DuPont のダイオキシン裁判
DuPont が Mississippi 州のDeLisle 工場で20年近く大量のダイオキシンと重金属を排出していたとして2000人近い住民や元従業員から訴えられている。
環境保護団体のSierra Club が大企業との7つの闘い(ダビデとゴリアの物語)をSierra Club Chronicles というタイトルでビデオ化しているが、そのエピソード3で「 Dioxin, Duplicity & Dupont」というタイトルで本件を公開している。
住民や元従業員の証言を中心に経緯や背景、最初の裁判の内容を明らかにした30分のビデオが見られる。
http://www.sierraclub.org/tv/episode-dupont.asp
20年ほど前に、周囲に工場の全くない大自然の中にDuPont の二酸化チタンの工場が建てられた。
住民はDuPont の従業員になれて大変喜んだ。
しかし、そのうちに周囲に癌などの病人が増え、工場が大量のダイオキシンと重金属を排出していたことが分かった。
2000人近い住民や元従業員がDuPont を訴えた。
2005年に最初の裁判が行われ、陪審員は牡蠣の漁師が血液癌にかかったのはダイオキシンのためであると結論付け、14百万ドル(+その妻に150万ドル)の損害賠償を認めた。同社は州最高裁に控訴している。
先日、第二の裁判が行われた。工場の近くに住む夫婦が2000年7月に8歳の娘が肝臓癌と心臓病で死んだのはダイオキシンのためだとして懲罰的賠償で30百万ドルの支払を求めて訴えた裁判である。
陪審員は今回は、DuPont が工場からダイオキシンと砒素を出し続けたのは事実だが、娘の死はこれとは結びつかないと結論付けた。
最初の裁判では裁判所の判断(州最高裁も支持)により会社側証人の証言が認められなかった。今回は数人の証人が原告側の主張に反論している。
上記のビデオの中では、「原告は何度もバーベキューをしているが、バーベキューでもダイオキシンは出る」とか、「煙草を吸っているではないか」などの発言も裁判の中で行われている。
同社はこのたび、郡の判事に対し、残りの2000件弱の訴えを却下するよう求めた。
その中で同社は、原告がなんらか特定の被害を受けたのではなく、永年放出された化学品で将来起こりうる被害を恐れて訴えているだけであるとし、害を与えるかも分からない物質に触れたというだけでは被害を受けたことにはならず、そういう訴えは却下されるべきであると主張している。
判事はまだ結論を出していない。
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同社のホームページの工場案内のうちの DeLisle 工場のページには以下の記載がある。
We Meet Environmental Requirements.
Sustainable Growth is Our Cornerstone
We are committed to Core Values
Employees are the Key to Success
http://www.titanium.dupont.com/NASApp/TTPORTAL/Mediator?action=231&reference=102510147180
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DuPont は世界最大の酸化チタンメーカーで、世界の生産の1/4を占めている。(DeLisle 工場は米国第2位の工場)
同社は全て塩素法でルチル型酸化チタンを製造している。(天然の酸化チタンにはルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3種類あり、同じ化学式 TiO2 で示されるが、結晶構造が異なっている。)
同社は今月、テネシー州のNew Johnsonville 工場で酸化チタンの原料の四塩化チタンのプラント建設を開始している。
DuPont は1997年7月にICI から同社の全世界のポリエステル事業と、北米を除く酸化チタン事業の買収で合意した。
しかし、最終的に酸化チタンの買収は中止となり、紆余曲折の後、ICI のポリウレタン、芳香族、オレフィン事業とともに、Huntsman Chemicalに売却された。
Huntsman Chemical は昨年、英国のオレフィン、芳香族などの石化事業をSABICに売却したが、酸化チタン(顔料事業)はポリウレタン部門に属するアニリン、ニトロベンゼンとともに売却の対象外としている。
汎用石化事業の売却後のHuntsman における顔料事業の売上高比率は12%となる。
2006/10/3 SABIC、Huntsmanから英国の石化子会社を買収
Huntsman は2006年8月、英国のGreatham の酸化チタン工場を5万トン増設し15万トンにすると発表している。
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