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2006年3月31日 (金)

サウジ・メタノール計画

SABICによるサウジの石油化学の創生期に日本は2つのナショナルプロジェクトで参加した。一つは三菱ガス化学が中心のメタノール計画(AR-RAZI:The Saudi Methanol Company)で、もう一つは三菱グループが中心のPE、EG計画(SHARQEastern Petrochemical)である。

SABICはいくつかのJVに昔のアラブの有名人の名前を付けている。
Abu Baker AR RAZI は15世紀のアラブの有名な医者で化学者で、硫酸やアルコールを発見し、液体の密度を測る方法を発明した。三菱ガス化学の
AR-RAZI(The Saudi Methanol Company)はこの学者の名前をとっている。

日本のメタノール業界は1970年代には共同生産会社の東日本メタノール(住友化学中心)と西日本メタノール(三井東圧中心)のほか、三菱ガス化学、三井東圧、協和ガス化学の5社体制であったが、石油ショックで競争力を失い、三菱ガス化学は海外進出を狙っていた。
(1983年には両センターが操業を停止、他社も相次ぎ停止した。1995
7月に三菱ガス化学が最後のプラント・新潟工場を操業停止し、設備は中国の内蒙古・伊克昭盟化工集団総公司に売却した。)

これとは別に、1974年に伊藤忠がペトロミン、First Arabian (サウジ)、Grace (米) と共同でサウジでの燃料用メタノール事業を検討した。しかし、サウジ政府が燃料用ガスの輸出を禁止したため、化学用メタノール事業に転換、海外立地を検討していた三菱ガス化学が参加した。

FSの結果、事業化を決定、三菱ガス化学はナショナルプロジェクトとすることとし、海外経済協力基金のほか、国内メーカーの参加を求めた。なお、サウジ側がSABICの50%出資を主張したため、Graceは離脱、日本側とSABICの50/50JVとなった。   
 
1977年11月に投資会社の日本・サウジアラビアメタノール㈱(JSMC) を設立した。
三菱ガス化学が47%、海外経済協力基金が30%、三井東圧・住友化学・協和ガス化学が各5%、日本化成・新日鐵化学・東邦理化が各1%、それに伊藤忠が5%出資した。

1979年11月に合弁契約を締結し、80年2月にJSMC 50%/SABIC 50%でAR-RAZISaudi Methanol が設立された。
JSMCもインセンティブオイルを与えられたが、日本での販売権がないため、三菱石油、日本鉱業、昭和石油と委託契約を結んだ。

19832月に第1期 60万トンが完成、日本側は半分の30万トンの引取り権を得た。
三菱ガス化学はこのうち、12万トン、5%出資社は各5万トン、1%出資社は各1万トンを引き取った。
残りのうち、20万トンは日本側が東南アジアで販売した。

需要の増大(最近はMTBE原料用)に伴い、同社は増設を続けた。
1992年1月に第2期(63万トン)、97年6月に第3期(85万トン)、99
4月に第4期(85万トン)が完成した。
順次、サウジ側の引取りが増え、第2期分は31.5万トンは日本で引取り、残りを双方で半分ずつ販売した。第3期分は25%はサウジのMTBE用、残りは日本側、サウジ側均等販売、第4期はIbn Zahar と SADAF のMTBE向けが中心である。
(第4期分については、当初はサウジ側が単独で事業化を検討した。)

更に、2005年には第5期170万トン2008年完成予定)の発注が行われている。

なお、サウジアラビアではSABICのもう一つのメタノールJVのIBN SINANational Methanol CompanySABIC 50%/Hoechst-Celanese 25%/Pan Energy 25%、メタノール110万トン+MTBE)のほか、日本側35%出資のInternational Methanol Companyがある。
Saudi International Petrochemical 65%/三井物産 20%/三菱商事 5%/ダイセル化学 5%/飯野海運 5% 出資、設立:2002年、立地:Al-Jubail、能力100万トン)

三菱ガス化学は本JVのほか、ベネズエラのMetanol De Oriente, Metor.S.Aに参加(三菱商事とともに各23.75%出資)、更に中国の重慶で重慶化医とのJV(51%出資)、ブルネイでのJV(50%出資、他に伊藤忠が25%、ブルネイ国営石油が25%)に参加を決めている。

*米国では、大気汚染対策のためガソリンにoxygenate (含酸素分成分)としてMTBEなどの含有を義務付けている。しかし、MTBEはガソリンタンクからの漏れによる飲み水汚染が問題になっている。(ガソリン分解の細菌は多く問題にならないが、MTBE分解細菌は少ない)
昨年のエネルギー法改正で本件でのMTBEメーカーを訴訟から免責にする法案がつぶれ、ガソリンへの添加義務も本年5月5日で失効することとなった。
このため、MTBE需要は激減することとなる。MTBE及び原料のメタノールのメーカーへの影響は大きいと思われる。
(なお、オクタン価向上のためにはエタノールが使用される)

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