太湖の水質汚染問題
2007/6/11 「中国のインターネット反対運動が石化計画を止める」の中で以下の通り述べた。
中国では2005年11月に発生した吉林石油化学の爆発事故やその他の多くの事故・環境問題で住民の不安が高まっている。
最近も太湖のアオコ(藍藻)の発生で無錫市の飲み水供給が問題となっている。
無錫市の太湖水域は5月29日、深刻な汚染により、水道水から異臭を放ち、飲用できなくなった。単なるカルキ臭ではなく屋内の井戸の底に堆積した泥のような悪臭を放っているとのことで、翌30日にはさらに酷くなり、手を洗えば手が臭くなり、口を漱ぐことさえできない、料理したものも口に入れることが出来ないほどの臭いという。
このため住民はスーパーのミネラル・ウォーターを争って買いあさり、8人民元の水が 50~60元にまで価格が高騰したという。
無錫市水道局は臭水汚染を認め、「今回の汚染は深刻で、浄水器や活性炭、強酸化剤を使用しても効果がなく、なすすべがない。市民に対しては、しばらくの間、精製水の使用を勧めること位しか出来ない」と伝えている。
国家環境保護総局によると、太湖では窒素とリンの量が2006年までの10年でそれぞれ2倍、1.5倍に増加。 企業による汚染物質の排出が主因とみられる。
太湖は面積約2200km2、中国第3の湖で長江デルタの要。
太湖は広くて浅いタイプの湖底で、湖底には柔らかくて、有機質や栄養塩類を大量に含んだ灰黒色のヘドロが沖積し、これが太湖の深刻な二次汚染の原因となっている。その中に含まれる栄養物質が、湖水の水質の富栄養化と藻類の爆発的増殖による栄養塩類を作り出す元の一つとなっている。
早くも1990年に太湖の北側一部の水域にアオコが急激に発生し、湖水は異臭を放ち、無錫市への1日の給水量は25%減となり、116軒の工場が生産停止か半停止状態に追い込まれている。
無錫、蘇州の両市は、生活用水の80%を太湖から取水している。
(無錫から上海へは、東に128km、南京へは、西に183km。)
江蘇省無錫市で6月11日、太湖の水質汚染問題に関する国務院の座談会が開かれた。
温家宝総理は「太湖の水質汚染対策事業は長年行われてきたが、なお根本的な解決を見ていない。太湖の水質汚染事件はわれわれに警鐘を鳴らした。これを高度に重視しなければならない。汚染原因を徹底的に調査・分析し、これまでの事業を基礎として、総合的な管理を強化し、具体的な改善策と措置を研究し、立案しなければならない」との重要な指示を出した。
曽培炎副総理は席上で、「太湖周辺は人口密度が高く、経済が発展している。より高いレベル、より厳格な環境保護基準を適用し、より大きな決意で、より断固たる措置を採用し、環境管理を強化し、たゆまぬ努力を貫くことで、汚染問題の基本的な解決を図らなければならない」と強調した。
無錫市管轄の宜興市政府職員5人は、地元企業による汚染物質の違法排出への行政指導不足、監督不行届により、それぞれ行政過失記録、行政重大過失記録、懲戒免職の処分を受けた。
同市環境保護局も、5月30日から市内の企業439社の汚染物質排出状況を調査し、基準超過の9社に改善命令、3社に排出削減命令を出し、12社を行政処分とし、市政府に1社の操業停止あるいは移転を提言したことを明らかにした。
付記
温家宝首相は6月末に無錫で行われた対策会議で、飲み水問題を国家プロジェクトとして優先的に対処すると述べた。
問題となっているのは江蘇省の太湖(Taihu Lake )のほか、安徽省の中国最大の淡水湖の巣湖(Chaohu Lake)及び 雲南省のDianchi Lake(さんずい偏に真)の3つの湖。
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先日NHKスペシャル「激流中国 北京の水を確保せよ ~しのびよる水危機~」で北京の水不足が報道された。
都市の発展が急速に進み、必要な水の量は圧倒的に増えたが、主要なダムの貯水量はここ5年で、3分の1に減っており、「オリンピックを成功させるため」として農民を犠牲にしてでも北京の水を確保しようとしている。
対策として「南水北送」(揚子江の水を北京などの北方地域に送る計画で水路の総延長は3700キロ、総工費は約1兆5000億円)が進んでおり、水路が作られているが、肝心の揚子江の水が汚染されて飲み水に適さないという。
これまでの中国の経済成長優先のツケがいろいろなところで出てきている。
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