ドキュメンタリー映画「An Inconvenient Truth」
Al Gore のドキュメンタリー映画「不都合な真実」(An Inconvenient Truth)を観た。
「次の大統領になる筈であった」元副大統領、アル・ゴアが環境問題に関するスライド講演を世界中で開き、地球と人類の危機を訴えてきたが、それを映画化したものである。
ゴアは1960年代後半に環境問題を研究するロジャー・レヴェルの警告に心を動かされ、70年代後半にはこの問題に関する初の議会の聴聞会をまとめる手伝いをした。97年には京都議定書など、多くの交渉の場に参加した。
2000年の大統領選で最後のフロリダの開票を巡り争いとなり、一度は当確が出たが、最終的には長期化を避けるため下りてブッシュに譲った。
失意のゴアはスライド講演で温暖化問題を伝える活動を始めた。これまで1000回以上の講演を行ったという。
映画はゴアのスライド講演の一部始終を順に写しながら、途中で、ゴアがこの問題を取り上げた経緯や、世界中を見て歩く姿を挿入している。
温暖化の状況、今後の影響などを具体的に映像やグラフで示しながら、米国の政治家が産業界の保護のために、産業界にとって「不都合な真実」を無視している状況を示し、政治が問題と指摘している。
環境と経済が両立しないという指摘には、日本や欧州の自動車メーカーが省エネや環境対策に取り組み、米国の自動車メーカーに業績で上回っている例を挙げ、「米国の自動車は今や基準を満たさないため中国でさえも売ることが出来ない」とする。
今からでは遅いのではとの懸念には、いろいろの対応でCO2濃度を90年代の水準に下げることが出来るとする。
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問題の箇所もある。
海水の上昇の影響のところで、海面が20フィート(約6m)上がるとして、マンハッタン、サンフランシスコ、上海、オランダ等々の地図で海面下に沈む場所を示す画面があるが、今回のlPCC報告では海面上昇は28cm~43cm(可能性の幅では18cm~59cm)である。
しかし、温暖化問題が分かり易く伝えられており、ゴアの情熱がそのまま伝わる。
ゴアが大統領になっていたらどうなっていたであろうか。
また、政治が問題というのなら(最後のメッセージで省エネ問題をいろいろ取り上げ、その中に「政治家に手紙を書こう、それでも駄目なら自分で政治家になろう」というのもある)、ゴア自身がもう一度出馬するべきではないだろうか。
この映画のPRは http://futsugou.jp/ にある。予告編がそのまま見られるほか、この映画の詳細、上演館などが示されている。
(オリジナルは http://climatecrisis.org/ で、こちらには予告編がない)
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この映画に対して、『環境危機をあおってはいけない―地球環境のホントの実態』(The Skeptical Environmentalist)の著者 Bjørn Lomborg が批判の文章を書いている。
「AN INCONVENIENT TRUTH by Al Gore」
http://www.project-syndicate.org/commentary/lomborg6
氷河の後退はCO2増加前から起こっている、南極の2%はゴアの言うとおり温暖化しているが98%は冷却化している、海面が20フィート上がるとするがIPCCは1~2フィートの上昇としている、等々、映画の内容の問題を指摘しながら、 HIV、マラリア、栄養不足、教育問題、飲み水不足等々の問題がある中で、何故温暖化が最優先課題なのかとし、全ての国が京都議定書にサインしても年間1500億ドルをかけて西暦2100年に温暖化を6年延ばすだけでないかとしている。
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参考
2007/2/6 国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」報告書発表
2007/1/29 米国のエネルギー政策と温暖化対策
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