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2006年4月13日 (木)

MMA事業の拡大

4月6日、住友化学はシンガポールでMMAの第三期増強の起工式をおこなった。三菱レイヨンも海外展開に活発で、旭化成もタイへの進出を検討している。

MMAモノマーは従来のキャストシート、エマルジョン、人工大理石、MBS樹脂、透明ABS樹脂などの用途に加え、液晶ディスプレイやプロジェクションテレビ向けなどのIT関連材料用の需要が急増している。各社の増設はこれに対応するものである。

以下に日本のメーカーの状況をみる。

MMAモノマーの製法面でみると、下記の通り、従来のACH法から直酸法、改良ACH法、更にはエチレン法と、多彩である。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/mma.htm

従来、MMAの製法はACH法であった。

アクリロニトリルから副生する青酸(クラレは天然ガスから青酸を製造)とアセトンを反応させてACH(アセトンシアンヒドリン)とし、これにメタノールを反応させてMMAをつくるが、大量の硫安ができるのが問題である。
日本では三菱レイヨン(一部)、旭化成(一部)、クラレがこの製法を使っている。
欧米では現在もほとんどがこの製法である。

三菱ガス化学はこれを改良して硫安を副生しない新ACH法を開発し、新潟に51千トンのプラントを建設した。副生したホルムアミドを青酸にして再利用するものである。

住友化学と三菱レイヨンは直酸法である。(住化はこれのみ)
旭化成は当初、イソブチレン原料の
MAN法を採用したが、ACHと同様に硫安を副生する。現在はイソブチレンとメタクロレインを反応させる直メタ法を使っている。

これらの製法の問題点はイソブチレンである。イソブチレンはC4留分からブタジェンを抽出した後のラフィネート-1のなかに含まれており、メタノールと反応させてMTBEにして他の留分(ブテン-1、ブテン-2、ブタン)と分離し、メタノールを除いて得ている。
このため、ナフサクラッカーの場所でないと製造できない。(原料と他の留分の輸送費がネック)

これらの製法に対して、エチレンやプロピレンを原料とする製法が研究されている。
ICIからMMA事業(ICIはデュポンからMMA事業を買収しており、これを含む)を買収したルーサイトは
エチレン法を開発、αプロセスと名付けたが、第1号プラントをシンガポールに建設することを決めている。

次に、各社の状況と戦略をみよう。

国内能力の合計は547千トン(2005年末)で、三菱レイヨンが217千トン(直酸法+ACH法)でトップである。

同社は海外進出にも精力的で、
タイではサイアムセメントと組んで 80千トンを生産しており、中国広東省では2006年に 90千トンをスタートさせる(原料は中海シェルから購入)。中国にはポリマーやシートでも進出している。
同社は更にルーサイトとの提携を決めた。三菱レイヨンが
米国に140千トン、ルーサイトがシンガポールでアルファ法で120千トンをそれぞれ建設し、互いに製品を供給するというもの。ルーサイトは上海にACH法(青酸は上海SECCOのANM副生品)で100千トンプラントを完成させたが、これと三レの広東省のプラントの製品も対象となる。(ルーサイトは台湾にもJV・Kaohsiung Monomerをもっている) 
このほか、本年1月には
韓国の湖南石油化学との間で韓国でモノマー、ポリマーを製造販売するJV設立で合意した。湖南石化は三井/クラレの直酸法を導入して50千トンプラントをもっている。

住友化学は1984年に日本触媒との合弁で愛媛に直酸法プラント(40千トン)を建設(既存のACH法プラントを廃棄)、その後、第二プラントとして姫路に50千トンプラントを、更に韓国でLGとの合弁でプラントを建設した。(のちにLGのポリマー事業をJVに取り込んだ)
なお、姫路のプラント向けイソブチレン入手のため水島に三菱化学とのJVでプラントを建設した。

更にシンガポールでの事業展開の一環としてMMAモノマー及びポリマーを生産している。

現在、韓国の能力は100千トンで、2008年の増設後は176千トンとなる。シンガポールは現在133千トン、今回の増設が完成すると223千トンとなる。
これらの完成後、住友化学グループのアジアにおける生産規模は、MMAモノマーで489千トン、MMAポリマーで244千トンとなり、アジア最大規模のメーカーとなる。

なお、住友化学と日本触媒は2002年に住化のアクリル酸事業、日触のMMA事業を、シンガポール事業を含めそれぞれ相手に譲渡した。(日触は韓国のJVには残留)
日触がアクリル酸事業で幅広く誘導品事業を行っているのに対し住化は単体営業だけであり、MMAでは住化がシート、成形材料など幅広く事業を行っているのに対し日触がモノマー営業だけであることから、事業交換により夫々がコア事業に経営資源を投入することとしたものである。

旭化成の国内能力は100千トン(直メタ法とACH法)である。同社はこのたび、タイPTTと組んで、同地でANM 200千トンと、ここから副生する青酸を原料としてACH法でMMAを70千トン生産する共同事業化の詳細検討を開始すると発表した。同社が開発したプロパン法ANプロセスを世界で初めて使用する。(旭化成のANM能力は、これが完成すると100万トン規模となる。)

このほか、三井化学が直酸法で40千トン、クラレがACH法で67千トンの能力をもっている。
三井の40千トンは1988年に三井東圧が完成させたもので、1989年に協和ガス化学が50%出資して共同モノマーとし、同年のクラレによる協和ガス吸収合併でクラレと三井化学のJVとなった。
2005年9月に両社は合弁を解消、共同モノマーは三井化学100%子会社となった。

 

欧米ではLuciteがICI及び旧デュポン(ICIが事業買収)のMMA事業を引き継いでいるが、他に米国ではRohm & Haas、欧州ではDegussa(旧 Rohm、米国にも100%子会社 Cyroをもつ)、及びSartomerTotal 子会社、旧称Atofina)があり、凌ぎを削っている。
Rohm & HaasとAtofinaは両社のMMAポリマー事業を統合してAtoHaas としたが、後、R&H が撤退し、AtoGlassと改称した。

各社ともエチレン法、プロピレン法などACH法に替わる製法の検討を行っているが、米国で本年5月にガソリンへのMTBE添加義務が失効してMTBE需要が激減するとみられていることから、これを原料とする直酸法の採用の可能性もある。
(住友化学は1988年頃、姫路の第二工場建設の代わりに、米国でARCOやRohm & Haas とのJVでARCOのTBAを原料としてMMAを生産することも検討した)
**TBAはイソブチレンを水と反応させるもので、TBAとメタノールでMTBEになる。ARCO(現ライオンデール)はPO/SMとPO/TBAの併産プラントをもっている。

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コメント

今日の新聞で住友化学がPS撤退の記事が出ましたね。いやーついに来ましたね。これが業界再編に繋がることを期待します!。
PS(ポリスチレンじゃありません^^)
最近ご無沙汰しておりました。が毎日拝読しております。これからも色々と勉強させてもらいまっす!!

投稿: Lucky | 2006年4月13日 (木) 22時18分

PS撤退。ほんときましたね~.三井化学はどうしますかね。どっかとくっつくでしょう。もう水面下では決まってるか。すいません勝手に決めてます。

先生、PO・SMまたは、PO・TBAですよね。TBAとメタノ-ルでMTBEです。
どの製法が最もコスト的に有利なのか、立地条件によりますが、どうなんでしょう。国内は直酸法?むむっ?

投稿: ヘッドコ-チ | 2006年4月13日 (木) 23時17分

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