王子製紙の中国工場、発表から4年半でようやく着工
王子製紙は2008年年初に懸案の中国江蘇省の南通工場建設に着工する。
10月10日にようやく合弁会社設立の認可を同国政府から取得し、10月26日に合弁会社江蘇王子制紙有限公司(王子製紙 90%、南通市経済技術開発区総公司 10%)を設立した。
まず高級紙生産設備 40 万トン系列を2010年後半に稼動させ、2012年に倍増する。総投資額は約 2千億円。
2003年6月に発表された当初計画は、王子製紙の単独出資で、年産120万トンの上質紙、塗工紙を建設するもので、第1期として2006年末の塗工紙 60万トンの生産を目指した。
しかし、その後の中国の投資ガイドラインの変更で合弁方式を義務付けられ、合弁相手との交渉に手間取り、完成時期は大幅にずれ込んだ。また、当初の120万トンの計画に対して、80万トンの認可しか下りていない。今後、引き続き承認を求める。
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王子製紙は2001年度策定の中長期経営計画で、「本籍日本のアジア国籍企業」を目指し、5年後を目処に100万t/年の生産拠点をアジア地域に設置する構想を発表し、検討を行なってきた。
2003年6月、王子製紙は中国における事業を本格的に展開するため、中国江蘇省南通市の南通経済技術開発区管理委員会と用地取得に関する基本合意に達したと発表した。
2004年度中に着工し、2006年末を目処に塗工紙 年産60万トンの生産設備を建設(投資額は約600億円)し、将来は 120万トン規模の上質紙、塗工紙を生産する紙パルプ一貫工場を建設する計画(総投資額は概算2,000億円)である。
事業遂行のため、2003年9月に単独で持株会社(投資性公司)王子制紙(南通)有限公司を設立した。
この会社は中国へ既に進出している事業も含めて統括する「王子製紙中国本社」との位置付けであった。
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2004年11月、中国の国家発展改革委員会 (NDRC) と商務部は連名で対中投資のガイドライン「外商投資産業指導目録 (Catalogue for the Guidance of Foreign Investment Industries)」を発表した。2005年1月1日施行で、それまでのガイドラインは無効となった。
そこでは外資奨励事業、外資制限事業、外資禁止事業が明示され、製紙業については
①年産30万トン以上の化学パルプ、年産10万トン以上の化学機械パルプの生産計画
②上級紙、段ボールの生産計画
が奨励事業となったが、いずれも合弁か合作に限るとされた。
このほかでは、例えばエチレンは年産60万トン以上が奨励事業とされ、中国側パートナーがマジョリティを持つこととされている。
詳細 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/china/catalogue.htm
このため、王子製紙では2005年に止む無く、合弁方式に切り替えた。
南通経済技術開発区が所有する投資会社、南通経済技術開発区総公司が10%、王子製紙が90%出資とした。
国家発展改革委員会に対して合弁方式での認可申請作業を行い、2008年度中の生産開始を目指した
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2005年4月:国家環境保護総局から「南通プロジェクト」の環境アセスメントの認可を取得
2005年6月:国家発展改革委員会に対し「南通プロジェクト」の認可を申請
2006年5月:国家発展改革委員会の審査が終了し、国務院へ上程
2006年7月末に国務院より「南通プロジェクト」の認可を取得した。
内容は以下の通り。
1)計画
・高級紙生産設備 2系列 年産能力:80 万トン(40 万トン×2 系列)
・クラフトパルプ(KP)自製設備 1系列 年産能力:70 万トン
・付帯設備 1式2)事業主体 中国企業との合弁(王子が90%、南通市経済技術開発区総公司が10%)
3)今後の予定
・ 2006 年末 : 江蘇王子制紙有限公司の設立
・ 2007 年初 : 土地造成工事の開始
・ 2009 年末 : 1 号抄紙機、1 号コーター稼動開始 [年産40 万トン]王子製紙としてはプロジェクト全体として年産120 万トンを計画しており、残りの年産40 万トンについては、引き続き、認可を取得できるよう中央政府に対して申請を実施していく予定とした。
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その後、現地資本との合弁による事業会社設立の手続きが難航した。
2007年7月、ようやく合弁契約で合意に達し、商務部に対し合弁会社の設立申請を行った。
合弁会社:江蘇王子制紙有限公司 Jiangsu Oji Paper Co., Ltd.
設立時設立時資本金:9億1,151万米ドル
出資:王子製紙 90%
南通市経済技術開発区総公司 10%
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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
項目別の索引も作成しました。
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