« BP、中国事業を更に拡大 | トップページ | イスラエルのCarmel Olefins が欧州 PPメーカーに出資 »

2008年1月29日 (火)

MBS価格カルテル問題

三菱レイヨンは1月24日、同社と米国子会社が米国で提起されていた、モディファイヤー(塩ビ樹脂強化剤=MBS)事業に関する集団民事訴訟について、原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意したと発表した。

2003年2月、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会は塩ビ樹脂強化剤の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手した。

9カ国の14社以上のメーカーに調査が入った。
Akzo NobelRohm and Haas などのほか、日本では三菱レイヨン、呉羽化学(現クレハ)、鐘淵化学(現 カネカ)に調査が入った。

この価格カルテル事件は、公取委が米国や欧州の独禁当局と審査着手前から連携して取り組んだ初めてのケースであった。
公取委は日米間の協力協定を1999年10月に締結しており、EUともこの後、2003年7月に締結した。

ーーー

日本での容疑は、三菱レイヨン、呉羽化学、鐘淵化学の3社が、
19991121日からの価格引き上げ
200012月前後からの価格引き上げ
を合意し、
この分野における競争を実質的に制限したというもの。

3社の当時のMBS事業は以下の通りであった。

鐘淵化学 高砂  35千トン  
カネカ・テキサス  50千トン 鐘化 100%
カネカ・ベルギー  51千トン 鐘化 90%、三井物産 10%
カネカ・マレーシア  15千トン 鐘化 100%
呉羽化学  13千トン  
Kureha Chemicals (Singapore)  30千トン 呉羽 75%、R&H 25%
Rohm and Haas (Scotland)  55千トン 呉羽 25%、R&H 75%
三菱レイヨン 大竹  25千トン  
Metco North America  26千トン) (三レ/Atofina 50/50)*
Metablen Company B.V.(蘭)  ( 13.5千トン) (三レ/Atofina 50/50)*

     * 三菱レイヨンとAtofina のJVは、2002/5に合弁解消、Atofina 100% になった。

呉羽化学は「選択と集中」の観点に立ち、同事業からの撤退を決定し、2003年1月1日にこの事業を提携先のRohm & Haas に譲渡している。呉羽は1981年にMBS技術をRohm and Haas に供与し、その後、協力関係を深めていた。

1. 呉羽化学はプラスチック添加剤事業の全世界営業権をR&Hへ譲渡
 
対象:
    ①MBS系プラスチック改質剤
    ②アクリル系耐候性強化剤、加工助剤
   
2. 両社のMBS製造のJVで、呉羽75%出資Kureha Chemicals (Singapore) 、同25%出資のRohm and Haas (Scotland) Rohm and Haas 100% とする。
   
3. 日本国内では、呉羽が錦工場において製造を継続し、Rohm and Haas に供給する。

ーーー

2003年12月11日、公正取引委員会は、三菱レイヨンと鐘淵化学に対し、排除勧告を行なった。
(呉羽化学は既に事業を譲渡しているため、排除勧告は不要)

両社はこれに応諾せず、公取委は2004年2月に審判開始の決定を行なった。
この審判はまだ続いている。

呉羽化学に対しては、公取委は2005年7月、2億6,849万円の課徴金納付命令を出した。
しかし、同社は、事実関係を含めて、公取委の判断との間に看過できない相違があるとして、審判手続の開始を請求、この審判もまだ続いている。

ーーー

米国においては、米国司法省は、モディファイヤーの販売に関して、価格カルテル、独禁法違反の容疑で3社の米国子会社に対する刑事調査を行ったが、20064に容疑なしとして不起訴となり終了した。

(欧州委員会による調査も2007年1月に終了した。)

しかし、米国のMBSの購入者から、価格維持等の米国独占禁止法に違反する行為により損害を被ったとの主張で、3社の子会社に対してそれぞれ損害賠償請求訴訟(民事集団訴訟)が提起された。

・クレハは2005年11月、原告団に対して500万ドル(約565 百万円)の和解金を支払うとの内容で、原告団と和解した。

・カネカは2007年4月、原告に対して590万ドル(約7億円)の和解金を支払うとの内容で、原告と和解合意した。

・三菱レイヨンは上記の通り、本年1月に
原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意した。

各社とも、違法な行為は一切存在せず、原告の主張には根拠がないとしながら、今後の訴訟遂行に要する費用、関係者が負担する時間やエネルギー、それらの事業活動への影響等を総合的に考慮した結果、和解が最善であるとの判断に至ったとしている。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

|

« BP、中国事業を更に拡大 | トップページ | イスラエルのCarmel Olefins が欧州 PPメーカーに出資 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。