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2006年3月19日 (日)

日本の石化の将来予想

これまで日本のエチレン及びポリオレフィン、塩ビ等の事業の変遷を追った。

今後、中国バブルが弾けた場合、輸出はなくなり、韓国・台湾等中国向けに輸出していた国々、中東、更には中国自体からの輸入圧力にさらされることとなる。

果たして日本の石化事業は生き残れるであろうか。

要は国際競争力があるかどうかである。国際競争力がなければ生き残れない。

「電気の缶詰」と言われるアルミニウム精錬の場合、1978年に6社で「164万体制」であったのが、電力料の高騰で競争力を失い、1979年には「110万体制」、1982年に「70万体制」、1986年には「35万体制」となり、1988年には日本軽金属・蒲原の3.5万トンのみとなり、現在は同工場の1万トンが動いているだけである。(各社はブラジル、ベネズエラ、カナダ、インドネシア、豪州、ニュージーランド等、海外での開発に参加し、製品を引き取っている) http://kaznak.web.infoseek.co.jp/25/aluminium.htm

メタノールの場合、1970年代には東西の共同生産会社(東日本メタノール、西日本メタノール)、三菱ガス化学、三井東圧化学、協和ガス化学の5社体制であったが、安値海外品流入で相次ぎ操業停止、1995/7に最後の国産メーカー・三菱ガス化学が新潟 264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。 
現在、三菱ガス化学がサウディアラビア、ベネズエラで合弁生産しており、更に中国及びブルネイに進出を決定しているほか、三井物産を中心にサウディアラビアで
生産を行っている。

合成樹脂の場合も汎用品の場合には価格競争力がない。PEの場合、2005年にLDPEで205千トンの輸入があり、HDPEを中心としたPE袋(多くは日本の需要家が海外で生産)で443千トンの輸入がある。これら輸入は毎年増加しており、今後も増加すると思われる。
(シンガポールの場合は「自由貿易協定」でPE,PP関税は順次下がり、2010/1にはゼロとなる)Ldpeimport

Peimport2

 

しかしながら、日本の合成樹脂は、もちろん汎用品もあるが、ほとんどは需要家のニーズにあわせた特殊品であり、しかも汎用品との間に余り価格差がない。

日本では需要家の様々な要求に応じて新グレードをつくっており、多くのグレードを切り替え、切り替え、生産している。
最近では、更に進んで、需要家のニーズに適したグレードを自ら試作して提案するという「提案型」マーケティングをおこなっている。例えば自動車のバンパーをつくり、衝突設備で実験した上で、最適のグレードを提案し、供給している。

*住友化学は樹脂開発センターの設立発表において、「樹脂・ゴム事業を、単に『素材を販売する事業』という発想にとどまらず、素材・加工法・製品設計までも包含した総含的な技術を開発することによって、ユーザーの視点に立脚した『ユーザーが必要とする機能を充足する事業』と位置付ける」としている。
*三菱化学は「従来の単独で新技術・新製品の研究を行うスタイルにとどまらず、お客様サイドに立ってニーズの充足、課題の解決を行っていくことが求められており、三菱化学グループでは、こうした現況を踏まえ、お客様に斬新なソリューションを今後積極的に提案できる体制の整備が必要であると判断」、四日市事業所に『お客様への提案型研究開発施設』を新設した。

*三井化学では「機能性ポリオレフィン分野では、世界的に定評のある当社の最新触媒技術や材料設計技術を駆使して、お客様のニーズに応える環境に優しい高品質ポリオレフィンを提供するとともに、成形加工技術のご提案などにも取り組み、お客様の新製品開発、コスト低減に貢献」としている。

輸入品では品質上、及び品質の安定性から、これらのニーズに対応できないし、当然技術サービスも不可能である。加えて、日本では「カンバン方式」にみられるように、きみ細かいサービスを行っている。

これに対して、海外の場合はほとんどが大量生産の全くの汎用品であり、グレード数も非常に少ない。それを必要とする需要家に販売するだけである。
米国の場合、大量生産する汎用品の価格は安いが、特殊品の場合はそれをつくるための増分コストを価格に上乗せしている。
通常は前月に注文を受けて大量生産し、80トンのタンク貨車で輸送する。(1社当たり数千両を所有又はリースしている。紙袋などの荷造設備は持たず、小口輸送はコンパウンダーが小分け包装をして自社ブランドで販売する)
支払いも月末締切り30日後キャッシュ払いである。

これらを勘案すると、日本のこれら製品の価格は非常に割安といえる。
これらの製品は輸入品に代替されることはない。
また、日本の合成樹脂は日本の自動車や家電などの需要業界との協同体制で成長してきており、日本を離れてしまっては今後の開発は難しい。

このため、日本の合成樹脂事業がなくなることはなく、原料のエチレンもなくならない。

問題は過当競争である。現在でも特殊グレード製造の追加コストや技術サービス、カンバン納入による輸送費高等を転嫁できないのは過当競争のせいである。
日本のレジン輸出がなくなると供給過剰となり、価格競争が再開すると思われる。安い輸入品の増大は、(実際に輸入品を使用できなくても)需要家にとっては値下げ要求の理由となり、メーカー間の価格競争を更に激しくする。塩ビや(かなり以前になくなった)ポリエチレンの価格後決め方式も復活する可能性がある。

*価格後決め方式:
  期中は仮価格で取引しておき、期末に、下がった市況をもとに期間の価格を決め、遡及適用するもの。
  次期の購入を材料に数社を競り合わせるため、価格はズルズルと下がることとなる。
(価格上昇期間ではあり得ないことで、現在存在しないのは当然のことである)

各社が早期に対応を取らなければ、石化事業の赤字が増大し、最終的には競争力のない合成樹脂企業が破綻し、それを抱えるエチレンセンターも破綻すると思われる。

(3/16, 17の記事にお二人の方からコメントがあり、意見交換が続いています。このコラムをもとに、いろいろな意見交換が行われることを期待しています。)

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コメント

過当競争は、日本企業の必ず陥るツボ、みたいな物でしょう。携帯電話、薄型TVなど、再編が必要な、他業界の品目がありますね。おっしゃるとおり、末端需要家との共同開発による樹脂は、国内品を輸入品で置き換えることは出来ないでしょう。過当競争になる前にやはり、樹脂業界、特に、PEの提携・再編でしょうが、収益が良いうちは、各社、様子を見ている段階でしょう。価格の後決め方式に戻るかも、ウ-ム…。そうなってほしくないですね。
ヘッドコ-チ-完走

投稿: | 2006年3月20日 (月) 00時04分

うーん。何か改めて考えさせられちゃいますね。大寒波と言われるその時が刻々と近づいてるのに、それが来ないことを期待している業界、そしてこの俺。。。
確かに合成樹脂事業もエチレンセンターもなくなることはない。エチレン自体の国内需要は続くとすれば、要はコンビの中で川中・川下を支えるメーカーの樹脂競争力に拠るところが大きいと言うことでしょうねぇ。。。。それ次第ではそのコンビの行く末も。。。おお怖い怖い。。。

Toヘッドコーチさん。完走おめでとうございます。

投稿: Lucky | 2006年3月20日 (月) 01時26分

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