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2006年2月22日 (水)

忘れられた「2004年問題」

「2004年問題」というのがあった。

日本では、ポリオレフィンの高関税政策が採られてきたが、ウルグアイラウンドでの合意により、石化製品の関税率は1995年から段階的に引下げられ、ポリオレフィンの場合は2004年に最終税率が適用されることとなった。
具体的にはPEでは1993年に22.40円/kgであったものが2004年には従価税6.50%となる。
関税率の推移 
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ニッセイ基礎研究所 百嶋徹氏は2000年の論文で、2004年には関税引き下げと国産品価格是正によって、LDPEで 15円/kg、HDPEで 5円/kg、PPで 26円/kgの値下がりが予想され、業界全体では860億円の減益になると予想、これに加えて欧米化学大手のアジア進出にともなう競争激化などによって、最悪のケースでは年間 1,700億円の減益になると指摘し、早急に過剰設備対策や、1社当たりの能力や設備規模の拡大に取り組むべきとした。
(「国際化第二波が押し寄せる石油化学産業-早急に求められる抜本的な設備再編ー」)
計算 
LDPE 99年のCIF 723$、
関税 @15.35→@5.29(差 @10.06) 
国産品価格高是正 @5、計 @15


PP(homo) CIF 582$、
関税 @17.90→@4.26(差 @13.64) 
国産品価格高是正 @12、計 @26

当時は業界ではこれを大問題と考え、「選択と集中」政策への転換の理由の一つとなった。例えば三菱化学の四日市エチレン停止発表でも、「本年央からのサウジアラビア、台湾、シンガポール等アジアにおける大型エチレンプラントの新増設によりオレフィン及び誘導品の輸出を行うことが厳しくなること、さらには2004年の主要石化製品における大幅な関税の引き下げ等により、今後より一層内需の伸びが期待できないことから、当社エチレン生産体制の見直しを行い、四日市事業所のエチレンプラントの停止を決断したものであります。」としている。

実際には、その後のナフサ価格の暴騰と中国の需要急増で、国際価格が上昇し、国内での値上げも実現でき、輸入品の圧力による影響は全く出ていない。好業績のもと、「選択と集中」の動きも緩くなった感がある。ある業界関係者は「2004年問題など今や問題でない」と一笑に付した。

しかし、コンピュータが一斉に狂うかも分からないと恐れられた「2000年問題」は2000年1月1日が問題なしに過ぎればそれで終わったが、「2004年問題」はそうではない。関税引き下げは既に実施されている。単に現時点では中国バブルのお陰で輸入圧力がないため実害が出ていないだけである。中国バブルが弾けると百嶋氏のシナリオが生きてくる可能性は強い。

問題は輸入圧力での値下がりだけではない。2005年のエチレン系製品の輸出量はエチレン換算で2,274千トンに及ぶ。エチレン生産量は7,621千トンで、輸出はその30%に及ぶ。
(エチレン換算輸出量:LDPE 222, HDPE 161, SM 421, PVC 370, VCM 405, EG 159. エチレン 274 千トン ほか)
日本の国内需要が今後増大することは余り期待できない。ここで輸出が激減するようなことが起これば、大混乱が起こるのは必至である。

中国が輸入を続けている間に、遅ればせながら、本格的な過剰設備対策に取り組むべきであろう。能力を国内需要対応にまで減らしたPSを例外として他の誘導品は全て問題を抱えるが、エチレンにどのように手をつけるかが最大の問題である。

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