SABIC、Huntsmanから英国の石化子会社を買収
2006/8/22 「SABIC Europe とその前身」 で、以下のように述べた。
「SABIC Europe は先月末にドイツのGelsenkirchen工場でのHDPE 25万トンプラント建設でUhdeと契約を交わした。完成後は同工場にある10万トンプラントをスクラップする。インフラ整備を加え、投資額は2億ユーロとなる。
同社はもう一つのサイトのオランダのGeleen工場で52万トンのエチレンクラッカーを新設し、Gelsenkirchen工場でポリマーを増設する「Europe 1」計画を立てていたが、こちらは過剰投資が原因の建設費アップで経済性が問題としてペンディングとしている。」
上記の「Europe 1」計画は投資額が15億ユーロ(18.6億ドル)であったが、SABICは安上がりの代替案を見つけた。
9月28日、SABICはHuntsmanの英国の石化子会社 Huntsman Petrochemicals (UK) Ltd の株式100%を7億ドルで買収すると発表した。
買収するHuntsman Petrochemicals (UK) は、英国のWiltonに865千トンのエチレンと400千トンのプロピレンのクラッカー、130万トンの芳香族のプラントを有している。Huntsmanはこれまでエチレンを主に輸出していたが、2004年に400千トンのLDPEプラントの建設を決め、2005年10月に着工した。2007年末完成を目指して建設中だが、SABICは150百万ドルを投じてこれを完成させる。
(買収代金と含めると8.5億ドル)
Huntsmanは1999年6月にポリウレタンや酸化チタン事業とともにオレフィン、芳香族事業をICI から買収した。当初はHuntsman 70%、ICI 30% 出資のHuntsman ICI が運営していたが、2002年にICIが持分を投資会社に売却、2003年にHuntsmanが投資会社から持分を買い取って100%子会社とした。なお、ICIのWiltonのLDPEプラントは1982年にBPが買収し、2001年に閉鎖している。
Huntsman は英国の顔料事業と、ポリウレタン部門に属するアニリン、ニトロベンゼンは売却せず、維持する。
ーーー
SABICは2002年にDSMの石化部門を買収し、SABIC Europe を設立した。オランダのGeleen工場にエチレン、HDPE、LDPE、LLDPE、PPプラント、ドイツのGelsenkirchen工場にHDPEとPPプラントをもつ。エチレン能力は125万トン、PEは148万トン、PPは109.5万トン。
今回の買収及び建設中のドイツと英国のPEが完成すると、SABICの欧州の能力は
エチレン 211.5万トン
PE 203.0万トン (148+25-10+40)
PP 109.5万トン
となり、欧州でも大メーカーとなる。
ーーー
一方、Huntsmanはこれまで買収により大きくなってきたが、汎用品から差別化製品に路線を変更しつつある。
2006年2Qの売上高とEBITDA(金利・税金・償却前利益)構成は次の通り。
売上高比率 | EBITDA比率 | ||
差別化製品 | ポリウレタン | 26% | 50% |
先端材料 | 9 | 10 | |
機能製品 | 15 | 11 | |
(小計) | (50) | (71) | |
顔料 | 8 | 10 | |
コモディティ | 基礎化学品 | 28 | 8 |
ポリマー | 14 | 11 | |
(小計) | (42) | (19) | |
合計 | 100 | 100 |
2006年6月、米国のブタジェン、MTBE事業をTexas Petrochemicals に売却
2006年6月、チバ・スペシャルティ・ケミカルズのテキスタイル機能材ビジネスの買収完了
2006年9月、今回の石化事業のSABICへの売却
これらの処理を折り込むと、2006年2Qの売上高及びEBITDAの構成は次の通りとなる。
売上高比率 | EBITDA比率 | ||
差別化製品 | ポリウレタン | 39% | 57% |
テキスタイル機能材ほか | 26 | 19 | |
機能製品 | 23 | 13 | |
(小計) | (88) | (89) | |
顔料 | 12 | 11 | |
コモディティ | 0 | 0 | |
合計 | 100 | 100 |
なお、上海ケミカルパークではBASF/ハンツマンのイソシアネートコンプレックスが本年8月に竣工している。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント