日本とASEANの包括的経済連携協定の交渉妥結
日本とASEANの包括的経済連携(AJCEP)協定は8月25日の経済相会合で大筋合意していたが、11月6日の第11回交渉で確定、11月21日の日ASEAN首脳会議で交渉妥結に関する以下の共同声明が出された。
各国首脳は、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定交渉が、成功裡に妥結したことを歓迎し、ASEAN構成国と日本国が、来るべき協定を物品・サービス貿易、投資や経済協力といった分野を含む包括的なものとすることに成功したことに満足の意をもって留意した。
各国首脳は、本協定が、貿易と投資の更なる活性化のために強い刺激を与え、一層大きな機会をもたらすより大きくかつ効率的な市場をこの地域に創設することによって、ASEANと日本国の間の経済的な結びつきを強化することを確信する。AJCEP:ASEAN-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement
包括的経済連携協定における物品の貿易自由化は以下の通りとなる。
日本 | 貿易額で90%分 | 即時関税撤廃 |
同 3%分 | 段階的関税撤廃(10年以内) | |
残り | 自由化除外(コメ、砂糖など)又は関税率を一定水準以下に | |
6カ国(ブルネイ、インドネシア、 マレーシア、フィリピン、 シンガポール、タイ) |
一部 | 即時関税撤廃 |
品目数(6桁)で90%分 | 段階的関税撤廃(10年以内) | |
残り | 自由化除外又は関税率を一定水準以下に | |
ベトナム | 品目数(6桁)で90%分 | 段階的関税撤廃(15年以内) |
残り | 自由化除外又は関税率を一定水準以下に | |
カンボジア、ラオス、ミャンマー | 品目数(6桁)で85%分 | 段階的関税撤廃(18年以内) |
残り | 自由化除外又は関税率を一定水準以下に |
日本側
・鉱工業品については、殆どの物品について、10年以内に関税撤廃を行う。
・農林水産品については、守るべきものは守りながら、関税削減等を通じ可能な努力を行う。
(1) 関税撤廃に応じた品目
これまでのアセアン各国との二国間EPAで関税撤廃に応じた品目
・即時関税撤廃する品目の例:ドリアン、えび、えび調製品等
・10年以内に段階的関税撤廃する品目の例:塩蔵なす、カレー調製品、くらげ等
(2) 関税撤廃に応じなかった品目
・関税削減する品目の例:鶏肉調製品、合板(熱帯産木材のうち関税が6%及び8.5%のもの)等
・除外等、関税撤廃・削減の対象外とした品目の例
国家貿易品目(米麦、米麦調製品、乳製品)、牛肉、豚肉、鶏肉、砂糖・砂糖調製品、でん粉等
日本側のメリットとしては、原産地規則の「累積」の適用によって、日本及びASEAN域内全体での生産ネットワークを強化することである。
日本企業が薄型テレビのパネルなどの主要部品など高付加価値品を輸出して現地(B国)で組み立て、他のASEAN諸国(C国)に輸出する場合、これまではB国での付加価値が40%未満の場合は、C国で高率の関税がかかっていた。
(ASEAN産として無税輸入が認められるのには、ASEAN内で40%以上の付加価値の生産が必要)
原産地規則の「累積」とは、締約国Aの原産品が締約国Bで生産される産品の材料として使用される場合に、その原産品が締約国Bの原産材料としてみなされることをいう。
今回の協定でB国での付加価値が40%未満でも製品はASEAN産とみなされ、C国に無税で輸出できる。
これにより日本企業はASEAN域内で一体的な生産ができるようになる。
日本とASEANの貿易関係は以下の通り。
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* バックナンバー、総合目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
項目別の索引も作成しました。
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