米アルゴンヌ国立研究所、画期的なエチレン製法開発
米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)は2月5日、画期的なエチレン製法を開発したと発表した。
高温の水素透過膜でエタンから水素を取り除きエチレンをつくるという方法で、「これまでのように高コストで無駄の多い、公害物質を放出する製法とは異なり、クリーンでエネルギー効率のより製法だ」としている。
新しい膜は水素だけを通すため、エタンは空気中の酸素や窒素と接触せず、従来の熱分解法で発生するNO、CO2、CO等を発生しない。
また、絶えず熱の投入が必要な熱分解法と異なり、膜を通して出てきた水素が空気中の酸素と反応してエネルギーを発生させるため、反応に必要なエネルギーの投入が不要である。
更に、通常は C2H6(+heat)=C2H4+H2 の反応で、反応器内の組成が平衡に達すると(水素が平衡濃度に達すると)反応は進まないが、水素透過膜は生成した水素のみを透過させるので、反応式右辺の H2 が反応系から減少し(即ち平衡が破れ)、エタンのエチレン+水素への分解反応がどんどん進行する。発表文に以下の説明がある。
The membrane reactor thinks: “Hey, I haven't reached equilibrium yet, let me take this reaction forward.”
現在のところは実験でエチレンを生産しただけであるが、研究者は産業界と提携して商業的にこの膜を生産することを考えている。
この研究は6月にボストンで開催される 2008年 Clean Technology 会議で紹介される。
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アルゴンヌ国立研究所はシカゴ西方にあり、1946年に設立された米国で最初の国立研究所である。
元はシカゴ大学の冶金研究所で、1942年2月、ここで Enrico Fermi などが世界で最初の核分裂連鎖反応を行なった。
戦後は核の平和利用に携わった。
現在の従業員は2,800人で、うち科学者とエンジニアは1,000人、そのうち博士号所有者は750人に達する。
年間予算は530百万ドルで、200以上のプロジェクトを実施している。
研究は次の5つの分野に分かれている。
1) | Basic science |
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2) | Scientific facilities |
3) | Energy resources |
4) | Environmental management |
5) | National Security |
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一方、Dow Chemical は1月24日、“Methane Challenge” の研究助成金 640万ドルをCardiff University と Northwestern University に与えると発表した。
Dow Chemical は2007年3月、メタンから直接エチレンやプロピレンなどを製造する研究の案を募集した。
商業的に採算の取れる技術を得る研究で、最初に合成ガスの生産が必要な、メタンからメタノールなどをつくる既存の間接法は対象とならない。
メタンは世界の多くの地域に存在するが、化学品や液体燃料にするのが難しく、Dow Chemical では広くアイディアを募集することとしたもの。
約100件の提案のなかから、2つの大学の案が選定された。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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コメント
それなら日立金属の冶金研究所のほうが歴史があるんじゃない?
投稿: 大同大学生 | 2016年1月 7日 (木) 04時03分
日立金属 冶金研究所 境界潤滑の原理を解明。
https://www.researchgate.net/profile/Kunichika_Kubota/publication/296699696_Low_friction_loss_can_be_realized_by_high_strength_self-lubricating_alloy_without_coating_for_sliding_parts/links/56d9177108aee1aa5f8035b0.pdf?origin=publication_list
投稿: 某刀匠 | 2016年10月20日 (木) 00時41分