ICI、Akzo Nobel による買収提案を拒否
2007/5/28 「次の買収は?」 で 「SABICによるGE Plastics 買収が決まり、次の買収の噂がいろいろ出ている。」とし、その一つにICIを挙げ、次の通り述べた。
DowがICIを買収するという噂が流れた。(2007/4/7 DowがICIを買収?)
更に、Akzo Nobel のトップが Coatings 事業で大規模な買収を検討していると述べた。
買収候補がICIでないのかという質問にはノーコメントであった。これに対してICIの会長はDow やAkzo Nobel による買収説を打ち消した。
Akzo Nobel は18日、ICIに内々に買収の提案をして拒否されたことを明らかにした。
報道によると、Akzo は4日に72億英ポンド(約1兆7500億円)での買収提案をしたが、ICIは安すぎるとして断ったとされる。
Akzo Nobel では「ICIも含め、戦略的機会を今後引き続き検討する」としている。
消息通は今回の拒否を受け、Akzoは間もなく正式な買収提案をするだろうと述べている。AkzoはMorgan Stanley を起用したことを認めている。
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Akzo Nobel は医薬品、塗料、化学品の三つの分野で活動しているが、医薬品では医療用医薬品事業(Organon Biosciences) 、動物用医薬品事業(Intervet:世界のトップ3の一つ)とバイオ事業(Nobilon International )を持っている。
本年3月に医療用医薬品事業のOrganon Biosciences を144億ドルで Schering-Plough に売却することで合意した。
同社ではその際に、投資や買収によって塗料及び化学品の最も魅力的な分野で成長を図るとしていた。
今回の買収はこれによる豊富な資金をもとに、ICIの塗料事業を狙ったものだが、同社自身が買収の対象となるのを避ける目的もあるとされている。
アナリストは、ICIが株主にAkzoのTOBに応じるよう薦めるためには78億ポンド程度は必要だろうとし、Akzoにとってのメリットは、コストダウン、欧州でのICIとの価格戦争の終結及び、急速に拡大するアジアでのICIの事業の取得であるとしている。
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ICIは 2006/3/7 「ICIの抜本的構造改革」 記載の通り、既存事業のほとんどを売却し、スペシャリティ化学品を中心とした「新生ICI」に生まれ変わった。
その時点での同社の事業は、既存の塗料のほか、1997年にUnileverから購入した3事業=National Starch、香料(flavours & fragrance) のQuest、油脂化学・界面活性剤のUniqema の合計4事業部門から成っていた。
同社は昨年6月には、Uniqema部門 をCroda International に約915億円で売却、昨年11月末には香料を扱う Quest 部門をスイスに本拠を置く Givaudan に約2,680億円で売却すると発表した。
売却額は退職年金不足額に充当するほか、負債の返済に充てられた。
この結果、同社は塗料事業とNational Starchに事業を集中、負債も縮減した。本年2月にはアナリストが買収の好対象であると述べている。
2006/11/30 ICI、Quest部門をGivaudanに売却
ICIの塗料事業の売上高は第1四半期に前年同期の4%アップとなったが、アジア、欧州、ラテンアメリカでの伸びが住宅不振の北米の減を補う形となっている。
同社の欧州でのシェアは44%だが、北米では13%のシェアとなっている(No. 1 はSherwin-Williams )。中国ではDulux ブランドで日本ペイントに次いでNo. 2である。
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本件が明らかになったため、BASFやDow、インドのReliance Industries、ファンドなど他社もICI買収に乗り出すのではないかと噂されている。
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