旭硝子、北米板ガラス事業の構造改革
旭硝子は4月17日、北米の板ガラス事業の構造改革を発表した。
本年4月から12月にかけてフロートガラス生産拠点(3工場)及び建築向けコーティングライン(2工場)での生産を停止するとともに、建築用加工ガラス事業を売却する。
フロートガラス生産拠点
Victorville Plant(カリフォルニア州)
St. Augustine Plant(カナダ ケベック州)
Greenland No. 1 Plant(テネシー州)の概要
建築向けコーティングライン
Victorville Coating Plant(カリフォルニア州)
Hampton Coating Plant(アイオワ州)
これにより、同社の北米におけるガラス生産能力は約40%削減される。
北米板ガラス事業については今後は、太陽電池用ガラス、自動車用ガラス素板、及び建築用の付加価値製品の3つの分野に経営資源を集中する。
ーーー
同社は2005年から3年間の中期経営計画 “JIKKO-2007” の重点施策の1つとして北米地域の収益改善を掲げ、板ガラス事業についてもコスト削減等の施策を検討してきた。2007年2月には、ニュージャージー州のCinnaminson工場の閉鎖を発表した。
北米の板ガラス市場は、住宅用ガラスが大きな割合を占めているため、近年の住宅市場の減速により、供給過多の状況が続いている。
同社製品は競合他社との差別化が難しい汎用品のフロートガラスに過度に依存していることに加えて、原燃材料費高騰によるコスト上昇により、事業採算は悪化を続けており、今回の構造改革に踏み切った。
既報の通り、米国の住宅着工件数は2006年1月の年率2,265千戸をピークに急降下し、本年3月は947千戸で、1991年3月の921千戸以来 17年ぶりという低迷状況である。回復の兆しは見えない。
旭硝子の2007年の地域別・事業別の売上高・営業損益の状況は以下の通りで、アメリカのガラス事業は赤字となっている。
欧州の高収益との違いが著しい。
地域・事業マトリックス 2007年 単位:億円
日本 アジア アメリカ ヨーロッパ 消去 合計 売上高 営業
利益売上高 営業
利益売上高 営業
利益売上高 営業
利益売上高 営業
利益売上高 営業
利益ガラス
2,792
68
949
63
1,475
-77
3,966
588
-521
-8
8,660
637
電子・ ディスプレイ
3,666
770
2,805
483
277
5
206
2
-2,303
-78
4,652
1,182
化学
2,189
80
877
48
166
-1
132
-5
-170
2
3,194
124
その他
835
36
60
3
4
-6
5
0
-28
-2
876
32
消去
-473
4
2
-1
-3
0
-6
1
-90
2
-569
0
合計
9,010
957
4,692
595
1,919
-79
4,303
586
-3,111
-85
16,812
1,975
アメリカ地区全体の損益は2004年に赤字に転落し、その後赤字が続いている。
(2004年 -32億円、05年 -70億円、06年 -62億円、07年 -79億円)
売上高から考え、ほとんどがガラス事業の赤字と思われる。
ーーー
本ブログで米国の住宅着工件数の減少に着目したのは2006年11月である。(サブプライムローンについては2007年4月)
2006/11/18 米国住宅着工件数、続落
2007/4/21 ニュースのその後 米国住宅着工件数、低迷続く
当時は、これが米国経済にどう響くかについては、いろいろ意見があった。
しかし、これほどまでに住宅の低迷が続き、サブプライムローンの破綻を通じて、これほどまで実体経済に悪影響を与え、世界中に波及するとは誰も思わなかった筈である。
金融機関のサブプライムローンによる損失は増大しつつあるが、サブプライムローンの残高は1兆3000億ドルあり、住宅価格の下落でさらに損失が増える可能性がある。(日本の金融機関を含め、これまで発表している損失は確定したものではなく、その時点での評価損に過ぎず、貸し倒れが増えると損失は更に増大する。)
今後更にいろいろな面で悪影響が出てくる可能性が強い。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント