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2006年8月 7日 (月)

米工場爆発事故の調査結果

昨年10月6日、テキサス州ポイント・コンフォートのフォモサ・プラスチックスの工場で爆発事故が発生した。

事故は原料の天然ガス又はナフサからエチレンやプロピレンをつくる OlefinⅡプラントで発生したもので、フォークリフトがバルブに当たって破損し、大量のプロピレンが流出、引火したもの。従業員2人が火傷で重傷、14人が逃げる際に軽症を負った。

* フォモサ・プラスチックスは台湾の台湾石化(FPC)の子会社
  2006/4/15 「台湾の石油化学」 参照

米国の化学品事故の調査のための独立政府組織 U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board (CSB:米国化学物質安全性・有害性調査委員会)は7月20日、この事故の調査結果を発表した。

CSBの調査によると問題点は以下の通り。

OlefinⅡプラントに自動停止バルブがなかった。従業員は手動バルブに近寄れず、プロピレン流出を防げなかった。
破損したバルブはむき出しで、保護されていなかった。
鉄製の支柱が防炎処理されておらず倒壊した。このため通常ならプロピレンがフレアで処理される筈が、フレアに送れず、5日間燃え続けた。
従業員に防炎衣類が支給されていなかった。

CSBではこれを元にフォモサに対して勧告を行うとともに、本設備の設計に当たったKellogg, Brown, and Rootに対して、新設備の設計の際には最新の安全基準によるよう、勧告した。また、業界組織の化学プロセス安全センターに対し、ガイドラインの強化を指示した。

CSBでは調査結果の詳細を Case Study として発表した。
http://www.csb.gov/completed_investigations/docs/Formosa_TX_Case_Study_07-14-06.pdf

 

フォモサ・プラスチックスでは事故が続出している。
1998年12月にはポイント・コンフォートのEDCプラントで爆発があり、26人が負傷した。
2004年4月にはイリノイ工場でVCMの漏洩による爆発があり、4人が死
亡、6人が負傷した。また2005年4月にはVCM等の漏洩による環境基準違反で15万ドルの罰金を払っている。

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日本では独立行政法人 科学技術振興機構(JST)が科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともにデータベース化したものを「失敗知識データベース」として公開している。

JSTは、本事業に関する専門的指導・助言、全体調整、分野間調整等を行うため、畑村洋太郎工学院大学教授を統括に委嘱するとともに、畑村統括を委員長とする失敗知識データベース推進委員会(JST畑村委員会)を設置し、データベースの仕様や分析方法を検討した。

現在、化学198件、石油104件、石油化学30件が記載されている。

失敗知識データベース http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search

 

 

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