまま病状が進行した人がいる、
の2点の責任を巡って交渉が難航していたという。

今回の合意書案では、会社側は原告団が示した基本合意書案をほぼそのまま受け入れ、
製薬企業が薬害の発生と拡大を防げなかったことの責任を認め謝罪するほか、
青森県で集団感染が判明した1987年以降、被害実態調査を怠ったため医療記録が廃棄された事実や、薬害の可能性がある患者418人の症例リストを放置した事実などを踏まえ、企業が再発防止を誓う内容で、
更に、企業は被害の実態調査や情報開示、新薬の開発などに努め、患者側との継続的な協議の場も設ける、となっていると報じられている。

会社側は今年1月からの和解協議で「1審判決で血液製剤の投与の事実を認められなかった原告との和解は困難」との主張を崩さなかった。
このため、全員一律の解決を求める原告団は、裁判での和解は困難と判断、損害賠償の請求権を放棄する形で訴訟を終結させることとした。

締結後、国と和解が成立した患者は順次、田辺三菱とベネシスに対する賠償請求を口頭弁論で放棄する。
(患者は国との和解により補償を受ける)

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また、集団訴訟に加わったが、方針の違いで全国原告団を離れ、早期解決を目指して和解交渉を進めていた原告一人が9月17日、大阪地裁で田辺三菱製薬と和解した。

原告側が賠償請求を放棄し、田辺三菱側がC型肝炎患者救済のため、治療薬の開発に最大限努力することが条件。

原告は当初、NPO「肝炎家族の会」との間で協議会を設置するを求めていたが、会社側が難色を示したため、この条項を外した。

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薬害肝炎訴訟原告の福田衣里子さんは9月18日、次期衆院選長崎2区に民主党公認として立候補することを表明した。
長崎2区では、元防衛相の自民現職久間章生氏などが立候補を表明している。

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付記

2008年10月2日の毎日新聞は「記者の目」で本件について書いている。

「田辺三菱製薬の謝罪に疑念--原因・責任、明らかに」というタイトルで、「和解協議の場となった大阪高裁を担当し、同社の隠ぺい体質や被害者軽視の姿勢を目の当たりにしてきただけに、薬害の発生責任を認め、再発防止を誓う言葉を額面通り受け取っていいのか疑念を抱いている」として、これまでの同社の姿勢を批判している。

「信頼される企業に生まれ変わるには、薬害を発生させた原因を自ら究明し、責任の所在を明らかにすることが大前提となる。社長の謝罪は、そのスタートラインに過ぎない」としている。

    http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20081002ddm004070122000c.html

付記 薬害肝炎訴訟基本合意書 要旨

フィブリノゲン製剤および第9因子製剤(以下、各血液製剤)にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者および遺族の方々は長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。

全国原告団・弁護団と田辺三菱製薬およびベネシス(以下、両社)は、各地裁で一定範囲で両社の法的責任を認める1審判決がなされたことなどを踏まえ、紛争を解決するため、次の通り基本事項を合意した。

一、責任と謝罪、および再発の防止

両社は、本薬害事件について、各血液製剤によるC型肝炎ウイルス感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者および遺族の方々に深くおわびする。

両社は、さらに、今回の事件の反省と以下の事実を踏まえ、命の尊さを再認識し、製薬会社として薬害ないし医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力を行うことを誓う。

(1)獲得性の傷病について、各血液製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎に感染された方々が多数生じたこと

(2)C型肝炎に感染された方々およびその家族の方々が、感染、発病、治療等により、長期にわたり肉体的・精神的苦痛を被ったこと

(3)各血液製剤によるC型肝炎感染被害拡大防止のため、その時々の科学技術水準を踏まえて、製薬会社としてさらなる措置を講じることができたと考えられること

(4)青森県での集団感染発生から数えても現在までに20年以上が経過し、その間に多くの納入医療機関で投与の事実を立証しうるカルテなどの医療記録が廃棄された実態が存すること

(5)いわゆる418人リストの感染被害者情報については、両社は情報を旧厚生省に報告した。一方、感染被害者には、2007年まで、いわゆる7004医療機関の公表とそれに伴う検査の呼び掛け以外の対応がなされず、リスト掲載者の中には、感染の事実を知らないまま病状を進行させた者も存すること

二、恒久対策等

(1)被害実態調査

両社は、本件薬害の実態調査に関し、国および医療機関による各血液製剤の投与を受けた者の確認の促進、被投与者への検査の呼び掛けに協力し、保管する各血液製剤の納入実績データや、収集した感染症(副作用)報告等のデータを一定の場合に開示する。

(2)新薬の開発

両社はC型肝炎ウイルス感染被害者の治療のための新薬開発に努める。

(3)検証会議への協力

両社は、国が設置する「薬害肝炎事件の検証および再発防止のための医薬品行政の在り方検討委員会」に対して、社内に現存する資料を提供するなどして協力する。

(4)継続協議

恒久対策について、両社は全国原告団・弁護団と継続協議をする場を設定する。

 


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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